福岡県古賀市の青柳小の男の子が飛ばした風船を約80キロ離れた同県東峰村の小中一貫校「東峰学園」の女の子が拾った縁で、青柳小の子供たちが九州豪雨で被災した村のために募金活動を始めた。今月末、義援金を直接届けることになり、両校の関係者は「人の温かさの輪が広がったすてきな交流」と喜んでいる。
風船を飛ばしたのは体育の授業が好きな青柳小4年の山口來夢(らいむ)君(10)。昨年12月、人権学習の一環として自分たちで育てたヒマワリの種を多くの人に届けようと、名前とメッセージを書いたカードを付けて風船を飛ばした。
その数日後、自宅近くで拾ったのが「夢は科学者」という東峰学園4年の長沢小夜子(さよこ)さん(9)。下校時に木の枝に引っかかっている黄緑色の風船を拾うと、そこにはヒマワリの種4個と山口君が書いたカードが付いていた。
東峰学園でも毎年、ヒマワリの種を風船で飛ばす取り組みがあり、長沢さんは「お手紙を返したら、うれしいかな」と思って、「飛んできた種は大切に育てたいと思います」などと便箋3枚の手紙をつづった。
年末に学校へ届いた手紙に山口君はびっくり。校内に張り出され、全校生徒も初めての返信に驚いた。山口君は「友達からは『もう結婚しい』と冷やかされ、恥ずかしかったけど、うれしかった」と笑顔。
山口君もすぐに自分の顔に小さな丸を付けた集合写真と、「お手紙を読んで、クラスみんながうれしい気持ちになりました」と丁寧にメッセージを書いた色紙を返信した。
そして7月5日、九州豪雨が東峰村を襲った。青柳小の子供たちはすぐに「東峰学園を助けたい」と思い、10日後の「歌声集会」で来校していた保護者たちに「ヒマワリの種が届き、学校に手紙を送ってくれた友達がいる学校のために募金活動をしたい」と話し、お金を集めて回った。
10月にも、6年生が4泊5日で105キロを歩く青小キャラバンの道中、道の駅やスーパー、大学などで合唱を披露しながら、募金活動に取り組んだ。子供たちが集めた金額は21万8075円。今月27日に6年生全員で東峰学園を訪ね、ゆずの「雨のち晴レルヤ」や中島みゆきさんの「糸」の合唱とともに贈る。
長沢さんに届いたヒマワリの種は3輪の小さな花に育った。2人とも互いの手紙や色紙を自宅で大切に保管。2人は「いつか会えたらいいな」とその時を心待ちにしている。