白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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天頂の囲碁(Zen)

2016年12月25日 22時12分17秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
前回の記事について、多くの方からコメントを頂きました。
囲碁を打つ上では、ルールはざっと理解しておくだけで大丈夫です。
それで級位者の方でも分かりやすいよう、シンプルに説明しようとしたのですが・・・。
高段者の方を中心に、正確ではないとお叱りを受けました。
難しいものです。
後半大幅に追記しましたので、気になる方はご覧ください。

さて、本日は3子局を題材にします。
しかし、いつもとは趣を変えてみました。
対戦相手は、パソコンソフトの「天頂の囲碁6」です!

第2回囲碁電王戦で、「Zen」が趙治勲名誉名人1勝を挙げた事は、記憶に新しいですね。
そのZenの家庭用バージョンが、「天頂の囲碁6」です。
最近これを頂いたので、試しに対局してみました。
手合は3子、Zenは1手5秒、私は1手10秒の秒読み設定です。



1図(実戦)
白△と繋いだ所で、黒番です。
選択肢が色々考えられる所で、棋風が出る場面と言えます。





2図(実戦)
黒1~5までぐんぐん押し、黒7とケイマしてきました!
俗に、「相手に4線を伸びさせてはいけない」と言いますが、あまり気にする必要はないと思います。
それにしても、7線を伸びさせて来るとは・・・。
地は気にせず、中央の勢力を重視するのがZenの最大の特徴です。





3図(実戦)
白5や7など、絶好点を白に譲っては甘い、というのが第一印象です。





4図(実戦)
ご覧のように、下辺の白地が大きくなりました。
しかし、左辺~上辺にかけては、圧倒的に黒石が多い状況になっています。
今後の戦いでは常に黒が有利になるでしょう。
置き碁の打ち方としては非常に有力です。





5図(実戦)
白1、3と左辺を割っている間に、黒2、4と広げられ、今度は上辺一帯が大きくなってきました。
白の芸の無い打ち方を、反省していた場面です(笑)。





6図(実戦)
その後色々ありましたが、黒負けようのない形勢になっています。
白1、3は最初からの狙いですが、大きな成果は望めないと思っていました。
白5の後は・・・。



7図(変化図)
殆どの場合、黒1、3と対応するのが正解です。
この形は所謂「万年コウ」であり、黒は取られるまでに非常に時間がかかる形です。
基本的には、黒にとっては本コウより有利なのです。

ちなみに万年コウは、隅の曲がり四目のような、自動的に死ぬ形ではありません。
場合によっては、非常にややこしい駆け引きが行われるのですが・・・。
いずれ機会があれば、ご紹介する事もあるかもしれません。





8図(実戦)
実戦は、黒1と本コウを仕掛けてきました。
オヤと思いましたが、悪手とは言い切れません。
黒Aなどにコウ立てがあり、コウに勝てるのであれば、確かに話は早いのです。

ところが、実戦は・・・。
ここまで来れば、勘の良い方はピンと来るかもしれません。





9図(実戦)
実戦は、何と黒1の繋ぎ!
白2と繋がれて、5目中手で即死です。
電王戦でも死活のミスが目立ちましたが、やはりAIの苦手分野のようです。
結果は白の11目勝ちでした。

打ってみた感じでは、3子で勝ち越すのは難しそうです。<追記>3子で丁度良さそうです。
AI対策の布石を研究すれば、こなせる可能性もありますが・・・。

電王戦で対局した時や、ネット対局場に出没するZenは、家庭用よりさらに2子3子強そうな気配です。
家庭用も、いずれ近いレベルまで追い付いて来るでしょう。
凄い時代になったものです。

AIの挙動が興味深いので、他にも試してみたいと思っている事があります。
その際は、また当ブログでご報告します。

ところで・・・。
数年ぶりに1手10秒の碁を打ちましたが、全く手が読めませんでした。
若い頃は、拙いなりにも手は自然に浮かんで来たのですが・・・。
普段の勉強の大切さが、よく分かりますね。