板庇古りたるベンチ冬に入る 逸考
散歩コースの公園、管理人の作業小屋らしい。板庇の下に置かれた両端が垂れ下がるよう
にカーブした不安定そうな古びたベンチに丸太細工の木肌が荒れたオブジェになんとなく物
寂しを覚えた。
この8日には立冬も過ぎた。春の訪れるまで、公園へ訪れる人も少なくなるだろう。
板庇古りたるベンチ冬に入る 逸考
散歩コースの公園、管理人の作業小屋らしい。板庇の下に置かれた両端が垂れ下がるよう
にカーブした不安定そうな古びたベンチに丸太細工の木肌が荒れたオブジェになんとなく物
寂しを覚えた。
この8日には立冬も過ぎた。春の訪れるまで、公園へ訪れる人も少なくなるだろう。
穏やかな海境に没る秋日燦 逸考
(おだやかな うなさかにいる あきひさん)
大海原を赤く染めながら、水平線のかなたへ没してゆく、海の入日は 絢爛且つ荘厳である。
(南あわじ市 慶野松原にて H.2310.8)
お詫び) 掲題の句 上五を下記の通り 訂正しました。
訂正前 → 穏やかに
訂正後 → 穏やかな H.23.10.19
眼の前に大秋晴の海を展ぶ 逸考
(めのまえに おおあきばれの うみをのぶ)
10月に入り朝夕はめっきり肌寒さを感じるようになり、天気も安定して 秋晴れ
が続く日が多くなった。久しぶりに「淡路花さじき」に行く。コスモスはまだ丈が低
く花は見られない。赤いサルビアの群植が蒼い秋空に映えて美しい。帰途、園
内でこの近くにある「ファーモニー ファーム淡路」 の乗馬訓練中の人達に出会
う。 先頭が 指導の先生らしい。というのは、乗馬の姿勢が良く手綱(たづな)の
捌き方が手慣れているように思われた。
馬の瞳に蒼空映り天高し 逸考
遠花火 思はぬ方に 揚がりけり 逸考
遠花火 うたかたのごと 海に消ゆ
遠くから花火を撮る際、打ち上げが始まり このあたりに揚がるだろうと予測してシャッターを
押し後からみると大概左右どちらかへ偏ったり上下がアンバランスになったりする。 花火を
撮るのは、難しい。
己がでに殻しかと抱き蝉生まる 逸考
数年間、地下で棲息していた幼虫が蛹になり、夏、地上に這い出して背を割り脱皮、夜の間
に成虫になるらしい。シャーシャーと、けたたましく鳴く樹の枝に、まだ翅の乾ききらないクマ
ゼミが、自分の殻を、しかと抱くように、とまっていた。
白百合の香につつまれて永久の旅 逸考
先日、叔母が92才の天寿を全うした。会場の祭壇には白、黄の菊
などの他、数多くの白百合がフラワースタンドに飾りつけられていた。
出棺時 柩の中に手渡された花、中でも 芳香とした百合の白が、
一際目立ち印象的だった。
島はみな低き山もつ谷うつぎ 逸考
このピンクの美しい花が咲くと雨模様になると言われている。
樹高は2メートル程の落葉低木で湿地を好む
同属の藪空木 二色空木 黄花空木 箱根空木などがある。
風に揺れ丈それぞれにポピー咲く 逸考
今この公園の主役はポピーの花、赤、ピンク、白、覆輪など多彩で眼を愉しませてい
る。蕾のときは、下を向いているが咲き始めると上を向き二つに割れ薄い紙を揉んだよ
うな皺のある4枚の花弁の花が開く。ポピーは雛罌粟(ひなげし)の別名で 虞美人
草、シャーレーポピー,アマポーラなどとも呼ばれている。
名の由来:シャーレーポピー(shirley poppy)は1880年頃作出された園芸品種で
今日栽培されている殆どがこれに当たるとのことである。
夕翳をたたみそめたる白牡丹 逸考
二十数年前に島根県の大根島で購入した一株、毎年いまごろ美しい花をつける。
同じ茎に2~3個の蕾をつけると 最も大きな元気な蕾を一つ残し他はピンチする。
蕾がほどけ始め完全な花弁に開くまで丸二日かかった。 しばらく雨、風が吹かないで
ほしいと祈りたいような気持ちである。
重さうに揺れて薫れる藤の花 逸考
見事な房状に開いた藤の花、折からの谷風に房を触れ合いながら揺れ動く。花から花へ房から房
へ忙しく飛び交う虻たちが花びらを散らしている。
渦潮の奈落の底を覗き見る 逸考
四国と淡路島の間にある鳴門海峡の渦潮、4月~5月にかけて大潮の続く日が
大きな渦潮が見られるとのことであるが、観潮に出かけた日は 生憎、大潮の日で
なく残念だった。渦の近く船が近寄るとローリングして舷側に体をのけ反るように
カメラを構え奈落の底を覗きみるようにシャッターを切った。
転舵して渦潮忽ち遠くなる 逸考
この日乗船したのは「日本丸」 他に「咸臨丸」の二隻で運航されている。
南あわじ市 「うずしおクルーズ」(ジョイポート南あわじ)
幹肌にブーケのごとき桜咲く 逸考
老木の桜の幹にしがみつくように咲く花は、秘めた力強さを感じる。幹に直接咲いているところが
なんとも可愛い。何かブーケのようにも見えてくる。春の贈り物のような・・・・・
大方の花見客は 立派な枝ぶりの絢爛たる花を愛で、幹に咲いている花なんて、見過ごしてしまう
だろう。
菜の花の島の段段畑かな 逸考
菜の花は春の代表的な風物詩である。この菜の花は切り花として出荷される。切り花として栽培さ
れるものは チリメン白菜や改良品種で、葉が白っぽく縮れている。 咲き始めのころは食用にも
利用されるようだ。
菜の花を詠んだ俳句は 有名な 与謝野蕪村の
菜の花や月は東に日は西に
菜の花や鯨もよらず海暮れぬ
など 画家でもあった蕪村のスケールの大きな句は 絵画的である。
花すもも閑かに開く過疎の邑 逸考
今年も桜に先駆けて、近所の空家になっている庭に 李(すもも)の花が美しく
咲いている。 初夏には 李の実となるが 採る人もなく 烏が啄ばんでしまう。