尺取の全身使い尺を取る 逸考
尺取虫はシャクガ科の蛾類の幼虫である。しかしイモ虫と異なる点は普通のイモ虫が体全体にある足と
疣足を使い物に体を沿わせて歩くが、尺取虫は体の前後の端にしか、足がないということである。
全身の屈曲運動で指で物の寸法を測る格好に似ているところから、この名がある。
尺取虫に全身の尺を取られると死ぬなどという俗説がある。
空が灼け雲焼け今日の暮れにけり 逸考
午後から一時雨または雷の予報に期待していたが一滴の降雨もなく肩透かしを食った感じだ。ギラギラと容赦なく照りつける太陽が 恨めしい。今夜も寝苦しい熱帯夜か?
炎天を突き刺してゐる棘の先 逸考
このところ連日、猛暑が続く。ラジオ放送で地名は聞き漏らしたが、最高39℃を記録したと報じていた。太平洋高気圧の勢力が強く日本列島を覆い今週いっぱいは、この酷暑が続くらしい。八十路にさしかかるわが身に この暑さはこたえる。
数年間、地下で棲息していた幼虫が蛹になり、夏、地上に這い出して背を割り脱皮、夜の間に成虫になるらしい。 シャーシャーとけたたましく鳴く樹の枝に、まだ翅 の乾ききらないクマゼミが自分の殻をしかと抱くように とまっていた。短い蝉の一生、新しい命の誕生である。
何年も使い古した この南部鉄の風鈴に愛着がある。
舌の部分の糸と短冊を横着をして 今年は替えずにそのまま軒に吊るした。
梅雨の最中(さなか)、蒸し暑さが続く。
漸く夕風が微かに流れはじめると 言い訳ほどの音色でチリンと鳴った。
角出せど行方定まらぬかたつむり 逸考
裏庭にある榊の新葉が、食い荒らされているので 葉裏をよく見ると 居るは居るは 蝸牛の群れ、これほどの数は初めてだ。葉に這った跡が白く光っている。頭だし角を出し葉から葉へ逡巡の永い一日がはじまる。
風蘭は老木などに着生するラン科の常緑多年草。晩夏に白い花柄を出して数輪の花をつけるが、花弁は三裂し、長く曲がった細い脚(距 キョ という)が下がっている。風蘭の名は、風に乗って木に止まったように見えるからとか、樹上の風を見て茂るからだともいわれている。
別名のフウキラン(富貴蘭)は,江戸時代に大名,武士,富豪が好んで栽培したことによるとのことである。
写真の風蘭は 株分けしたものを、知人からいただいたもので、素焼き鉢に水苔で植え込み、立ち木の枝にぶらさげている。
田植の頃、些緑色の弱々しく見えた苗が、株数が増え
青田を吹く風の行方も見えるほどの丈にまで育っている。
今年の梅雨は例年にない多雨で、今のところ水不足の
心配はないだろう。あとは台風の来襲のみが気懸りだ。
只管 豊穣の年となることを希うのみである。
諺で短いものの譬えでアヒルの火事見舞いとかアヒルの脚絆とかいうようだが、水の中に
入ると水掻きのついた短い脚を驚くほど器用に使うことに気づいた。
群を離れて一羽のアヒルが羽ばたき水を浴び、神池に静かに綺麗な波紋を描く。
山桃(山楊)は入梅の頃に雌株に実が熟し甘酸っぱい味がする。
子供の頃に口元と指を赤紫色に染め
て食べたのを想い出す。
公園の青芝の上に、山桃の実が、ぼろぼろ落ちて小鳥が啄ばんでいた。
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少しの音や光の変化に敏感で一目散に逃げ惑う、まことに臆病な虫を一度撮ってみようと思い
漁港に行く。競り台の下の一群れが、驚いて四散するのを連続シャッターを切った。前後がわからない
奇妙な虫です。
舟虫の仔細知らざる汝(なぬ)の貌 逸考