▼【没後10年】私が会った飯野賢治という人
●飯野賢治没後10年。小島監督、上田文人、浅野忠信、ピエール瀧らが語る
特別企画が始動!映像とテキストでその歩みを振り返る
*本記事は、ゲームクリエイターの飯野賢治氏の没後10年を迎える2023年。
ゲーム業界の枠を超えミュージシャンやアート界隈とも繋がりのあった
飯野氏の功績を振り返る企画がスタートしたことを受け
2013年に当BLOGでアップした追悼記事に若干の修正を入れてアメブロから移転したものです。
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既に各方面でさんざん取り上げられているのでご存知のことと思うが
「Dの食卓」など、90年代にゲームクリエーターとして活躍した
飯野賢治氏が2013年2月20日にお亡くなりになった。享年42歳。
クリエーターの方が亡くなってこれほどショックを受けたのはアニメーション監督の今敏氏以来。
【関連記事】今敏監督、本日で没後10年
当BLOGでも昨年(2012年)9月に近況と著書「息子へ」を紹介したばかり。
セガサターン時代に多くの話題を振りまいた飯野賢治氏は
コンシューマー撤退から10年後にひっそりとiOS用アプリ「newtonica」を発表。
2009年にはWiiウェア「きみとぼくと立体」を発表したが現在は再びゲームから遠のいている。
ゲーム業界だけで括るとビッグマウスということになるのだろうが
この方の場合、音楽や執筆など多方面で活躍されているので
ゲームに対するこだわりはそれほどないのかも知れない。
金の匂いを追うのではなく、本能に従って生きる姿はちょっと羨ましい。
「息子へ。」は、ひとりの親の目線で書かれた100年後にも読み継がれて欲しい名著。
あれからわずか半年ほどでこんなことになろうとは夢にも思っていなかった。
近しい方からの追悼記事はWebのあちこちで読むことができるので
私は「ほんの少しだけ知っている人」という距離から飯野氏を振り返ってみたい。
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多くの方にとって飯野氏と言えば、巨漢に長髪のイメージだろう。
プレイステーションとセガサターンが激しいシェア争いをしていた頃に
PSからSSへの電撃移籍を発表し、当時のゲーマーを随分と驚かせたものだった。
3DOも持っていた私からすると、真っ先にハード戦争から脱落した3DOを牽引していたのが
飯野氏率いるワープであったため、世間から忘れられてゆくことに一抹の寂しさを感じたりもしたのだが
3DOで生まれた「Dの食卓」を手土産にして、飯野氏はゲーム業界だけなく文筆、音楽、テレビまで
八面六臂の勢いで活躍の場を拡げていった。
今でこそクリエーターがメディアに登場するのは当たり前になったが
当時はまだまだ裏方のイメージが強く、クリエーターへのインタビュー記事が
誌面のトップを飾ることなどほとんど無かったように記憶している。
それまでのクリエーターには無い過激な発言や奇抜なプロモーション展開
(数十万の限定版を販売し、購入者の元へ飯野氏が直接届けるなど)が耳目を集め
飯野氏は一躍ゲーム業界の寵児となった。
同時に、その歯に衣着せぬ発言は度々物議を醸し、特に「ゲーム批評」誌上で連載された
「エビスからの手紙」は多くのゲーマーが抱いていた疑問や不満を代弁するかのような内容で大きな話題となった。
しかし、ゲームクリエーターとしては「エネミー・ゼロ」をピークにして下降線を辿り
続く「リアルサウンド 風のリグレット」「Dの食卓2(D2)」も苦戦。
飯野氏の評判も「声だけは大きいが、出してきた作品は・・・」へと次第に変わっていった。
私が飯野氏にお会いしたのもちょうどこの頃。
確か「リアルサウンド」の発売前(1997年頃)ではなかったか。
「リアルサウンド」の話もそこそこに、
エンディングに使用された矢野顕子のファンだという話で意気投合し
好きなアルバムの話で盛り上がったのをよく覚えている。
その日をきっかけに、時候の挨拶程度ではあるがメールでやり取りをさせていただくようになった。
飯野氏は、メディアに登場する時の印象とは全く異なり温厚で物静か、
時折少年のように屈託なく笑う、とても純粋な方だった。
睨みつけるような表情でメディアに登場する飯野氏を見るにつけ
これはご自身の作品と会社(ワープ)の認知度を上げるための
創られたヒール役なのだろう、と思うようになった。
そして、(ゲーム業界の)第一線を退いてからの
飯野氏の活動を追っていくごとに、その予想は確信へと変わっていった。
ゲームも、ピアノも、奥さんも、お子さんも、好きなものを真っ直ぐに愛して
最後の最後に少しだけ世間を騒がせて42年の人生に幕を下ろした飯野氏。
知名度からしても、手掛けた作品の販売本数からしても
彼を上回る功績を持つクリエーターはゴマンと存在する。
没後10年が経過した今(2023年)、遺された作品を遊ぶだけではピンと来ない方も多いだろう。
しかし、ネット上の反響の大きさと、その大半が早過ぎる死を悼んでいることを見て
彼がゲーム業界に与えた影響は、もしかすると彼が思っている以上に大きかったのではないか、と思う。
有り難くもなんともないご高説をグダグダ垂れ流すクリエーターが増えれば増えるほど
そのカウンターとして、飯野氏の破天荒な人柄と、素人目にも分かり易い
劇場型のメディア露出に、当時のゲーマーは得体の知れない期待感を持っていたのだ。
正直に言います。
「エネミー・ゼロ」は難し過ぎて挫折しました。
「Dの食卓 2」もあまり好きではありません。
でも、型にはまらないあなたの作品に、私はいつもワクワクさせられていました。
ありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
▼【2024年7月追記】「リアルサウンド 風のリグレット」がAmazon audibleで復活
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2024年07月18日配信■audible:リアルサウンド 風のリグレット スペシャル二大特典付き
2024年07月18日配信■audible:リアルサウンド 風のリグレット
【没後10年】私が会った飯野賢治という人
企画・監督を飯野賢治氏が務め、ドリームキャスト用ソフトとして発売された
「リアルサウンド 風のリグレット」がAmazon sudible用ソフトとして2024年7月18日より配信開始。
ヒットメーカーとして知られる坂元裕二のオリジナル脚本で
声の出演も柏原崇、菅野美穂、篠原涼子、裕木奈江、末広透、前田愛と
当時のワープの勢いを感じさせる豪華キャスティングだった。
2024年7月22日まで★【プライム会員限定】Audible会員プラン 3か月無料体験キャンペーン中
audibleは2024年7月22日まで無料体験期間が通常の1ヶ月から3ヶ月に延長されるキャンペーン中で
無料体験中なら坂元裕二の脚本(PDF)や飯野氏のメッセージ付きスペシャル版が30%OFFで購入できる。
(通常価格は2,200円、無料体験申し込みで1,540円)
特典なしの通常版ならば、無料体験だけで楽しむこともできる。
ホイール操作のiPodが登場した時に「今こそ移植のタイミングでは」と大興奮したのもはるか昔の話。
飯野氏が亡くなって早11年、まさかこんな形で陽の目をみることになろうとは。
▼ゲーム批評「エビスからの手紙 スクウェア篇」
最後に、飯野氏の「やんちゃ坊主」的なパブリックイメージを決定付けた
「エビスからの手紙 スクウェア篇」を手書きで掲載。
17年ほど前に購入した「ゲーム批評」を棚から引っ張り出してきた。
当時のスクウェアは、長年任天堂ハードに投入していた「FF」の最新作を
PSに投入すると宣言しただけでなく、既流通を無視したコンビニ流通の強硬立ち上げや
クリエーターの大量引き抜きなど、とにかくやること成すこと全てが派手だった。
現在は業界の情勢も随分と変わっているので、その点を念頭に置いて読んでいただければ。
エビスからの手紙 スクウェア様篇
どうもみなさん、おひさしぶりの飯野です。
この連載ももう5回目になるんですけど、前回は珍しく「褒め手紙」だったので
いろんな人から「パワー落ちたね」とか「もう怒るコト無くなったんじゃないの?」とか
言われまくりましたが、今回は違ーう!もう怒りまくっている!もう高城どころじゃなーい!
なぜだれも語らん?ナゼだれも書かん?何故だれも怒らん?
そう、連載第1回目以来の久々のハイテンションでおくる
今回の手紙の宛先は、スクゥエア様です。
<スクウェア様、人の迷惑も考えましょう>
今回、スクウェア様にこの手紙で言いたいのは、
「あんた、クリエーター引っこ抜き過ぎだ!業界めちゃくちゃにするな!
迷惑している人や会社、そして業界全体のことも考えろ!」ということです。
もし<引っこ抜く>という言葉に問題あるなら撤回します。
ただ、何十人ものクリエーターを良い条件で、それが制作途中であっても、
ヘタすりゃチームごと自分の会社に連れてくる、それが僕には
<引っこ抜き>という言葉以外思いつきません。
僕が<引っこ抜かれそうになった人>から聞いた話を考えても、
その接触の仕方、その交渉内容は完全に引っこ抜きです。
確かにこの引っこ抜きというヤツは、今までにも業界のエゲツない企業によって
多少は行われていましたが、ここまで大々的にやったことは無かったように思えます。
また、制作途中のスタッフまで引っこ抜くこともそんなには無かったですし
チームごと引っこ抜くなんて滅多に無かったと思います。
それはナゼでしょうか?
<ゲーム業界がメチャクチャになってしまうから>ではないでしょうか?
「RPGばっかりじゃキツいから、格闘も創りたいよね、よし!のチーム引っこ抜け」
「あのチームのRPG結構絵、上手いよな、よし!カモーン」じゃあ業界おかしくなると思いませんか?
せめて、制作途中のスタッフを引っこ抜くのはマズいと思いませんか?
少なくとも僕は、スクウェアからワープ(僕のやってる会社です)に来たいという
スタッフには、「今やってるヤツが終わったら来てね」と言っています。
(もちろん、スクウェア以外から来た人にもね)
だって、欲しいから取るじゃ、バカなドロボーと同じだと思いません?
相手の事も考えましょうよ。
例えばサッカーの世界でも<引っこ抜き自由>じゃ、チームワークが滅茶苦茶になって
その国のサッカー全体のレベルが下がってしまうから
その時には相手に多額のお金を払ったり、シーズン中は避けるようにするなど
なるべく問題がないようにしてるじゃないですか。
もちろんこの業界、常識が通用しないのはよく知っていますが
せめて同じ業界の人々に迷惑かけるのはやめましょうよ。
小さな会社じゃないんですから、どちかというと手本になるべき規模の会社なんですから。
<お金が一番なのは分かりますが・・・>
別に僕は、スクウェアに行く人を悪く言うつもりはありません。
何十人もかけて大作を作るなどという、歯車社員の作業仕事はとても素晴らしく
自分の個性が発揮できるやりがいのあるグレートな仕事だと思います。
そして、クリエイティブにはお金も必要ですから
お金をチラつかせられたら行ってしまう、その気持ちよく分かります。
お金が一番ですよね。
またこの業界は生き残りが激しいですから、誘われたら良い方へ行ってしまい
途中まで創ってきた作品や、後に残された仲間のことなんて全く考えないという、その気持ち大事です。
きっと周りから尊敬されることでしょう。
そんな人々は全く悪くないのです。とても賢い人達です。
だから!だ・か・ら!あんたが考えて欲しいんです!スクウェア!!
<スッキリ&ハッキリしたナイスなビジネス!?>
しかし、なんで突然こんな事をしているのでしょうか?
任天堂オンリーをやめて(完全にやめたわけではないらしいですが、そこがまたニクいね)
ソニー大作戦をするのに、そんなに人数が必要なのでしょうか?
何かソニーと約束でもしたのですか?
ソフトの価格とCDという映像メディアを考えてソニーに行ったと
あちらこちらに書いてありますが、本当は違いますよね?
店頭公開した会社は売り上げや利益を守らなきゃならないので
いつ出るか分からないニューハード、N64の開発をするのは怖いんですよね。
スタッフを引っこ抜いた手前、セガではできないんですよね。
だからソニーなんですよね?違います?
製造コストや流通の事を考えたとき、一番話に乗ってくれそうだからソニーなんですよね?
バーチャ2のスタッフ入れておいて(?)セガに「サターンやります」って言えないですよね。
NINTENDO64はタイトル数も絞られちゃうから、店頭公開企業にはいまさら無理なんですよね。
だからソニーなんですよね?違いますか?僕にはそういう理由しか考えられないんです。
でも、ソニーと組んだのはギャンブリングという意味では、
度胸のあるスッキリ&ハッキリしたナイスなビジネスだと思います。
(これは架空の話ですが)別にクロノの格闘をやろうが、チョコボのゲームを出そうが
コンビニエンスと独自の流通をやろうが、制作途中の任天堂のゲームを急いで出そうが
もしそんなことがあっても、僕には全くどうでもいいことです。
(だが、プレイステーションでのスクウェアのCD製造の値段や流通の方法が違ったら
『みんな平等』と言っていたソニーを僕は許さない。仮に、買い取りのパーセンテージが
スクウェアだけ59%だったりしたらみんな怒ると思いますよ)
だけど、そのやり方に問題があると思うんです。
もし、それが目的で単純に引き抜いた(あ、すいませんね。大量に他の会社にいた社員を
入社させた、ですね)のであれば、スクウェアという会社は<最低>です。
前にもいいましたが、欲しいから取るではドロボーです。
食べたいから食べるでは子供です。
クリエーターという人間を材料的に見過ぎなのではないでしょうか?
歯車的に考え過ぎではないでしょうか?
頭の古~いオヤジの言うトコロの<ゲーム感覚>で行動していないでしょうか。
一応ゲーム業界を代表する企業の一つなんですから。
今回のこの事件を考えているうちに、週刊スピリッツ上で連載されている
「編集王」というマンガの「明治」という編集人のやっている事を思い出しました。
人を素材として扱い、お金を払って責任を負わせることによってクリエイターと呼び
そのクリエイター達が、ある流れの中で歯車的に作り出す、
そんな作品が人々の心を揺り動かすのでしょうか?
ファイナルファンタジーが受けた理由は、別の次元にあると思います。
また、今回取材する中で、いろんな雑誌の人に
「スクウェアの(悪い)記事を書くと、広告がストップされる、
(ゲーム画面などの)素材提供がなくなる」という話を聞きました。
僕は心から「いくらなんでも、そんなことはしないだろう」と思っています。
今やゲーム業界の顔であり、子供達の憧れの会社であり、社会的にも認められた
大企業なのですから、「そこまではしないよネ」と心から信じています。
いままで周りとマルくやってきたこの会社は、任天堂オンリーをやめることから始まった
これらの行動によって、ゲーム業界に対し三角関係以上の
スクウェアな関係を作ってしまうように思えるのですが
果たして「そこまでするコトだったのかなぁ」と僕なんかは考えてしまいます。
また、「店頭公開するって、クォーターや半期や1年単位では考えられない
ゲーム業界にいる会社にとっては結構マイナス要素も強いよなぁ」と唸ってしまいました。
「フン、ドラクエ?もっと面白いの創ってヤルぜ!」と言っていた頃が良かったのではないでしょうか?
★しのびんのほしいもの&いつか買うリスト
当事者として、この当時のことを経験した自分から言わせると、全然違うわ!知ったかも酷すぎる!
バーチャチーム、セガからスクエアは引き抜いてないよ!だって自分が当事者だからよく知ってる。
そのほかのチームにしても、引き抜いて無いチームが多数。
欲こんな大嘘が書けるもんですよ。
サーターンで格闘ゲーム出さない!ってくだりも全然嘘です。
正直申し上げて、このコメントを公開するか悩みました。
というのも、記事にある通り私は飯野さんのことを
「少しだけ知っている人」に過ぎない立場ですし
クリエイターの引き抜きなどの裏事情について
どの情報が正しいのかを判断するだけの材料を持っていないからです。
私の知る限り、ゲーム批評という雑誌は
メジャー媒体では忖度して書けないことも
臆する事なく書いて載せる雑誌でしたし
当時編集長を務めていた方もかなりのプライドと
決意を持ってやっていらしたので
全く裏取りをせずに掲載したとも思えないですよね。
ゲーム関係者の認知度も相当高かったので
もし記事の内容が全然違うということでしたら
当時セガなりスクウェアなりの方がゲーム批評編集部に
事実誤認があるとクレームを入れていたのではないかと思います。
エンペラーさんのお立場が当時どういったポジションの
「当事者」だったのかは私にはわかりかねますし、
本記事において後半部分はいわば「おまけ」であり
追悼が主目的ですので、この辺で終わりにさせていただけたらと思います。
ご不快な思いをさせたらすいません。
今後ともよろしくお願いいたします。
エンペラーさんのプライバシーがかなり含まれる内容でしたので
こちらの判断で非公開にしましたが
ご丁寧な返信をありがとうございました。
当BLOGのような、長く続けているしか能のないところには
勿体無いほどの濃いお話でした(笑)
エンペラーさんのお立場から見た当時の内情については
(外野なので想像ではありますが)理解しました。
「ゲーム批評」の運営方針が、掲げた看板とは若干違っていたことや
マイクロデザイン出版と飯野さんとの関係も今更ながら知りました。
最初にいただいたコメントのテンションも
黒田さんのお立場からすれば当然な部分もあると思います。
ただ、重複になりますが本記事は追悼が主目的ですので
一番最初についたコメントが故人に対しての批判であったことは
管理人としては寂しかったです(笑)
もう一点、時効なので書いてしまいますが
私は当時の編集部にある問題(流通サイドの話)について投書したことがあり
それを読んでくださった担当者さんがわざわざ会いに来てくださったことがありました。
お話をして、ゲームについても、ゲームにまつわるビジネスについても
真面目に考えている雑誌なんだなということを
その時に感じたんですよね。
ですから、私にも私なりの「ゲーム批評」の印象が
(黒田さんに比べれば少ない判断材料ではありますが)あるんです。
もう30年近く前の話ですし、この辺でお開きにさせてください。
この度は貴重なお話をありがとうございました。