忍之閻魔帳

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映画「九十歳。何がめでたい」リビング レジェンド・草笛光子に感服・乾杯

2024年06月14日 | 作品紹介(映画・ドラマ)


▼映画「九十歳。何がめでたい」リビング レジェンド・草笛光子に感服・乾杯



シリーズ累計170万部を超える佐藤愛子のエッセイ「九十歳。何がめでたい」
続編の「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」の2作を
実年齢で今年90歳を迎える草笛光子主演で映画化。
断筆宣言をした作家のもとにやってきたひとりの熱血編集者に口説き落とされ、
渋々書き始めたエッセイが、社会現象を巻き起こすほどのヒットになっていく様子をコミカルに描く。


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主演の草笛光子は言わずと知れた日本を代表する女優のひとりだが、意外にも主演は本作が初。
共演には唐沢寿明、真矢ミキ、木村多江、片岡千之助、中島瑠菜、LiLiCo、宮野真守。
カメオ出演としてオダギリジョー、清水ミチコ、石田ひかり 三谷幸喜らが華を添え、
草笛の実妹である藤間爽子との貴重な姉妹共演も実現している。
監督は「こんな夜更けにバナナかよ」「そして、バトンは渡された」の前田哲
草笛とは天海祐希主演の「老後の資金がありません!」を撮った際に意気投合し、
今では毎年正月に草笛宅を訪問するほどの仲らしく、今年90歳を迎える草笛のため本作の企画を立ち上げた。
そのため、本作は「草笛光子生誕90周年記念作品」と銘打たれている。


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もしかして前田監督は東映の山田洋次を目指しているのだろうか。
松竹配給の監督作「こんな夜更けにバナナかよ」で手応えを感じ
本作と同じ東映配給の「老後の資金がありません!」で
『前田哲が手がける令和の人情ドラマ』の枠組みをほぼ完成させたのだと思う。
草笛の卒寿を祝う意味もあってか、多少毒気の強いコメディだった「老後の資金」から
ぐっとソフトなタッチになり、佐藤愛子=草笛光子の人としての可愛らしさを前面に押し出した
ファンメイドと言っても良いほどの愛情溢れた作品に仕上がった。
「老後の資金」では日本アカデミー賞の助演女優賞候補となったが
本作では間違いなく主演候補になるであろうし、もしかすると受賞もあるかもしれない。
高齢の俳優に対し功労賞的な意味で与えられるのとは全く違う、
現役女優としての輝きが本作にはあるのだ。

テレビを見たり新聞を読んでは気になるニュースにひとりボヤき、
老いてゆく我が身に一抹の寂しさを感じているようで、
差し入れだけ受け取って編集者を追い返す欲深さ(食い気)や、
人前に出るとなれば颯爽と一張羅を着こなす美意識は衰えていない。
若い女優が何十歳も年上の女性を演じるのとは違い、
発する言葉や所作の全てにリアリティがある。
佐藤愛子が90歳でエッセイを書き、それを90歳の現役女優が演じる。
30歳の主人公を30歳の俳優が演じるのは簡単だろうが、この条件はなかなか揃わない。
実現しただけで奇跡と言って良いのに、出来上がった作品はとても温かく感動的。
スクリーンの中の草笛は、気品と風格、美貌に茶目っ気まで
全てを兼ね備えた主演女優として、圧倒的な存在感を放っている。
90歳にしてこれほどしなやかで軽やかな美しさは
視線を海外に向けてもなかなか記憶にない。
「つぐない」出演当時のヴァネッサ・レッドグレイヴですら70歳、
ジュディ・デンチが「007 スカイフォール」でMから引退したのが77歳である。

エッセイをそのまま映像化したのでは芸がないと思ったのか
本作は唐沢寿明演じる担当編集者・吉川の夫婦関係をもう一本の柱とし、
連載開始を機に作家として活力を取り戻していく愛子と、
ヒット作を生んだ手応えで自信を取り戻していく吉川との関係が交互に描かれる。
前田監督は「老後の資金」でも主人公の天海祐希と姑の草笛光子の二人の関係にスポットをあてていて
周りに登場するキャラクターは全てモブ的な扱いになっていたのだが、
草笛の魅力がとにかく強い上に劇中で披露される原作のエピソードがどれも素晴らしいため
編集者側に物語が移った際にどうしてもテンションが落ちてしまうのが惜しい。
本作に関しては、視点を主人公に固定し、脇に登場する人物を平均的に掘り下げた方が
より厚みが増して良かったように思う。
「老後の資金」に続き本作にも別人の役で登場する三谷幸喜はもはや名物キャラクター。
あのクラスの人物がもっとあちこちに出てくれば、映画全体の格がぐっと上がったはず。
三谷幸喜は「有頂天ホテル」など多人数を魅力的に動かすことを
作り手の側として知っているので、出過ぎず隠れ過ぎずの名人芸だった。お見事。

前田監督が今後もこの路線を続けていくのであれば
絶滅しかけている日本のホームドラマはもうしばらくは安泰と言えそう。
草笛光子の長寿と共に、人情劇の灯が消えないことを願う。

映画「九十歳。何がめでたい」は2024年6月21日公開。



▼高齢の女優が活躍する邦画2本


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配信中■Amazonプライム:大誘拐

私の好きな2大ハリウッド老女優は、ジュディ・デンチ(89歳)とヴァネッサ・レッドグレイヴ(87歳)。
草笛はさらにその上で主演を務め、スクリーンに華やかさを振りまいているのだからもはや世界一の90歳かもしれない。
ちなみに邦画としては、2013年公開の「ペコロスの母に会いに行く」で主演を務めた赤木春恵が
当時88歳での初主演ということで「世界最高齢での映画初主演女優」のギネス認定を受けている。
今作で草笛が申請をすれば記録更新間違いなしなので、是非とも出していただきたい。
もうひとつちなみに、私が日本で一番好きな「おばあちゃんが活躍する映画」は北林谷栄の「大誘拐」。
相続税に高さに腹を立てた老婦人が、緒形拳演じる警察相手に大芝居を打つコメディの決定版で
これまで何度見たかわからない。未見の方は是非ともご覧いただきたい。
「大誘拐」に主演した頃の北林谷栄はちょうど80歳だった。



▼草笛光子の印象深い作品


映画:犬神家の一族(1976年)
映画:デンデラ(2011年)
老後の資金がありません!(2021年)
次元大介(2023年 Amazon Prime Video)

私が草笛光子の顔と名前を覚えた最初の作品が「犬神家の一族」の犬神梅子だった。
「極道の妻たち2」の賭博場の女主人も印象に残っているが
特に強烈だったのは、老女優が大集結したカルト作品「デンデラ」だろう。
姥捨の風習が残る村で山に棄てられた老婆達が、生き延びるために集落を築き
暮らしているところに人喰い熊が現れて壮絶な戦いを繰り広げる。
草笛は浅岡ルリ子や倍賞美津子らを束ねる最高齢(100歳)のリーダー・三ツ矢メイを演じていた。
あれは本当に強烈だった。プライムの見放題にずっとあるので定期的に見てしまう。

【関連記事】Amazonプライムビデオ「次元大介」別に次元でなくてもいいけれど

ドラマも入れて良いなら「渡る世間は鬼ばかり」の山口政子も長く続けていたし
2021年放送の池脇千鶴主演「その女、ジルバ」の店主も粋でカッコ良かった。
配信では、昨年配信されたばかりのAmazonプライムオリジナル「次元大介」
普段は商店街で時計屋を営む老婦人、しかし実は世界一のガンスミスという
痺れるほどカッコ良い矢口千春を演じている。この役を89歳で引き受けられるのは
世界広しといえど草笛ぐらいだろう。
ヘレン・ミレンがガンアクションをこなした「REDリターンズ」(2013年)ですら当時67歳である。



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