▼【訃報】すぎやまこういち、90歳
「ドラゴンクエスト」シリーズの音楽を筆頭に
ザ・タイガーズの楽曲群、特撮、アニメ、CMに至るまで多岐にわたる活動をしていた
偉大な作曲家・すぎやまこういち氏が9月30日、敗血症性ショックのため90歳でお亡くなりになった。
先日の東京オリンピックの開会式でも「ドラクエ」のメインテーマが使用されたばかりだった。
現在制作進行中の「ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎」の作曲が
最後の仕事となったそうだが、どのぐらいの楽曲を作り終えていたのかは不明。
私としては、やはり「風来のシレン」が忘れられない。
コッパを相棒に独り旅をする風来人の心細さや寂しさを
あれほど完璧に表現したBGMはすぎやま氏以外には書けなかったろうと思う。
ファミコンディスクの「バックギャモン」、SFC「モノポリー」「46億年物語」など
ゲームだけでも「ドラクエ」以外に実に多彩な仕事をされていて、
ピコピコサウンドだったファミコンBGMを「サウンドトラック」の域にまで
引き上げた立役者とも言える。謹んでご冥福をお祈りいたします。
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発売中■CD:すぎやまこういち ゲーム音楽作品集
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筒美京平、橋田壽賀子、田村正和、すぎやまこういち。
幼い頃から活躍していた人達が今年も次々に亡くなっていて寂しい。
▼たつき諒「私が見た未来 完全版」自己探求と自己暗示の錯綜で生まれた大予言
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10月02日配信■コミック/Kindle:私が見た未来 完全版
<楽天ブックス>
10月02日発売■コミック/kobo:私が見た未来 完全版
たつき諒の伝説の予言漫画が10月2日に復刻・再販された。
Amazonの書籍部門でもベストセラーランキングの上位にランクインするなど
都市伝説系のYouTuberや「やりすぎ都市伝説」などで紹介されたこともあり
予想通りの大ヒット街道を驀進中のようで何より。
楽天ブックスで予約していたのだが、発売日目前になってもなかなか発送メールが届かず
結局我が家に投函されたのは10月3日のことだった。
「ノストラダムスの大予言」のブームをリアルタイムに経験した世代だけあって
この手の本が大好物な私はお気に入りの菓子を少しずつ食すようにゆっくり数日かけて読んだ。
Amazonのカスタマーレビューで書かれている「拍子抜け」「騙された」といった(低)評価は
もっと明確な解説を期待して買われた方なのだろうと思うがちょっと待ってほしい。
そんな真面目な予言書だと思って買ったのか?
と問いたい。
天災が起こった後にどこからか上がってくる謎のTwitterアカウントの予言ツイートや
匿名掲示板でしばしば取り沙汰される「未来人」を名乗る書き込みなど
世の中には怪しい話がWi-Fiの電波ぐらい飛びまくっていて、
それらの多くは愉快犯でほぼ間違いないだろう。
しかし、100%全てが戯れ言だと断定するだけの確証も持ち得ない私たちにとって
「数%は本物かも知れない」という一抹の不安と淡い期待の入り混じった感情が
占いや予言、心霊現象といった『不確かなもの』への興味へと繋がっている。
心霊写真や映像の多くは人工的に作られた偽物か偶然の産物か単なる勘違いだろうが
「これはもしかして本物では?」と感じるコンテンツも極稀にあって、
その出会いを期待して、90%以上の紛い物をフェイクと承知した上で楽しんでいるのだ。(だよね?)
年齢と共に多少の分別もついてきた私でも、超常現象の全てを「あんなものはフェイクだ」と
コキおろすような無粋な真似はしたくないし、少しのファンタジーはあったほうが楽しい。
「私が見た未来」は、幼い頃に読んだとても懐かしい、罪のない「戯言本」の一種であって
それ以上でも以下でもないというのが、読後の素直な感想だった。
本作の前半は、たつき氏が漫画家を始めた頃からしばしば見るようになったという
著名人の死や災害の予知夢をコミックにしたもので、
後半は予言とは無関係の、たつき氏が過去に発表した短編が8作収録されている。
予言のみを期待した人にとっては、平たく言えば上げ底仕様なのだが、
魔夜峰央の初期の「パタリロ!」の巻末に怪奇モノの短編が掲載されていたようなもので
これはこれで世に発表された作品数が多くないたつき氏の傾向を知る上では貴重とも言える。
ただ正直な話、デビューまでの経緯を振り返る中で「ストーリーを書くのが苦手」と書いているのを
作品をして証明して見せたようなところはある。
私が最も興味深かったのは、たつき氏が当時描いた夢日記を読み返して回想・検証した追記の部分。
デジャヴ現象の大半は、実は実際に見聞きしたことを単に忘れているだけと
チコちゃんか何かで見たことがあるのだが
心理学的にも健常者の2/3は何らかの形で経験しているほどポピュラーなものらしい。
かくいう私も何度となく経験がある。
たつき氏の夢日記には何年も先の未来を見た(と思っている)部分と
単なるデジャヴが混在していて、そこを探るためにご自身の手で
夢判断などを調べたりしている。
こういう夢はこんなことを暗示しているといった解説を元に夢の内容を整理・推察していくあたりが
偉大な預言者然としていなくて好感が持てる。
我が身に起こっている謎を解明したくてあれこれ調べているだけなのだ。
最初は「夢の示す意味を知りたい」と自己探求で動いていたたつき氏が
俄かに沸き起こった「私が見た未来」ブームに他ならぬ自身が乗せられて
「その気になってしまう」ところまでストレートに描かれているのは驚いた。
意識して描いたのか、本気でそう思っているのかはご本人にしかわからないことだが
最初の頃はオロオロしていた新米占い師が、終盤にはノストラダムスよろしく
「世界を救うための提言」をする偉大な預言者になっているのは凄い。
NHKの「ねほりんぱほりん」の最新シーズンで母親が教祖になってしまった娘が登場するらしいが
ただのお母さんが教祖になっていく様子を間近で眺めるようなスリリングさがこの本にはあって
2025年7月に本当に大災難がやってくるのかはもはやどうでも良くなるレベルに面白かった。
2025年7月までに断捨離を進めておくかと心に留めながら、もう何度か読み返そうと思う。
たつき諒「私が見た未来 完全版」は現在発売中。