一歩先の経済展望

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4-6月期GDPも弱い消費継続か、岸田首相と日銀に誤算

2024-06-10 12:28:18 | 日記

 内閣府が10日に発表した2024年1-3月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比・年率マイナス1.8%と速報値のマイナス2.0%から小幅上方修正された。ただ、弱い消費が内需の足を引っ張っている構図に変化はなく、このまま消費者の節約ムードが継続すれば、4-6月期のGDPがマイナスとなった1-3月期から横ばいにとどまる可能性が出てきた。政府は当初、4-6月期にⅤ字回復を予想していたとみられるが、新たな政策対応の検討を迫られるかもしれず、日銀の利上げ判断も秋以降に先送りされる展開が予想される。

 

 <GDP改定値でも変わらぬ弱い消費>

 上方修正に大きなインパクトを与えたのが民間設備投資だ。速報値の前期比マイナス0.8%から同マイナス0.4%へとマイナス幅が圧縮された。また、民間在庫投資が同プラス0.2%から同プラス0.3%に引き上げられた。

 一方、家計最終消費支出は前期比マイナス0.7%から同マイナス0.8%へと小幅下押しされた。GDPの5割強を占める消費の不振は、賃金の伸びが物価の上昇に追いつかない実質賃金のマイナスを反映しており、4-6月期の個人消費の先行きにも暗い影を落としている。 

 4月の実質賃金はマイナス0.7%と25カ月連続のマイナスで、消費者の節約志向を強める要因となっている。5%台の賃上げを実現した今年の春闘の結果が統計上のデータとしてはっきり出てくるのは6月以降とみられ、4-6月期の消費が上向きになるのかどうかは予断を許さない。

 そこに足元での物価高による食流品価格の上昇を強調し、節約のノウハウを伝授するようなテレビ番組が多く放送され、消費者の節約意識が刺激されていることも見逃せない。こうした中で支給される国民一人当たり4万円の定額減税も、このような節約促進のマインドの広がりの中では想定よりも多く「貯蓄」に回る可能性が高まっていると指摘したい。

 このようにみると、4-6月期も内需は停滞感が強まる展開が予想され、プラス成長には外需の伸びが欠かせない。ただ、1-3月期にマイナス0.4%の寄与度となった外需がⅤ字回復するほど世界経済が4月以降に好転してきたとは思えない。

 

 <解散意識の岸田首相に逆風、日銀は利上げに慎重か> 

 4-6月期はよくて前期比小幅のプラス、場合によってはほぼ横ばいの可能性もあると筆者は予想する。この展開は、政府・日銀にとってアゲインストの風と感じるのではないか。岸田文雄首相は通常国会会期中の衆院解散を断念する方向であると国内メディアの多くが報道したが、9月の自民党総裁選で勝利すれば、その直後に衆院解散に踏み切ることも念頭にあるとみられる。その際に国内景気が上昇気流に乗っていればよいが、一進一退なら衆院選での追い風ではなく、逆風になる公算が大きい。

 一方、賃上げを起点に消費拡大ー企業収益の増加というプラスのメカニズム起動を目論んでいた日銀にとっても、もし、本当に消費の停滞が長期化する兆しが強まれば「利上げの検討」から「忍耐強く消費の回復を待つ」という路線へシフトする可能性が出てくることを意味する。

 一見すると地味なGDP改定値の発表には、上記のような意味が隠されていると指摘したい。

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