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米連邦公開市場委員会(FOMC)は18日、0.25%の利下げを決めたが、25年のFOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)は前回から利下げ幅が半減し、0.25%ポイントの利下げに換算して2回にとどまった。さらにパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で「ここからは新たな段階で、追加利下げに慎重となる」と述べ、米株式市場は大幅下落で反応した。
外為市場では、ドル買いの圧力が一段と高まる方向にシフトするとみられ、対円でも円安が進行すると筆者は予想する。日銀が利上げペースの鈍化を強調するほどに円安が進みやすくなる環境が整ってきたとも言える。19日午後3時半からの植田和男・日銀総裁の会見は、国内だけでなく海外の市場参加者の注目も集めそうだ。
<来年利下げゼロ予想も、市場で渦巻く次の利下げ時期への懐疑>
すでに内外のメディアが書き尽くしているため、米利下げにもかかわらず米株が大幅に続落し、19日の日経平均株価も3万8000円台に水準を切り下げていることにはあまり言及しない。
ただ、今回のFOMCの決定で国内メディアが見逃していることがある。それは25年の政策見通しで1人のメンバーが「据え置き」を予想したことだ。
メンバーの中央値は来年の2回利下げ(0.25%を1回とした換算)を予想しているが、それでは次回利下げはいつか、という問題が生じる。1月はスキップするとして3月に本当にできるのか──という根本的な疑問が市場で浮上したと指摘したい。
据え置きというメンバーが登場したということは、米インフレの粘着性が相当に強く、場合によってはしばらくは利下げ停止の可能性もあるのではないか、と市場参加者の少なくない人たちが感じ、米長期金利の上昇と米株の下落につながった、と筆者は分析する。
実際、パウエル議長の会見終了後、市場の織り込むの利下げ回数は事前の2回から1回に減少した。
<トランプ関税の影響織り込んでいないFRB、高まるドル高・円安圧力>
これをドル/円から見ると、ドル上昇圧力の増大とみなすことが可能だ。さらにトランプ次期米大統領が公約通りに関税を引き上げれば、米国内の物価が上がるのは避けられない。パウエル議長は18日の会見で「関税の影響について結論を出すのは尚早」と述べ、FRBの見通しにトランプ関税の影響が入っていないことを認めた。
トランプ関税の影響が加味されれば、物価見通しが上振れし、25年に2回の利下げ見通しがさらに修正される可能性が高まる。
このような見方が市場で広がれば、ドル高・円安の圧力が高まることになる。これまで指摘した点は、17日の当欄で予想した展開とほぼ同様の軌跡をたどっていると言える。
<日銀総裁会見の注目ポイント>
これから明らかになる12月金融政策決定会合で、日銀は政策維持を決めると予想されるが、19日午後3時半からの会見で、植田総裁がどのような発言をするかによって、円安が進むのか一進一退になるのかという大きな分かれ道を迎えることになる。
次の政策変更、つまり利上げの時期に関連し、1)米国の政策を見極めたい、2)春闘の賃上げの動向も注視ている──ことを強調した場合、マーケットは来年1月利上げの可能性が後退したとみて、11月15日に付けた156.75円を目指して円売りが活発化すると予想する。
一方、オントラックで経済状況は進行している点を強調すれば、1月利上げの可能性に関して市場の織り込みが維持ないし増大して、円安進行が止まる展開も想定できる。
きょうの日銀総裁会見は、いつも以上に植田総裁の発言の微妙な変化まで補足する必要が出てきた。
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