一歩先の経済展望

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弱い内需と輸入減少、GDP伸び率かさ上げのねじれ 来期は低成長も

2025-02-17 14:30:13 | 経済

 内閣府が17日に公表した2024年10-12月期の実質国内総生産(GDP)1次速報値は、前期比プラス0.7%、年率換算で同2.8%と市場予想の前期比同0.3%、年率換算で同1.0%を大幅に上回った。市場は円高と長期金利上昇で反応したが、今回のGDPを詳細にチェックすると、個人消費を中心にした「弱い内需」という実態が目立つ。

 それを反映して輸入が大幅に落ち込み、外需が見かけの数字を押し上げて高成長を印象付けるという「ねじれ」が発生している。このまま内需が弱ければ、2025年1-3月期のGDPは一転して低成長ないしマイナス成長に陥る可能性がある。

 

 <大幅成長の立役者は輸入のマイナス2.1%>

 需要項目別にみると、GDPの50%超を占める個人消費は前期比プラス0.1%となり、かろうじて3期連続のプラスを維持したが、堅調といえるほどの強さは示されなかった。宿泊などは強い需要が目立ったものの、コメや生鮮食品などの価格上昇で食料品などの消費が落ち込み、個人消費の小幅な伸びにつながった。

 設備投資は半導体への投資が活発化して半導体製造装置の受注が上向いたため、同0.5%と2四半期ぶりのプラスとなった。ただ、政府がDX投資促進税制などを導入した割にはプラス幅が小幅となり、内需寄与度はマイナス0.1%と3四半期ぶりのマイナスに転落した。

 外需寄与度はプラス0.7%と5四半期ぶりのプラスに浮上したものの、成長率押し上げの原動力は輸入が前期比マイナス2.1%と大幅に減少したことだった。輸入の落ち込みは日本国内の需要の弱さを反映しており、輸入の落ち込みで日本のGDP成長率がかさ上げされているというのは、実態と数字がかい離している「ねじれ」の構図になっていることを物語っている。

 また、輸出は前期比プラス1.1%と健闘したが、前期の同1.5%からは減速している。輸出には訪日外国人の消費(インバウンド消費)も含まれており、本来の意味での輸出が本格的に増勢となっているのかどうかは、この先のデータを確認しないと断定できないだろう。

 

 <長期金利上昇と円高、市場反応は尚早の可能性>

 17日の円債市場では、10年最長期国債利回り(長期金利)が一時、2010年4月以来14年10カ月ぶりという1.385%まで上昇。予想を上回る強いGDPを受けて日銀の利上げに「追い風」という見方が広がって、売りが強まったという。

 また、ドル/円も151円後半までドル安・円高が進行。背景に日銀の利上げ観測の強まりが意識されていたとの声が多かった。

 だが、上記で指摘したように、内需はマイナスの寄与度でその弱さを反映して輸入が減少した、とみるのが合理的であると筆者は考える。したがって「強い日本経済」のデータと捉え、景気に上振れのリスクがあると分析し、日銀の利上げパスがスティープ(急峻)化すると推理するのは、やや「尚早」と言えるのではないか。

 

 <来期は小幅成長ないしマイナス成長も>

 輸入が2期連続で大幅にマイナスになる可能性は、過去のデータから見て低いとみられている。もし、内需の伸びがこのまま鈍く、輸入が小幅のプラスになった場合、2025年1-3月期のGDP成長率は小幅のプラスないしマイナスに転落する可能性があるだろう。

 個人消費が賃上げに応じて高い伸びを示さない本当の理由を突き止め、その解消策に政府が乗り出さない限り、個人消費と内需の伸びが緩慢であり続けるという現象が継続すると筆者は予想する。

 

 <トランプ政権から見た日本のマクロ政策、通貨安意図と映っている可能性>

 ところが、貿易赤字の縮小を目指すトランプ政権から見ると、また、別の世界として映っている可能性があることを指摘したい。

 需要項目別のデータがどうであれ、結果として年率換算で2.8%の成長を達成し、消費者物価指数(CPI)も2024年の平均で生鮮食品を除く総合(コアCPI)が前年比プラス2.5%と3年連続で2%を超えている。

 しかし、日銀が1月に利上げしたとは言え、政策金利はプラス0.5%と実質金利で見れば大幅なマイナス金利が続いている。「意図的に政策金利を低位に推移させ、通貨を安くさせているのではないか」との疑問がトランプ政権内に浮上しても、形式論的には不思議はないと筆者は考える。

 

 <注目されるベッセント財務長官の「為替操作も調べる」という発言>

 実際、ベッセント米財務長官は14日、「相互関税」の導入に向けて行う貿易相手国に関する調査に関し、為替操作についても調べるとの見解を示した。

 ロイターよると、FOXビジネス・ネットワークのインタビューで「為替操作も考慮する」とし、「米国が強いドル政策を取っているからといって、他国が通貨安政策を取っていいということではない」と述べた。

 この先、トランプ政権と石破茂政権が関税を巡って交渉を本格化させ、日本にとって最重要な自動車輸出への関税賦課の回避を図ろうとした際、米側から「通貨安政策の修正」を求められた場合、どのような結末になるのか──。

 日本政府や日銀、市場関係者がこれまでに経験してこなかったような事態に直面する可能性があるかもしれない、と筆者は想定する。

 その意味でベッセント財務長官の今後の発言から、目を離せない状況になってきたと言えるのではないか。


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