12日から17日までコラムの送信をお休みします。秋の空気や風景などを満喫し、十分に充電して18日からのコラム再開に備えようと思っています。引き続き、よろしくお願い申し上げます。
田巻
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田巻
自民党の石破茂総裁が11日、衆参両院で首相に指名され、103代首相として第2次石破内閣を同日中に発足させる。30年ぶりの少数与党としてスタートを切ることになるが、懸念された自民党内の造反は衆院ではみられず、石破首相は第一関門を突破した。次の関門は2024年度補正予算案を成立させることになるが、国民民主党の賛成が不可欠になる。
ここでは、同党の主張するいわゆる「103万円の壁」の引き上げやガソリン税の減税が補正予算賛成の条件になるとみられるが、財源問題をどうするのかという部分が残っており、自民・公明の連立与党と国民民主との協議の行方によっては、東京市場の価格変動につながる展開も予想される。
<衆院決選投票、84票の無効票の意味>
11日午後の衆院本会議では首相指名選挙が行われ、30年ぶりとなった決選投票の結果、石破氏が221票、立憲民主党の野田佳彦代表が160票となり、石破氏が首相に指名された。参院でも石破氏が首相に指名され、同日夜までに第2次石破内閣が発足する。
石破氏が再度、首相に指名された最大の要因は、野党第1党の立憲民主が野党をまとめきれず、自公勢力を上回る議員数の結集に失敗したことだ。それは、決選投票に進んだ2人以外に投票した無効票が84票に達しことに示されている。
<バラバラ野党、まとまれば不信任案可決という現実>
だが、少数与党であることにはなく、野党が何らかの問題で結束して内閣不信任案を提出する場合は、衆院解散か総辞職の選択を迫られることになる。
石破首相はそうした事態に陥らないよう、政策ごとに野党と協議し、一部野党の賛成を得て予算案や法律案の衆院通過を図るしか、当面、政権を存続させる手立てがない。
したがって国民民主の主張する「103万円の壁」の引き上げとガソリン税の減税は、24年度補正予算案の成立には不可欠の要素となっている。
<浮上した財源問題、178万円への引き上げで7.6兆円の減収>
国民民主の玉木雄一郎代表は、その点を熟知して自民、公明が妥協するとみて強気の姿勢を継続してきた。だが、ここにきて2つの問題が浮上していると指摘したい。
1つ目は、財源の問題だ。基礎控除と所得税控除の合算額である103万円を国民民主の主張通りに178万円まで引き上げた場合、政府は国と地方を合わせて約7.6兆円が減収になると試算している。一部の国内メディアによると、玉木氏は財源確保は「政府・与党の責任」と発言しているという。
剰余金やその他のやり繰りで一定程度の財源を確保できたとしても、最終的に赤字国債の発行につながるようなことになるなら、その対応が妥当なのか、という議論が生じることになる。自民党の小野寺五典・政調会長は10日のNHK番組で「主に地方に多くのしわ寄せがいく。与党で出せと言われても難しい」「どういう落としどころにできるか、現実的な議論をこれからさせてもらいたい」と語った。
与党多数なら、この段階で国民民主の主張は「お蔵入り」となるところだが、だったら「補正予算に賛成しない」と国民民主が反対に回ると、補正予算案の成立は不可能となり、石破内閣は一気に危機に直面することになる。
それを回避するために、自民、公明、国民民主の3党間で「100%か0%か」という選択ではなく、妥協が図られる可能性が高いと筆者は予想する。
<玉木氏のスキャンダル、強硬姿勢に固執の可能性も>
ところが、ここで問題になってきたのが、玉木氏をめぐる不倫報道だ。同氏は11日の同党両院議員総会で不倫問題について陳謝し、政策を遂行するため代表にとどまりたいと述べて了承された。
これが第2の問題と言える。というのも、党代表のスキャンダル発覚で国民民主の交渉力が低下したとの見方がある一方で、ここで安易に妥協するとスキャンダルが影響したからだと世論から「白い目」でみられ、支持率が大幅に低下する可能性があり、自公との交渉でかえって強硬姿勢に固執するのではないか、との声も永田町では浮上しているという。
<赤字国債発行でも市場が反応しない理由、国債の前倒し発行の存在>
いずれにしても自公両党は補正予算案の成立に向けて、国民民主の主張を大幅に受け入れて「新たな多数派」を形成することが必須の課題となっている。
国民民主はガソリン価格高騰抑制のためのガソリン税軽減を目的とした「トリガー条項」の凍結解除も求めているが、国と地方で1.5兆円の減収要因になると政府は試算している。
財源確保のために最終的には赤字国債の発行に踏み切る可能性もあると筆者は予想するが、実は円債市場の参加者はこの問題にあまり関心がないという実情があるようだ。
というのも、財務省は年度間の国債発行の平準化等のため、翌年度に発行する予定の借換債の一部を前倒して発行しており、数兆円規模の赤字国債発行になったとしても前倒し発行分で吸収され、年間にマーケットで発行される国債規模に変化が生じずに対応することができる、と多くの市場関係者がみているためだ。
同時にこうした手法が債務膨張に警戒警報を発するマーケットの機能を低下させ、与党からの歳出膨張圧力を受け入れやすくしている面があることも否めない。
「103万円の壁」の引き上げやガソリン税減税をめぐる自民・公明・国民民主の3党協議の行方は、これからの政府債務の増大の可能性を秘めているということも、国民はしっかりと監視するべきだと考える。
大接戦とみられていた米大統領選が共和党のトランプ前大統領の大勝で終わり、マーケットの次の焦点は少数与党の下での日本の金融政策の行方に移るだろうと予測する。まずは週明け11日の首相指名選挙で比較第一党・自民党の総裁、石破茂首相が再び首相に指名されるかどうかだが、バラバラな野党の一本化が難しく、決選投票で石破氏が指名され、第2次石破茂内閣が発足する公算が大きい。
当面の関心は、11日に開催される予定の自民党と国民民主党の党首会談で、どのような合意が形成されるかだ。いわゆる「103万円の壁」を撤廃することで合意し、2024年度補正予算案に国民民主が賛成するのか、それともさらに多くの項目で合意するための協議を継続することで、25年度予算案にも国民民主が賛成すると表明するのかどうか。25年度予算案の成立にメドが立つなら、四面楚歌にも見える石破首相の前途に光が差すことにもなる。
その状況下で日銀の利上げ余地が広がるのかどうか、という問題は、多くの市場関係者が予想するほど単純な道筋ではないと指摘したい。というのも、トランプ政策の反射的効果によるドル高・円安と物価上昇圧力の高まり、綱渡りの政権運営を強いられる石破政権からの政治的なプレッシャーの強弱が織りなす「綾模様」が複雑であるためだ。以下に筆者の想定を列挙する。
<困難な野党一本化、11日に石破氏の首相指名の公算>
11日の首相指名選挙は、衆院選で自民と公明が過半数を割り込んだため、各党の多数派工作の展開次第では、立憲民主党の野田佳彦代表が首相に指名される可能性もゼロではない、という声が永田町関係者から出ていた瞬間もあった。
衆院の会派別勢力は、萩生田光一氏など無所属議員の6人が自民党の会派に入った後の段階で、自民党無所属の会197人、立憲民主党無所属149人、日本維新の会38人、国民民主党無所属クラブ28人、公明党24人、れいわ新選組9人、共産党8人、有志の会4人、参政党3人、日本保守党3人、無所属2人となっている。
だが、維新や国民は立民との党首会談などで決選投票での野田氏への投票に難色を示し、決選投票では石破氏が自公会派の票を合算してトップに立ち、首相に指名される公算が大きくなっている。
一部には、国民民主の玉木雄一郎代表を首相候補に担ぎ上げ、石破氏を首相から引きずり下ろすシナリオも画策されたようだが、石破氏に反感を強める自民党内の議員が野党とともに玉木氏に投票するという「工作」を現実に推し進める「令和の寝業師」が存在せず、石破氏が首相に指名される可能性が高まっている。
実際、自民党内の反石破コールの高まりが一部で予想されていた7日開催の自民党両院議員懇談会では、石破首相の即時退陣を求めたのは一人だけで、一部の国内メディアは石破首相の退陣論は広がりを見せていないとの見方を示していた。
<注目される自民・国民の合意内容、25年度予算案に成立のメド立つのか>
筆者は、当面の大きなポイントは11日の石破氏と玉木氏の自民・国民民主の党首会談で、どのような合意が形成され、具体的な政策実現のタイムスケジュールが示されるかだと指摘したい。
基礎控除と所得税控除の合算額である103万円の引き上げでは合意すると見らているが、国民民主の主張する178万円まで一気に引き上げるのか、それとも複数年次に分けて実施するのかという点や、今年分は年末調整で還付するという国民民主の提案が通るのかなどは、多くの国民にとって大きな関心の的になるだろう。
また、複数項目で合意した結果、24年度補正予算案に国民民主が賛成すると文書で明記するのかという点や、25年度予算編成の段階から国民民主が自公の政策協議に参加し、25年度予算案に賛成の意思を示すのかどうか、ということが大きな注目点になる。
もし、国民民主が25年度予算案に事実上、賛成すると解釈できる合意文書が交わされた場合、石破政権は25年度予算案と予算関連法案の成立する3月末ないし4月上旬まで存続が担保されることを意味すると筆者は考える。
短期的には、この部分が最も重要な政治上の合意になるため、11日の党首会談後の石破首相と玉木代表の発言には多くの関心が集まると予想される。
<自民・国民の政策協議のテーマ外となっている金融政策>
一方、このような少数与党・石破内閣の綱渡りのような政権運営の下で、日銀の金融政策が政治的な影響を受ける度合いが強くなるのか、弱くなるのか──という問題は、単純には解を導き出せない。
例えば、玉木氏が複数のインタビューで来年の春闘の結果がわかる3月末までは、日銀が利上げをするべきでないと発言したことを受け、少なくない市場関係者は3月末では利上げはできない、と判断したようだ。
だが、玉木氏が今、自民、公明と議論しつつある特定の政策をめぐる合意の形成と、それに見合った3党間の意思の確認という方式では、俎上に上った政策テーマ以外の分野の政策については互いに制約されないという前提がある。
仮に石破政権が日銀の利上げを容認したとしても、それが政策合意の範囲外であれば、玉木氏が約束違反と主張して石破内閣の不信任案に賛成することはない、ということだ。
ただ、日銀が利上げすることによって玉木氏の石破内閣への心理的な距離が遠くなり、疎遠になると石破氏が判断すれば、石破内閣の意見として利上げに関し、何らかのメッセージが伝達されることはあるのではないか。
<160円接近の円安なら、政府・与党と日銀はどのように判断するか>
その一方、トランプ氏の当選をきっかけにドル高・円安が進行し、ドル/円が160円に接近するような事態になれば、輸入物価の上昇を起点に消費者物価指数(CPI)の上昇圧力が高まり、世論が物価高に敏感に反応する展開も想定できる。
10月27日の衆院選で、自民・公明の与党が惨敗したのは「政治とカネ」の問題が大きく影響したとの声が多いが、反与党の底流には「物価高への反感があった」と指摘する選挙分析の専門家の指摘もある。
来年夏の参院選を前に、物価高への関心が高まると与党サイドが判断した場合、日銀に対して利上げによる物価抑制を求めるという衆院選前の石破首相の発言と正反対の要望を日銀に伝えるという可能性もゼロではない、と予想する。
<少数与党と日銀、化学反応の結果は未知数>
日銀は永田町からの声とは関係なく、展望リポート通りに物価や経済が進展すれば、大幅な実質マイナスとなっている政策金利の水準を調整する(すなわち利上げする)という姿勢に変わりないと繰り返すことになると予想する。
ただ、羽田孜内閣以来という少数与党の下では、いつ内閣不信任案が提起され、それが可決されても不思議ではない状況が続く。
少数与党の下での金融政策の先行きを展望することは、マーケットのBOJウォッチャーにとっても難易度の高い問題であると言えるだろう。
米大統領選で共和党のトランプ前大統領の当選が決まり、市場の注目は株価の振幅に集まっているように見えるが、東京市場の参加者の多くが関心を持っているドル/円の行方を決めるのは、10年米国債利回り(長期金利)の動向だ。6日のNY市場では一時、4.479%と7月以来の高水準に上昇。ドル/円を154円台のドル高・円安水準に押し上げた。
8月に米長期金利が急低下して以降、日本の銀行(邦銀)は大量に米国債を買い上げてきたが、足元での利回り急上昇でかなりの含み損を抱える展開となり、複数の市場筋は日本の銀行が米国債をロスカットすれば、節目の4.5%を突破して上昇に弾みがつく可能性があると指摘する。
また、7日(日本時間8日未明)の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が今後の利下げパスについてどのように発言するのか、その内容次第では米長期金利が上下に大きく振れる余地があるだけでなく、来年1月以降のトランプ新政権の下でのFRBのスタンスを探る意味でも大きな注目を集めている。
<トランプ氏当選で米長期金利の上昇に拍車、10年債で含み損抱える邦銀>
6日のNY市場では、トランプ氏が大統領に就任すれば、財政赤字拡大とインフレ高進につながるとの見方が台頭して米国債の利回りが各年限で上昇(価格は下落)。10年米国債は前日比15.3ベーシスポイント(bp)上昇の4.441%で大方の取引を終えた。
7日のアジア取引時間帯では、利益確定の買い戻しも出て10年米国債は4.42%台での取引時間が多くなった。次の節目は4.5%を突破するかどうかだが、短期的に注目されているのは日本の銀行勢の動向だという。
というのも8月2日に発表された7月米雇用統計は、非農業分野の雇用者数が、市場予想の前月比17万5000人を大幅に下回る11万4000人となり、10年米国債は3.9%台に急低下。その後、9月半ばにかけて3.6%台まで低下したところで、日本の銀行勢が大幅に買い越していた。
財務省の投資主体別の対外中長期債の売買動向によると、銀行は8月にネットで2兆5429億円の買い越しとなり、9月は同2兆2154億円の買い越しだった。
ところが、10月に入ると10年米国債の利回りは上昇を続け、10月21日には4.2%台を付けその後も上昇が止まらなかった。10月の投資主体別の動向はまだ発表になっていないものの、週次のデータを合算すると銀行を含めた日本勢は、9月29日から10月26日までの4週間にネットで1兆1887億円の売り越しとなった。
筆者は、上記のデータから類推して、日本の銀行勢は含み損を抱えたままの米国債を4兆円前後抱えているとみている。今後、10年米国債の価格が上昇(利回りは低下)すれば含み損は減少していくことになるが、今のところ米国債が値上がりしそうな材料は見当たらない。さらに損失が膨らむと日本の銀行勢が判断すれば、ロスカットに踏み切る可能性がかなりあるのではないか。そのケースでは、10年債の4.5%突破を後押しする動きになる。
<米長期金利が4.5%突破ならドル155円超の円安も、注目されるパウエル議長の発言>
市場の一部には、10年債が4.5%を突破すれば、いったんは5%台まで一気に利回りが駆け上がるとみる声があり、そのケースではドル/円が155円からさらに円安となって160円が視野に入ることもあるという見方が出ている。
そうなるかどうかを左右するのが、パウエル議長の会見での発言だ。足元のインフレ率低下や雇用統計の弱いデータを取り上げて利下げスタンスの維持を鮮明にすれば、10年債の利回り上昇に歯止めがかかるとの声もある。
他方、データ次第と言いながら足元の2024年7-9月期の国内総生産(GDP)伸び率が前期比・年率2.8%と高かったことなどに言及し、ターミナルレート(利下げの最終到達水準)が市場予想よりも高止まりしそうだと連想させるような発言をすれば、米長期金利の上昇が続くことになるだろう。
さらに米財政の拡張(赤字拡大の可能性が高まる)や大胆な金融緩和を志向するトランプ新政権のマクロ政策に対し、パウエル議長がどのような発言で対応するのかにもかなりの関心が集まっている。
<円安加速と日本の物価上昇圧力、日銀の情勢判断はどうなるのか>
この状況を日本から見れば、米長期金利の上昇加速はドル高・円安を招く可能性を高め、今年7月のような物価上昇圧力の高まりを日銀が意識することになるのかどうか──という点に市場の関心が集まることを意味する。
足元の市場では、12月の日銀利上げを10-11bp、来年1月まで見ると19bp程度織り込んでいる。少数与党に転落した石破茂首相が利上げに慎重な姿勢を維持しているのか、キャスティングボートを握る国民民主党の玉木雄一郎代表が複数のメディアに来年3月までは利上げするべきでないと発言していることが影響するのかどうか。米長期金利の動向は、日本政府と日銀の判断に大きな影響を与えかねない要素として浮上している。
米大統領選は共和党のトランプ前大統領が優勢なまま開票が進み、6日の東京市場では株高・ドル高・長期金利上昇という「トランプトレード」が活発化した。この後の欧州市場や米市場では一段と株高やドル高の動きが鮮明になる可能性があり、ドル/円は155円を突破する展開もあるだろう。
ただ、初期のトランプ勝利を織り込む動きが一巡した後は、トランプ氏が来年1月の大統領就任式以降にどのような政策から実現を図るのか、タイムスケジュールや具体的な中身をトランプ氏自身の発言から探る展開になると予想する。その際は、西側同盟国にも一律に10%の関税をかけるという政策が日本企業にどのような負担になるのかということも大きなポイントになり、それが日本株の上値を抑える可能性もある。
さらに中期的には、トランプ氏の政策が沈静化してきた米国内のインフレを再燃させ、米長期金利を押し上げて米株価の乱高下を招くというリスクを意識させることになると筆者は指摘したい。トランプ氏の政策展開によっては、世界経済が大きな波乱に巻き込まれる懸念が増大しそうだ。
<トランプ氏が勝利宣言>
日本時間の6日午後4時過ぎの米大統領選の開票結果によると、トランプ氏の獲得した選挙人は266人となり、過半数の270人に迫ってきた。ハリス副大統領は195人にとどまっている。まだ、勝敗が確定していないウィスコンシン州、アリゾナ州ではいずれもトランプ氏がリードしており、この2州での勝敗が確定した段階で、トランプ氏の大統領選当選が確実になる。
トランプ氏は日本時間6日夕、支持者を前に「今夜、歴史を作った」「米国でかつて見たこともなかった勝利」「これからが米国の黄金時代」と述べて、高らかに勝利宣言を行った。
<東京市場は株高・円安>
6日の東京市場では、トランプ氏優勢の情報を材料に日経平均株価が前日比1005円77銭(2.61%)高の3万9480円67銭と大幅に続伸。10年米国債利回り(長期金利)はアジア取引時間帯に一時、4.465%まで上昇した。ドル/円は154円台へと約3カ月ぶりのドル高・円安となった。
複数の市場関係者によると、欧州市場や米市場ではトランプ氏の当選を前提としたトランプ取引がアジア取引時間帯よりも活発化する可能性が高く、米長期金利が4.5%を突破してドル/円が155円台に乗せる展開が予想されるという。
<熱狂の後に来るトランプ政策の吟味>
ただ、トランプトレードの賞味期限は意外に短いのではないか、との声も市場の一部ではささやかれている。
というのもトランプ氏の打ち出している政策が来年1月の大統領就任式を経て政権が本格スタートして以降、どのような手順や日程で実行に移されるのか、不透明な点が多いためだ。
例えば、原則として対中国は60%、その他の国は一律に10%の関税をかけるとされている点についても、いつから実施するのかは全く不明なままだ。欧州や日本など西側の同盟国に対しても一律に10%の関税をかけるのか、それとも新たな条件を設定し、それを飲んだ国は除外するというようなトランプ氏の好むトレードが展開されるのかも今のところは不明だ。
法人や個人に対する減税は、通常は新年度(2025年10月-26年9月)からの実施となるが、それまでの間は何もしないのか、それともこれから決まる2024年12月20日で失効する暫定予算の後の予算措置で何らかの対応をするのかもわからない。
大統領令を発令すれば、移民関連の規制を強化することは可能だが、その内容次第では米国内の人手不足が急速に深刻化して経済データに大きな影響を与えることもありえる。
このため、市場は今後、トランプ氏の発言に注目し、その政策の具体的な内容や政策手順、プラスとマイナスの効果を見極めて織り込むプロセスがどこかの段階でスタートするだろう。
マーケットのこのような「手探り」のプロセスが始まると、しばらくは上下に振れやすい値動きになるかもしれない。
<対米輸出20兆円にかかる10%の関税、日本株にはマイナスに>
東京市場への影響も同じように展開されるだろう。株高と円安はもうしばらくは継続するとみられるが、当初の熱狂が冷めてくると、日本企業に対する関税10%の実施はどうなるのか、という点に注目が集まると予想する。
自動車やその関連産業の米国内生産は進んでいるものの、日本から米国への輸出額は年間で20兆円を超える。これに10%の関税をかけられると輸出数量の減少を伴って日本企業への影響はかなり深刻化する。
マーケットがこの点を織り込み始めると、日本株の上値はかなり抑え込まれるのではないか。
<インフレ再燃の懸念、進展すれば米国でトリプル安も>
トランプ氏の政策が中長期的にマイナスに働く経路は大きく分けて2つあると考える。1つは、輸入関税の引き上げと移民規制の強化、米連邦準備理事会(FRB)への利下げ圧力などを受けたインフレ圧力の再燃だ。
米長期金利の上昇が続けば、いずれ減税を好感した米株高の上値を抑えるだけでなく、大幅な下落要因になることも予想され、ドルが上昇から下落に転じれば「トリプル安」となって米国発で世界市場にショックを与えかねない事態を招くと予想する。
<60%の関税、中国経済が腰折れすれば世界的な需要不足に>
2つ目は60%の高関税実施が資産デフレに陥りかけている中国経済の低迷に拍車をかけ、それが世界の需要を下押しして世界的な需要不足を招きかねないというリスクだ。
実際、足元で起きているドイツ経済の低迷の原因の1つは、対中輸出の不振であり、中国比率の高い日本企業の決算内容が一部で振るわないのも中国経済の減速が一因とみられている。中国経済の失速が鮮明になった場合の負のインパクトは市場の想定を超える危険性もある。
日本時間の6日夕に勝利宣言したトランプ氏が、具体的に何をしようとするのか。その影響力はあまりにも大きく、詳細な発言内容が今後、最大のニュースとしてしばらく世界中から注目されることになる。