ヒルネボウ

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書評 『江戸小咄散歩』(旺文社文庫) 著者 興津要

2025-02-01 00:30:54 | 評論

   書評

   『江戸小咄散歩』(旺文社文庫)

   著者 興津要

「社会の分断」なんて言葉をジャーナリストらが頻用する。まるで先日までは社会が一つにまとまっていたみたいだ。本気かよ? 本気だとすれば世間知らずだね。

社会が一つにまとまっているように偽装するのは論理だ。非論理的な、意味ありげな語句を用いるのは「分断」の拡大だ。しかも、チョンチョン(“ ”)なんか付けてさ。騙す方が悪いに決まっているけど、でも、騙される方も共犯者みたいなもんだぜ。

  榎

下女、桜の馬場へゆき、榎へのぼる処を、番人が見付け、

「こりゃ、首をくくらせる事はならぬ」

といえば、下女、榎より飛び下り、

「どうぞ慈悲じゃから、くくらせてくんなさい」

 と、番人に、ぴったり抱きつく。番人、ぐにゃりとなり、

「そんなら、早くくくって帰りや」

(「桜の馬場」)

誰とも話が通じないんなら、もう諦めて、笑うしかない。

(終)


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