私のHFアンテナは、ヨドコウ物置2棟にアルミ板(印刷用の版=アルミ板)を敷き詰め『巨大な?カウンターポイズ』にしています。アンテナ自体は『モービルホイップ』で『短縮バーチカル』と見立てて運用しています。こんな小設備のアンテナでも、アルゼンチンと交信(7MHz帯のFT8)できたのですから、びっくりです。また、私の友人は『10W&ベランダモビホで8J1RL(南極)とQSOできたよ』と連絡をくれました。パワーがあるにこしたことはないのですが、小設備&ローパワーでも『タイミング次第』で遠方と交信できるのが楽しいですねぇ。
【写真:物置小屋にマグネット基台を置いただけのHFアンテナ】
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◆いろいろ与太話。
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アンテナチューナーの基本構造は『LC回路』です。
極論すれば、λ/4フルサイズロングワイヤーで給電部に、
200pF程度のコンデンサーを入れてやると、
Lを省略しても、だいたいSWR=1.0に近い同調が得られます。
しかし、水平系のANTで給電点地上高が低いため、
NVIS・ANTのように『打ち上げ角が高くなる』ので、
DXには向かないと判断し、CL-40(第一電波製)という、
80%短縮のモービルホイップを『短縮バーチカル』で使用しています。
このテの『接地型ANT』のキモは『RF-GND』が握っています。
当局のRF-GNDは、ヨドコウ物置2棟にアルミ板を敷き詰めた、
強化カウンターポイズを付加しました。
7MHz帯のANTの同調点を『7.074MHz』にしています。
理由は、FT8の海外向け周波数だからです。
この周波数では、VSWR=1:1.10あたりになっています。
※雨天の場合、若干同調点がズレます。
同調点の調整は、ANT直下でアナライザー測定で、
エレメントは、真鍮棒にACコードを割いた電線を足して、
同調点を探るべく、アナライザーでインピーダンス変化を確認します。
FT8で国内QSOをする場合は『7.041MHz』を使用します。
7.074MHzで国内QSOをするとオフバンド扱い(バンドプラン逸脱)で、
総通から厳重注意の電話が入ることもあります(他局が実際に総通から注意を受けた)。
7.074と7.041では、30kHzほど離れています。
7.074でSWRベタ落ちでも、7.041だとSWRが2.0あたりまで上がります。
伝送電力は約88%なので12%ほどの損失です。
※実際には、進行波と反射波が合成されて、ほぼ100%電波が放出されます。
(参考文献:CQ誌・2021年7月号・P48~P55)
目に見えない電波を『見える化』できる測定器がSWR計やアンテナアナライザーです。
しかし、SWRが1:2.0程度であれば『無視できる数値』です。
その証拠に、業務無線では『SWR=2.0以下は合格出荷』されます。
アマチュア無線家は、昔からSWRに対して『神経質すぎる』と感じます。
見えない電波が、安価で見える化できるものがSWR計に加えて、
SWRが2.0くらい上がると『保護回路』が働き、送信電力が自動的に減力されるため、
・アンテナ出力=送信電力ー反射波電力と、誤解(迷信)が世界ではびこっています。
SWRとは、要するに『インピーダンスが合っているか』です。
ダイポールアンテナを水平に張ったら、インピーダンスは70~75Ωほど。
この場合、SWR≒1:1.5くらいになります。
・75Ω÷50Ω≒1.5(カンタンでしょ)
・50Ω÷33Ω≒1.5(これも、カンタンでしょ)
SWR計だけだと、高い方にインピーダンスが寄っているのか、
低い方にインピーダンスが寄っているのか、わかりません。
正直なところ『どっちに振っているかなんて、どうでもいいこと』です。
大事なことは、どこに同調点があって、
そのインピーダンスが50Ωに近いのかを探ること、です。
かつては、インピーダンス計など、あまり市場に出回っていませんでした。
せいぜい、販売店が持っている程度でした。
私が使っているアンテナアナライザーは『クラニシ』というメーカー製で、
もう、廃業して、会社は存在しません。
懇意にしている販売店さんから、安価で譲ってもらいました。
今は、安価にデジタル式のアナライザーが通販でも買える時代ですが、
使いこなしているアマチュア局は、一握りではないでしょうか。
アンテナ出力をSWRだけで判断するのは『木を見て森を見ず』と考えます。
例えば、モービルに付けた伝送ラインの実例。
買ってきたままの基台、ケーブル(5m)、同軸コネクタ、変換コネクタで、
どのくらい給電部に電力が届いているのか測定したことがあります。
RIGは、IC-03N(5W出力)でした。(430MHz帯・モノバンドハンディ機)
給電部には終端電力計をつないだところ、5WのPWRが3Wまで落ちていました。
・基台のコネクタ:-0.5dB
・無線機側のコネクタ:-0.5dB
・変換コネクタ:-0.5dB
・同軸ロス:-0.8dB(5D-2V相当)
★損失合計:-2.3dB
損失合計が-2.3dBあると、給電部まで概ね『60%(40%減衰)』しか届きません。
ここに、5/8λ×2段の接地型ホイップを付けました。
利得は、4.5~5.0dBdです。
概ね、電力比3倍のゲインが得られる勘定ですので、
3W×3倍≒9Wくらいとして『まぁいいや』でしばらく使っていました。
その後、変換コネクタを省き、
同軸を最短に切り詰め90%(損失10%)まで改善しました。
損失は0.5W程度に抑えられ、4.5W×3倍=13.5Wが実効輻射電力とみなし、
ハンディモービルの割に、よく飛ぶとローカルからレポートをもらったり、
アイボールの際に見学させてほしいというオファーがたくさんありました。
現在、多くのモービル局が使用するVUHF帯のANTの多くが、
ノンラジアルタイプで、車のボディでRF-GNDをとることへの神経を使うことがなく、
さらに、ノンラジアルならではの『電流の腹の地上高が高くなる』のと、
打ち上げ角が低いため、ゲインが低いλ/2のホイップでも、
そこそこ飛ぶようになりました。
★飛ぶアンテナの条件
1、打ち上げ角が低い
2、ゲインがある
よく『ゲインと打ち上げ角、どちらを優先?』が議論されます。
私の周囲のDXerは、全員が『打ち上げ角を下げること!』といいます。
八木宇田アンテナをパラで使う場合『ワイドスタック幅』にして、
開口面を広げて、なるべく3dB(電力比:×約2倍)が強調されますが、
実際には、スタックキットで発生するロスを差し引くと、
やはり、予想通り『2dB程度のゲインアップ』しか見られません。
ならば『打ち上げ角を低くできれば御の字』で、
スタックを組む方がいいでしょう。
SWRが飛びにどの程度影響があるのか・・・?とよく聞かれますが、
実際のところ、SWR:3.0以内であれば『-1dB程度なので、わずかですよ』です。
販売店が、ベタ落ちにこだわるのは『商品価値(付加価値)を高めるため』です。
また、SWRが3.0程度であれば、
HFの場合、マニュアル式アンテナカップラー(チューナー)で、
十分に整合できますし、使用には全く支障がありません。
私が自宅で使用する7MHz帯のモービルホイップは80%短縮(全長2m強)ですが、
このアンテナにFT8ですが30~50W出力で、
アフリカや南米(チリ、アルゼンチンなど)とも交信でき、
いちおう、6大陸州とのQSOができました。(全部Cfm済み)
モービルホイップは、一見頼りない印象です。
これをみたら、移動運用でフルサイズ・ダイポールを張れば、
もっとDXができるんじゃないか・・・と思いますが、
水平ダイポールを展開する際、移動では『せいぜいλ/8高の給電部』でしょう。
この場合、打ち上げ角が高くなるので『NVIS』同様に『国内、近隣諸国』には有利です。
DX仲間でトラックの重量運搬業者がいますが、
平ボデイの荷台に張った水平系ワイヤーだと国内ばっかりだったのが、
短縮系モービルホイップ(マグネット基台で接地)を使ってみたら、
休憩時間にFT8で、DXが強力に入ってきたが、
水平系ワイヤーだと『ぜんぜんだめ』と言っていました。
私たちが、FT8をやる意味は『DXが身近になり、どんどんDXが埋まっていくこと』です。
FT8の20Wは、SSBの25kWに相当、CWの2kWに相当すると言われます。
※閾値(しきい値)での相対感度差(CQ誌・2020年10月号別冊『FT8活用マニュアル』P4~P5)
また、FT8は単に『感度がいい』とか『交信速度が速い(90秒で完了)』だけではありません。
さらに、FT8は『カンタン』『物足りない』とか耳にします。
確かに、海外との交信であっても語学の壁もCWスキルも不要です。
やってみるとわかるのですが、一見カンタンそうに見えても、
一定の『壁』が必ずやってきます。
そこをクリアするために、上級資格を取得して出力を増力したり、
アンテナを改善・改良したり、デコード効率を上げるための努力をします。
私は、住居(近隣の住宅事情)の関係で『そこまでの投資』は難しいのですが、
事情が許すならば、アンテナへの投資は『無線機購入費の3~5倍』はかけるべきでしょう。
20万円の無線機ならば、60万円から100万円をアンテナ設備にかけているのがDXer。
15万円の無線機ならば、45万円から75万円をアンテナ設備にかける価値があります。
せめて、2倍でもアンテナ設備に投資をすれば『見える景色がガラッと変わる』のです。
幸い、FT8の場合は『工夫次第』で『何とかなる』ものです。
しかし、DXerが普通に話す『ロングパス』や『バックスキャッター』などは、
モービルホイップやダイポールでは、なかなか機会に恵まれないのも実情です。
アマチュア無線の醍醐味は『世界各国の局と交信すること』です。
▲2021年9月21日、JA向けにCQを出していたアルゼンチンと交信。
ワールドワイドのコンディションを視覚化した『PSK Reporter』、
従来の紙のQSLカードに代わる『eQSL』や、
Club Log、LoTW、QRZ.comへのアップロードで、
各種、電子化された国際アワードの取得など、
DXingの『主力モード』になったFT8は、
サイクルボトム期の救世主になったと言っても過言ではないでしょう。
LoTWやClub LogにアップロードされたDX-QSOのモードを見れば一目瞭然です。
1、FT8:60%
2、CW:20%
3、SSB:15%
4、その他:5%
アンテナの話題からFT8まで、少し駆け足でお話しましたが、
まずは『食わず嫌い』を、一旦引っ込めて、
今のトレンドは一体どうなっているのか?を、
少し俯瞰で、見つめてみてはいかがでしょうか。
ひとつに、こだわり過ぎると『思考停止』になってしまいます。
せっかく手にした、アマチュア無線の資格免許。
有効に活用してみませんか。
ありがとうございました。
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※記事は、表現と言論の自由に則ったエッセイで、
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※時事問題については、筆者個人の考えです。
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