イスラエル、パレスチナ人集合住宅の解体強行 国際社会から非難
【7月23日 AFP】エルサレム(Jerusalem)の南、分離壁に近いスル・バヘール(Sur Baher)地区で
22日、イスラエル当局が違法建築だとしてパレスチナ人の集合住宅を解体した。パレスチナ指導部や
国際社会から、非難の声が上がっている。
AFP特派員によると、夜明け前、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)とエルサレムに
またがって位置するスル・バヘールにイスラエルの警官と兵士数百人が到着。ヨルダン川西岸を
隔てているイスラエルの分離壁に近い地区一帯の建物を封鎖した。
計10棟の建物に解体命令が出されていたが、その大半はまだ建設中だった。この日はブルドーザーが
少なくとも3棟を解体した。
住宅内で抵抗していた住民や活動家らは引きずり出された。ある男性は「俺はここで死にたい」と
叫んでいた。
解体された建物の一つの所有者、アクラム・ザワヒラ(Akram Zawahra)氏は「やつらは私たちの夢、
そして私たちの子どもたちの夢を破壊している」「けれど、私たちの意志は破壊できない」と語った。
国連(UN)や欧州連合(EU)はイスラエルによる解体を非難し、即時停止するよう要求した。
EUは「この政策は2国家共存による解決の実現性を損ねる」と批判した。
■「治安上のリスク」
イスラエル当局は、解体した複数のビルが建っていた場所は分離壁に近すぎ、治安上のリスクが
あったと説明する。
国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、イスラエルはスル・バヘールの分離壁の周辺
100~300メートルに緩衝地帯を設定している。
OCHAはまた、全10棟の解体により、3世帯17人が住む場所を失う他、350人に影響が出るとしている。
集合住宅の完成後は計70戸が入居する予定だったという。
パレスチナ側は、イスラエル当局が長年に及ぶユダヤ人入植地の拡大と、そこに連結する道路拡張の
一環としてパレスチナ人を追放する口実に治安を用いているとして非難している。
イスラエル当局がスル・バヘールの集合住宅を解体する方針を通告したのは、約30日前の6月18日。
周辺の住民らは近い将来、さらに100棟が同様の状況に置かれる恐れがあると懸念している。
イスラエル当局が支配する地区で、パレスチナ人が建設許可を取得することは極めて難しい。
パレスチナ人や人権活動家らは、そのために住宅不足が起きていると述べている。
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のスル・バヘール地区で、建設途中でイスラエル当局に解体されるパレスチナ人の集合住宅(2019年7月22日撮影)
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