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<台湾情報18-20>中国が裏で画策か? 狙われる台湾半導体企業 世界の半導体生産の3分の2を担う台湾は機密情報をめぐる激戦地だ

2018-07-05 21:49:15 | 台湾 中台・国際関係

中国が裏で画策か? 狙われる台湾半導体企業

世界の半導体生産の3分の2を担う台湾は機密情報をめぐる激戦地だ

 

2018 年 7 月 3 日 09:51 JST   THE WALL STREET JOURNAL

 

 【新竹市(台湾)】半導体受託製造の世界最大手、 台湾積体電路製造 (TSMC)のエンジニアは

2016年の終わりごろ、1本の電話を受けた。電話の相手は中国の競合他社で、携帯電話やゲーム機向けの

半導体に携わるチーフエンジニアの仕事に関心があるかという誘いだった。

 

 そのオファーは注目に値するものだ。台湾の裁判所によると、同エンジニアにはその種の半導体に関する

専門知識は持ち合わせていなかったからだ。


 そのエンジニアが持っていたのは情報へのアクセスだ。同裁判所によれば、エンジニアはTSMCの

大量の企業秘密を競合の上海華力微電子有限公司に渡すため、2週間にわたって違法なダウンロード、

印刷、コピーを行った。TSMCの調査が入り、そのエンジニアの転職は数日前に阻止されたという。

裁判所は昨年11月、企業秘密窃盗の罪でエンジニアに執行猶予付き禁錮18カ月の判決を下した。


 華力微電子からのコメントは得られていない。エンジニアの弁護士はコメントを控えた。

台湾北西部・桃園市にあるマイクロンの施設  

 世界の半導体生産の3分の2を担う台湾は、世界経済でますます重要な役割を果たすテクノロジーを

めぐって裏で繰り広げられる激戦の地だ。


 台湾の当局者や企業幹部は、アップルやエヌビディア、クアルコムといった米大手企業の半導体を

製造している台湾メーカーを中国が意図的に標的にしていると話す。中国の狙いは、台湾に圧力を

かけると共に、半導体の海外依存低減という戦略目標を追求することだという。


 公式統計によると、2013年には8件だった技術の違法持ち出しは17年には21件に上った。

台湾当局や法律家は、最終的な受益者とみられる中国企業をほとんど提訴してこなかったと話す。

政治的な理由のほか、本土では裁判所の判決を執行できないとの考えからだ。

 中国メーカーは世界に流通するスマートフォンやコンピューターの多くを製造しているが、それらを

動かすのに必要な半導体の大半は輸入している。昨年の中国の半導体輸入額は2600億ドルと、

石油輸入額を60%も上回った。中国指導部は2025年までに、国内で生産するスマホに使う半導体の

現地調達率を40%に引き上げたい意向。これは現行水準の4倍を上回る。


 中国政府は自国の半導体産業の発展に1500億ドルを投じている。

 

 また、台湾の当局者によると、中国側は厚遇で台湾の企業やエンジニアを引き付けようとしており、

時には5倍の給与を提示している。採用する際には設計の青写真を持ってくるよう促すこともあるという。

 

 台湾の法務部調査局の職員は「中国の盗みはますます深刻になっている」としたうえで、

「私たちは結局のところ同じ人種であり、地理的にも近く簡単にコミュニケーションできる。

そして、私たちは専門技術を持っている」と述べた。


 中国外務省は、自国の企業や組織が知的財産を盗んでいるとの疑惑を長らく否定してきた。


 同省報道官は「米国に対してはっきりさせる必要がある。中国の革新は13億の人民の知恵と汗によって

得たものであり、盗んだのでも他人から奪ったのでもない」と述べた。


 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が台湾で最近あった技術関連の提訴10件を調べたところ、

検察側はそのうち9件について、技術が中国企業に渡ったかその意図があったと主張している。


 中国の技術当局は公式声明で、半導体を含むハイテク部門で台湾と中国が協力すべきだと述べた。

台湾での裁判に関するコメント要請には返答しなかった。

 

 先月開催された北京国際科学技術産業博覧会でも中国の半導体にかける野心は浮き彫りに 

 メモリーチップ製造で米最大手の マイクロン・テクノロジー の台湾子会社が絡んだケースもある。

16年春、同子会社のエンジニアが会社のパソコンを開き、台湾当局者によると

「コンピューター利用歴を消去」とグーグル検索をかけた。


 エンジニアは検索でヒットしたファイル消去プログラムを使い、パソコンを会社に返却する前に900を

超えるファイルの痕跡を消去しようとした。


 このエンジニアが競合する台湾の 聯華電子 (UMC)に移籍して10カ月後、当局はマイクロン製

メモリーチップの生産・設計の秘密が詳細に書かれた文書の証拠を発見したという。


 昨年8月、同エンジニアらはマイクロンの企業秘密を中国で違法利用するために盗んだとして台湾で

提訴された。検察側は、同エンジニアが新たな雇用主にデータを引き渡したと主張している。

引き渡されたデータは中国半導体メーカーの福建省晋華集成電路有限公司の設計に利用された。

晋華は現在、半導体の自社バージョンを大量生産しようと計画している。


 検察によると、エンジニアは一部の罪を認めている。同エンジニアには接触できず、担当の弁護士は

コメントを控えた。UMCからのコメントも得られていない。マイクロンはカリフォルニア州での別の訴訟で、

自社が数十年にわたる投資で蓄積してきた知識を近道して手に入れる計画を、晋華が裏で操っていたと

主張している。

 

 晋華はコメントを求める複数のメッセージに応答しなかった。声明で罪を否定し、マイクロンを逆提訴。

自社に対する非難は中国企業の進歩を阻止するための「国際寡占企業群」による動きの一環だと

主張している。

 

 別のケースでは、台湾のメモリーチップ大手、南亜科技( ナンヤ・テクノロジー )の元従業員が、

同社に提供されたオンライン講座の受講中にDRAM技術を盗んだとして検察当局に提訴された。

検察によると、この元従業員はスマホを使ってナンヤの企業秘密を撮影し、それを利用して中国国有の

半導体メーカー、紫光集団の関係企業に求職した。紫光集団は電子メールで、その企業はこの元従業員を

採用しておらず、写真や企業秘密についても「関知していない」と述べた。


 中国政府が半導体メーカーの企業秘密を追い求めているのは、台湾統一を目指す長年の目標の一環と

みられている。直近では2月に発表した文書で、台湾の企業や高い教育を受けた人材を誘致するための

インセンティブを発表した。


 台湾経済を支える半導体はサウジアラビア経済にとっての石油に似た存在だ。半導体は台湾の

域内総生産(GDP)の20%近くを担い、昨年の輸出額は920億米ドルと、輸出品目の中で格段に

大きかった。


 法律事務所ドウェイン・モリス&セルバムの台湾拠点の弁護士は「中国は追いつこうと必死だ。

いずれ台湾経済にとって非常に深刻な脅威になる」と述べた。


 
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