イラン最高指導者、デモは「敵」のせいと非難 米は国連会合要請へ
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【1月3日 AFP】イランの最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師は2日、同国各地でこれまでに21人が死亡した反政府デモの
責任は「敵たち」にあると非難した。一方、デモへの支持を表明している米国はイランに対する圧力をさらに強め、国連(UN)での
緊急会合開催を要請する方針を示した。
ハメネイ師は国営テレビで放送された演説で、先月28日に始まった抗議行動について沈黙を破り、「敵たちが団結し、あらゆる手段、
金、兵器、政策、保安機関を用いてイランに問題を生み出そうとしている」「敵は常に、イランに侵入し攻撃する機会と隙を狙って
いる」と非難した。
今回の反政府デモや、同デモを支持する米国の姿勢については、2009年に行われた大規模な抗議運動を支持した改革派からも批判
の声が上がっている。
米国のニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)国連大使は、イラン反政府デモの問題について国連安全保障理事会(UN Security Council)
と国連人権理事会(UN Human Rights Council)での緊急会合の開催を求めていくと言明。
さらに、抗議行動がイランの「敵」によって扇動されたというハメネイ師の主張について、「完全なたわ言」だとはね付けた。
イラン・テヘラン大学で催涙ガスが立ち込める中、抗議行動(2017年12月30日撮影)
物価高騰に抗議するイラン第2の都市マシュハドのデモでは52人が逮捕された(28日)
イラン反政府デモ 人々は何に抗議しているのか:BBC
テヘラン金曜礼拝、「イランの最近の暴動は、アメリカとその同盟国によって導かれたものだ」
2018年01月05日19時37分 ParsToday(イラン)
5日に行われたテヘラン金曜礼拝で、ハータミー師が説教を行い、この数日の間にイランで起こった出来事は、アメリカと
その同盟国によって導かれたものだと語りました。
この数日、イランの一部の都市で、人々が集会を開き、スローガンを叫び、金融機関の預金状況の不透明さや物価高、政府の
管理能力の弱さに抗議しました。この中で、外国の支援を受けた暴徒らが集会を暴動に発展させました。
アメリカ、シオニスト政権イスラエル、サウジアラビアの関係者や外国のメディアは、この集会を悪用し、それを暴動に導こうと
しました。
これに対しイラン国民は、4日水曜から、各地で大規模な行進を行い、公共の財産の破壊における暴徒や敵の新たな陰謀に対する
怒りや嫌悪を示しました。
IRIB国際放送記者によりますと、ハータミー師は、「アメリカとその同盟国は、シリアやイラクなどの地域での度重なる敗北を
受け、抵抗戦線の先頭に立つイランにダメージを与える機会を狙っていた」と語りました。
また、「アメリカとその同盟国は、暴徒を支持し、イランにダメージを与えられると考えていたが、イランの賢明な国民は、
これまで同様、彼らの新たな陰謀を失敗させた」としました。
さらに、アメリカ、シオニスト政権、サウジアラビアが、この数日、互いに競い合って暴徒を支援したとし、
「アメリカは計画者であり、サウジアラビアは、暴動の資金面での支援者だった」と述べました。
「トランプはイランに戦争を吹っかけている」── イラン反政府デモを煽るトランプをマクロンが非難
U.S., Israel and Saudi Arabia Leading World to War with Iran, France Says
2018年1月5日(金)16時10分 Newsweek
イスラム体制の頂点、ハメネイ師をも批判するイランでは異例の反政府デモ(写真は昨年1月30日、テヘラン) REUTERS
<アメリカはイスラエル、サウジアラビアと共謀して仇敵イランのイスラム体制を倒そうとしていると、仏大統領>
アメリカとイスラエル、サウジアラビアは、年末から一週間にわたって異例の反政府デモが続いたイランに戦争をたきつけている──
フランスのマクロン大統領は1月4日、そう非難した。
イランの反政府デモは、ロウハニ大統領の緊縮政策に反発した市民が昨年末の28日に行った抗議行動から始まり、一部では最高指導者
ハメネイ師を頂点とするイスラム体制そのものを批判する異例の動きとして全土に広まった。一部ではデモ隊と治安部隊との衝突が
起こり、これまでに20人以上の死者が出ている。
反政府デモ側を繰り返し称賛してきたアメリカと、同じくイランを敵視するイスラエル、サウジアラビアの3カ国が、最近ますます
イランを孤立化させ、弱体化させようとする「敵視政策」を進めていると批判。イランとの対話を呼び掛けた。
ロイターによると、マクロンは「フランスの同盟国でもある3カ国がイランに対して取っている外交姿勢は、戦争につながる姿勢だ」と、
記者団に語った。さらに「それも、これは意図的な戦略だ」とも語った。
一年前にアメリカの大統領に就任したドナルド・トランプは、オバマ前大統領の対イラン融和政策を反転させ、イランに対して敵的な
外交姿勢に転換した。
トランプは、2015年のオバマ政権時代にアメリカなど6カ国が締結したイランとの核合意(フランスも締結国の1つ)を「
最悪のディール」と非難してきた。さらに中東地域でイランがテロを支援している疑いがあるとして、イランへの制裁を再開するか
どうか米議会の判断を求めた。
イランの反政府デモについてトランプは、ツイッターを使ってイラン政府を批判し、「腐敗した政府を自分たちの手に奪回」しようと
する市民への支持を表明した。トランプはイランの現体制(シーア派のイスラム革命によって79年に政権樹立)の転覆を狙う
反政府勢力に「強い支持」を表明した。しかし現地の反政府デモの中では、このような強硬な意見は少数派でしかない。
トランプのツイートはすぐに、イランへの内政干渉だとツイッター上で批判された。
しかしイランへの攻撃的な姿勢は、オバマ政権が主導した核合意に強く反発するイスラエルからは歓迎されている。
イランはイスラエルを敵視するレバノンやパレスチナの武装グループを長年、支援している。またシリアでは、イランの支援を受けた
武装勢力が反政府勢力やジハーディストを圧倒した。
イランに対抗する上でイスラエルは、サウジアラビアの協力も求めている。保守的なスンニ派のサウジアラビアは、公式にはイスラエル
を国家として認めていない。しかし共に中東地域でのアメリカの同盟国である両国が、慎重に関係改善を進めているという報道が
出始めている。
4日の発言でマクロンは、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの行動は、ひそかに「悪の枢軸」を再現させるものだ、とも語った。
「悪の枢軸」は、ジョージ・W・ブッシュ元米大統領が2002年にイランとイラク、シリアを指して呼んだ言葉。
トランプは先月発表した政権初の安全保障戦略で「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を打ち出し、核兵器の開発を続ける
北朝鮮とイランを「ならず者国家」として名指ししている。
米国務省は4日付けの声明で、「デモ隊に暴力をふるい、検閲を行い、イラン国民から盗みを働いた責任者が大勢いる」とイラン当局を
批判した。一方、イランのモンタゼリー検事総長は、CIA(米中央情報局)がイスラエル、サウジアラビアと共にデモを組織した、
と国営放送に対して語った。CIAはコメントを拒否している。
イランでは、反政府デモに対抗する政府支持のデモが全国で行われている他、イスラム革命防衛隊が治安維持のために動員され、
政府は反政府デモの終結を宣言している。しかし事態は収束したどころか、始まったばかりだろう。