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英テロ事件、イスラム国の戦略シフト浮き彫り

2017-05-25 13:05:49 | テロ

英テロ事件、イスラム国の戦略シフト浮き彫り

2017 年 5 月 25 日 10:29 JST   THE WALL STREET JOURNAL

 過激組織「イスラム国(IS)」は、シリアとイラクで占領地を急速に失うなかで、英マンチェスターでのテロ攻撃実行犯の

ように「ホームグロウン(自国育ち)」のテロリストに一段と依存している。一方で、暴力を引き起こす目的で海外に送り込

むIS戦闘員も増やしてもいる。西側や中東の治安当局者が明らかにした。


 22日夜、マンチェスターのコンサート会場の外で自爆テロが発生し、22人が死亡したが、テロ対策当局者たちがISに

関して集める断片的証拠が最近増えていた。それは、ISが自らのリソース(戦闘員や資金など)を配置し直していること

を示す証拠だ。


 イラクでは、イラク政府軍によってISの最後の拠点である北部都市モスルの大半の地区からIS戦闘員を駆逐し、隣国

シリアでもISは占領地放棄が加速している。


 イラクにいるクルド人勢力の一派であるクルド愛国同盟(PUK)のテロ対策当局者は、「ISが陣地を失うにつれて、そ

のメンバーが(欧州に)戻りつつある」と述べた。同当局者は23日オーストリアで述べたもので、イラク北部の最新軍事

情勢を西側当局者に報告するため同国に滞在している。


 同当局者は「欧州ではテロ攻撃が増えるだろう」と予想した。


 ラッド英内相は、マンチェスター自爆テロ犯は22歳のサルマン・アベディという男だったと特定し、同容疑者はISが活

発に活動している北アフリカのリビアに渡航した経歴があると述べた。同容疑者の妹はウォール・ストリート・ジャーナル

(WSJ)に対し、同容疑者はイングランドで生まれ育ったと語った。つまり「ホームグロウン」だ。


 アベディ容疑者が海外に渡航した際にISと接触したかどうか明らかではない。ISはマンチェスター自爆テロで犯行声

明を出した。


 ISは最近、欧州で活動するのが一層困難になっており、そんななかで今回のテロ事件が発生した。WSJがインタ

ビューしたIS脱退者やテロ対策当局者、その他の専門家によれば、欧州人であれシリア人であれ戦闘員の中には、戦

闘後に姿を消した者もおり、海外に秘匿してある現金を引き出して生活しているという。


 ある欧州治安当局者は「彼らは消えたのではない。地下に潜っただけだ」と語った。


 英政府に助言しているあるテロ対策コンサルタントは、英国のジハーディスト(イスラム聖戦主義者)たちが自国(英

国)に戻っている意外な動きを銀行が察知したと述べた。彼らジハーディストは偽造パスポートを使っているが、現金の

引き出し状況を見ると、彼らはマレーシア、イタリア、ダブリン(アイルランド)に渡航したあと、英国に舞い戻っているとい

う。


 ある欧州テロ対策当局者によれば、一部のシリア人IS工作員はドイツに送り込まれた。大勢の難民に紛れるためだ。

欧州での資金移動のため、彼らはプリペイドのトラベルカードを使っているという。


 これらのパターンは、工作員たちが欧州に戻った時に察知されるのを避けるため、さまざまな経路を使うようISが指示

していることをうかがわせる、と前出のコンサルタントは言う。西側諸国出身のISメンバーは、トルコ経由で自国に戻っ

た時に拘束される事例が多い。


 別の欧州テロ対策当局者によれば、ISは自分たちの拠点のない国にメンバーを居住させられるか実験しているとい

う。IS戦闘員たちはWSJに対し、欧州では治安強化によってISのネットワークが解体されたため、中東周辺のIS支配

地以外の地域で攻撃を増やすだろうと述べている。


 同テロ対策当局者によると、最近数カ月間でIS戦闘員の入国が確認されたのはスーダン、モロッコ、セネガルだ。西

側テロ対策当局者、IS離脱者、シリア活動家によると、ISはまた、中東人、とりわけシリア人のメンバーを送り込んでい

る。大半の欧州人戦闘員が今や西側秘密情報機関によって知られているからだという。


 ドイツで治安当局が懸念を強めているのは、過去2年間にドイツに入った120万人の亡命申請者のなかに潜在的なテ

ロリストが紛れている可能性だ。


 昨年ドイツで発生したイスラム主義者によるテロ攻撃5件のうち、3件はアフガニスタン、シリア、チュニジアから最近到

着した亡命申請者による犯行だった。


 複数の米テロ対策当局者は最近、トルコ南部やイラクの名の知れぬ地方でATM(現金自動受払機)から現金が引き出

される件数が増えていると述べた。これはIS戦闘員が在来型の銀行システムを通じて資金を移動しようとしていること

をうかがわせるという。しかし同当局者は、テロ対策パートナーの監視や協力により、ATMを通じた資金フローの遮断に

乗り出している。


 こうした取り締まり強化を受けて、ISは現金運搬人やハワラと呼ばれる送金システムにますます依存するようになっ

た。ハワラは中東で一般的な送金システムで、ウェスタン・ユニオンに似ているが、送金記録を残すことはほとんどない。


 ISはまた現金運搬人を派遣している。クーリエは若い女性である場合が多く、IS占領地外、例えばスーダンやマレー

シア、ドバイ首長国などで現金を隠しておく役割を担う。スーダンとドバイでは最近、これらクーリエの一部が逮捕された

という。