【社説】ウイグル族への弾圧、世界は注視すべし
中国ではウイグル族の人々が次々に姿を消している。中国当局はこの2年間に、国際的にはほとんど注目される
ことなく、同国北西部に住む何十万人もの少数派イスラム教徒を拘束してきた。家族に残されるのは、
どこに連れて行かれたのか、なぜターゲットにされたのかという疑問だけだ。
この問題を研究する専門家アドリアン・ツェンツ氏は、各地に設置されている収容所に何十万人もの人々が収容されて
いる可能性があると指摘するが、中国当局はこうした施設の存在を否定している。
だが今、徐々に情報が漏れ伝わっている。収容所から解放された少数の人々は海外に逃亡し、
虐待の状況を語っている。
看守らは、収容者に再教育を施し、イスラム信仰の放棄と、共産党の信奉を迫っている。反抗する者は虐待されたり、
独房に入れられたりしている。
拘束された人々の多くは、国外に出たことのある者や、親族が国外にいる者だ。無差別に拘束されているように
みえる人もいる。数週間で解放されることもあるが、無期限に拘束されている人もいる。
こうした気まぐれな手法による拘束が恐怖を増幅させている。著名なウイグル族の民族学者ラハイル・ダウット氏は、
昨年12月にウルムチから北京に向かう途中で姿を消し、その後消息不明となっている。同氏は、忍耐が必要と説き、
政治にはかかわっていなかった。
こうした強硬手段は、中国北西部の新疆ウイグル自治区に対する広範な締め付け策の一環である。
新疆ウイグル地区では、ウイグル族とそれより少数派のカザフ族が人口の過半数を占めている。昨年には、同地区の
治安関係予算はほぼ倍増され、都市部に配備される警察官が3万人増員された。
中国治安当局はまた、公共の場に顔認証カメラを設置している。住民は自家用車に追跡装置を装備し、
携帯電話にはモニタリング・ソフトウエアを搭載することが義務付けられている。強制的な「健康診断」で採取された
血液サンプルを基に、同地区全体を網羅するDNAデータベースの構築が進んでいる。
当局は、イスラム原理主義を撲滅しようとしていると主張する。過激派「イスラム国(IS)」や国際テロ組織
アルカイダに感化されたグループによる小規模なテロ攻撃が何件か起きているようだ。またシリア政府は、
ISとともに5000人のウイグル族が同国の内戦で戦っていたと主張する。
しかし、ウイグル族は総じて、穏健な形態のイスラム教を信仰しており、長年、過激化には抵抗してきた。
これが変わりつつあるとすれば、それは、イスラム信仰のどんな表現をも処罰するという中国政府の方針が主因だ。
例えば当局は近年、ウイグル族がラマダン(断食月)に飲食を絶ち、あごひげをたくわえ、自分の子にイスラム式の
名前を付けることを禁止した。また、宗教関連の文書などがないかどうかウイグル族の自宅を捜索し、
多くのモスク(イスラム寺院)が取り壊された。
フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員(共和)は10日、このような弾圧について本紙に寄稿したばかりで、
責任ある当局者に制裁を科すよう米政府に求めている幾人かの議員の1人だ。
またマイク・ペンス副大統領は中国によるイスラム教徒の扱い方を糾弾した。
さらに10日、中国による人権弾圧が国際規約に違反しているとする証拠を国連の人種差別撤廃委員会が検証した。
ウイグル族の窮状には大きな意味がある。中国の最高指導者・習近平氏は毛沢東以降みられなかったような
プロバガンダ戦術、監視、拘束といった手段を駆使している。中国の警察は、まず新疆(ウイグル自治区)で
新技術や監視技術を先駆的に導入し、その後、こうした技術を全国的に展開しつつある。米国は中国政府との間で
多くの重要な争点を抱えているが、組織的なウイグル族弾圧は、習政権の本質をあらわにしている。