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台湾情報⑱ ◎蔡英文が米紙に語った「南シナ海問題で中国と共闘せず」 ◎民進党関係者らの香港入境を拒否

2016-08-31 16:29:25 | 台湾 中台・国際関係

台湾・蔡英文が米紙に語った「南シナ海問題で中国と共闘せず」

2016年7月27日 foresight

台湾の蔡英文総統が『ワシントン・ポスト(WP)』紙のインタビューに応じた。5月の就任後、内外メディアを問わず、初めてのインタビューである。

 やはりと言うべきか、最初に選んだのは米国で、その相手はWPだった。チョイスは結局のところ、『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』か

WPしか なかっただろう。蔡英文はあまりインタビューを積極的に受ける方ではない。選挙前には、米誌『タイム』のインタビューを受け

てその表紙(アジア版)を飾っ た。次は、いつかは分からないが、台湾のメディアであるような気がする。その次は日本のメディアではな

いだろうか。日米のメディアを連続でインタビュー相 手に選べば、結局のところ、蔡英文は「親米親日(反中)」ではないかという中国側

の疑念を裏打ちする形になる。台湾でも自国メディアの軽視という批判も招 くだろう。だから台湾メディアを間にはさみ、

次に日本メディア、という順番になるのではないかと推測している。

 

台湾の民意

 さて、インタビューだが、中台関係や南シナ海問題などについてこれまでの公式発言を超えて踏み込んで語っている部分が少なくな

く、想像以上に読み 応えがあった。形式的なものを好まない蔡英文の性格からして、インタビューに応じる以上は、しっかりとした中身

を伴ったものにする、という考えがあるのだ ろう。その点は、とにかく中身があってもなくても表に出て語ろうとすることに重点を置いた

馬英九前総統、陳水扁前々総統のメディア戦略とは趣を異にしてい る。

 蔡英文インタビューの要点は2つだった。中台関係と南シナ海だ。


 中台関係における「92年コンセンサス」(中台双方が1つの中国を認めるという前提のもとにそれぞれの立場の違いは棚上げしなが

ら交流を行うという、1992年に交わされた中台間の了解事項)の取り扱いと、もう1つは南シナ海問題での立場だった。

以下、WPの報道もあるが、台湾総統府の公式ホームページによる応答全文に依拠して読み解いていきたい。

 インタビューでは、中国が台湾に「92年コンセンサス」の受け入れを迫っていることについて、蔡英文は、「台湾は非常に民主的な場

所であり、民意 の方向性が非常に重要となっている。(一方的に)期限を設け、台湾政府に民意に反した形で相手の条件を受け入れ

ることの可能性は大きくはない。彼ら(中 国)にもそのような認識はあると信じている」と回答し、台湾の民意を尊重して、強引に「92年

コンセンサス」の受け入れを強要しないように中国に求めた。 期限を設けるというのは、例えば今後の重要公開談話が行われる10月

10日の台湾の建国記念日(双十節)に、何らかの発言を期待するムードを中国側が作り 上げようとしていることを示唆していると見ら

れる。

 

中国へのメッセージ

 これに対して、中国メディアの中には、「蔡英文が初めて『92年コンセンサス』の受け入れを公式に否定した」と報じるところがあった。

しかし、蔡 氏の発言はもう少し丁寧かつ巧妙に練られたもので、「92年コンセンサス」そのものの否定というよりも、中国が言うように、

仮にそうしたものがあったとし ても、受け入れるかどうかは自分たちを当選させた民意次第であるとし、その責任を「台湾社会」に委ね

ることで、中国の批判を躱(かわ)そうという態度であ る。民進党の決定ではなく、台湾社会の決定である、という論理だ。

「92年コンセンサス」の受け入れが難しくなるのは、 今年1月の総統選で民進党に1票を投じるうえでの前提事項であった。

 ただ、蔡氏はそれだけではなく、「私の5月20日の就任演説のなかの『善意』に中国大陸側もある程度、気付いていると思う」と述べ

ている。就任演 説のなかで、中国側にとっては有利な材料であると言える「中華民国憲法体制」と「両岸人民関係条例」の枠内で中台

関係を処理したいと語ったことにもっと注 目してほしいと、暗に中国にメッセージを投げた形だった。

 

蔡氏の「宣言」

 一方、南シナ海の南沙諸島をめぐる仲裁裁判所の裁決に対する蔡英文氏の発言も興味深かった。台湾は、この仲裁裁判の直接の

当事者ではないが、半ば当事者のような部分があることも確かだ。

 今回の仲裁裁判では、中国が主張するいわゆる「9段線」も審議の対象になったが、その9段線はもともと1947年に中華民国が決定

した11段線を 引き継いだもので、現在も台湾政府は11段線を放棄していない。従って結局、南シナ海問題については中国と台湾の

主張はある程度同じ部分もある。今回の裁 決で9段線が否定され、また、台湾が実効支配する南沙諸島の太平島が島ではなく岩とさ

れたことに対して、台湾側は当初は激しく反発した。そのことで、中国 では中台連携への期待が一瞬盛り上がって議論された。

 しかし、蔡氏はインタビューで、中台連携で南シナ海問題に対処するというこの憶測に対して、明確にNOと言っている。

それによれば、

(1)南シナ 海の問題は、国連海洋法条約を含む国際法と海洋法に依拠して平和的方式で解決されるべきである

(2)我々は、台湾が多国間の問題解決メカニズムに参画しな くてはならないと主張している

(3)この地域の関係国は共同で南シナ海の航行と飛行の自由を維持しなくてはならない

(4)中華民国は、争いを棚上げし、共 同開発する、という方法で南シナ海の争いを処理すべきだと考えている

――というものだ。

 中国は、この裁決に正当性がないと訴えているが、これは国連海洋法条約に対する否定にも等しい議論で、しかも多国間の解決を

拒否し、あくまで2国 間での解決を求めている。そして、航行と飛行の自由は、中国が南シナ海問題における「黒幕」だと見なしている

米国の伝統的政策である。これらの問題につい て、蔡氏は中台連携の可能性を間接的に否定し、「裁決には不服だが、台湾は今後

も米国や日本、ASEAN(東南アジア諸国連合)の側に立つ」と宣言したに 等しい。

 

台湾を含んだ紛争解決の枠組みを

 台湾は、国連加盟国ではなく、中国との微妙な関係から、これまでも南シナ海問題の紛争解決枠組みの外に置かれてきた。今回の

裁決でも「中国の台湾 当局」という屈辱的な名称で呼ばれ、実際に資料の提出や口頭弁論の機会も与えられていない。しかし、現実に

は台湾もステークホルダーの1角である。

 南シナ海の問題解決枠組みの中にどうやって台湾を導き入れ、台湾が中国側に取り込まれないようにするのかを、そろそろ、日米や

ASEANは真剣に 検討に入ってほしい。台湾が太平島と東沙諸島を実効支配しており、中国とは共同歩調を取っていないという現実を

しっかりと受け止め、台湾を含んだ対話と紛 争防止のメカニズムを考える時期に来ていることを、今回のWPによる蔡英文インタビュー

から考えるべきではないだろうか..


ASEAN諸国


 

中国大陸、民進党関係者らの香港入境を拒否 台湾・蔡政権に警告か

 

 2016/08/24 16:33  フォーカス台湾


香港 24日 中央社)中国大陸当局が、台湾の与党、民進党の郭正亮・元立法委員(国会議員)など政界関係者3人の香港入境を拒否

したことが23日、分かった。3人が出席する予定だったフォーラムの主催者が中央社の取材に対し、明らかにした。

フォーラムは25日、香港で開かれる「香江論壇」。主催者「香江文化交流基金会」の江素恵主席によると、郭氏のほか、台湾の対中国

大陸政策を担う大陸委員会の范世平・諮問委員、元国民党幹部の楊偉中氏も入境を拒まれたという。

今回の騒ぎをめぐり、背景には、今年5月に発足した蔡英文政権の対中国大陸姿勢や、国民党が不当に取得した資産の回収を目指

す行政院(内閣)特別委員会のメンバーに楊氏が内定していることなどがあるとみられる。

江氏は、「一つの中国」の原則を前提とした「92年コンセンサス」を認めない民進党に対しての中国大陸からの「警告」だとの考えを示

した。また、今後の両岸(台湾と中国大陸)関係については、「緊張が高まるばかりだろう」とした。

楊氏は23日、出演したラジオ番組で「北京の行動は、国民党と共産党が一緒だということを(台湾の人々に)より強く印象付けた。これ

は、国民党にとって不公平で、良くないことだ」と述べた。