悪夢:中国の臓器売買の実態
ウイグル族やチベットの仏教徒など「良心の囚人」の臓器が強制的に摘出されている
2019 年 2 月 6 日 15:24 JST THE WALL STREET JOURNAL By Benedict Rogers
――筆者のベネディクト・ロジャース氏は国際人権団体、「クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド(CSW)」の東アジア・チームリーダーで、英保守党人権委員会の委員長代行や「中国での臓器移植濫用停止のための国際ネットワーク(ETAC)」のアドバイザーを務めている。
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中国は、残虐な臓器取引で非難を浴びている。その行為の証明は難しい。なぜなら被害者の体は廃棄され、
行為の目撃者は、医師、警察官、刑務官など関係者に限られるからだ。だがそうであっても、厳しい判断を
裏付ける証拠はそろっている。
容疑は、法輪功メンバー、イスラム教徒のウイグル族、チベットの仏教徒、「地下教会」のキリスト教徒
など多くの「良心の囚人」に医学的検査を受けさせ、彼らから無理やり臓器を摘出しているというものだ。
これらの臓器は、移植用に大量に売買されてきた。
中国で移植を待つ患者(外国人を含む)は、数日のうちに適合する臓器の提供を約束される。
カナダで政治家、検察官の経歴を持つデービッド・キルガー氏、弁護士のデービッド・マタス氏、
米ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏らの調査チームは、中国各地の病院で患者を装うことで、
こうした事実を確認した。中国衛生部(厚労省に相当)の元副部長で中国人体器官捐献与移植委員会委員長の
黄潔夫氏は2005年、手術に備えて予備の肝臓を2つ用意させた。この肝臓は、翌朝に現場に届けられた。
ほとんどの欧米先進諸国では、移植を待つ患者の待機期間は何カ月、時には何年にも及ぶ。
キルガー、マタス、ガットマンの3人は、2006年までさかのぼる調査に基づく報告
「Bloody Harvest/the Slaughter: An Update(血塗られた収穫・虐殺の最新報告=仮訳)」を2016年に
出版した。彼らの推計によれば、中国の病院では年間6万〜10万件の臓器移植が行われているとみられる。
これらの臓器はどこからやってくるのだろうか。中国は「アジア最大の自主的臓器提供システム」を
有しており、囚人の臓器の利用は2015年にやめたと主張している。しかし中国には、自主的な臓器提供の
伝統はない。
中国の公式発表によれば、2010年の自主的臓器提供者数は34人だった。2018年時点でも、公式統計上の
自主的臓器提供者は約6000人にすぎず、彼らが提供した臓器の数は1万8000強となっている。
しかし「Bloody Harvest」の著者らによれば、この程度の数の臓器は「わずか数カ所の病院の件数を
やすやすと超える」という。
天津市第一中心医院だけでも、年間6000件の臓器移植が行われており、著者らによれば「肝臓、腎臓移植を
行っている病院は確認されているだけで712に上っている」という。黄氏は、中国での臓器移植は
2020年には世界で最多となり、米国の年間4万件を上回るだろうと述べていた。
当局が示す数字では計算が合わない。何百もある病院の患者たち向けに数日以内に健康かつ患者に
適合可能な臓器を提供する自主的ドナーが年間わずか数千人であることは、さらに多くの、自主的ではない
臓器の供給源が存在することを意味する。
これら臓器の全てを死刑囚によって満たすことはできない。中国では同国以外の世界全体の件数を
合わせたよりも多くの人々が処刑されているが、それでも年間では数千人程度である。
さらに、中国の法律では、死刑を宣告された囚人に対し、宣告から数日以内に刑を執行することが
義務付けられている。このことは、ドナーと患者の臓器の適合性を見極めたり、臓器提供の要請にすぐに
対応できるようにしておいたりという中国のやり方を実行するだけの十分な時間が取れないことになる。
その結果、調査チームのメンバーらは、良心の囚人と呼ばれる人々が大半の出所不明の臓器の供給源で
あると結論づけるに至った。
さまざまな証拠がある。元「良心の囚人」らは、彼らが刑務所で血液検査や通常とは異なる医療検診の
対象だったと何度も証言している。その報告によれば、検査結果は提供可能な臓器のデータベースに
追加され、患者が臓器を必要とする場合、データベースにある良心の囚人から臓器を摘出することで、
要請に応じた臓器移植を可能にしているという。
中国の気功集団である法輪功は中国政府によって破壊分子とみなされ、1999年の摘発以降、迫害されている。
2006年に中国語の話せる複数の調査メンバーは臓器購入を希望する人物を装い、法輪功メンバーの臓器を
移植用に調達可能かどうか直接尋ねてみた。中国国内の複数の病院が、そうした臓器の調達は可能で、
問題ないことを確認している。
話は残酷だ。新疆地区出身の元外科医、安華託帝氏は英国、アイルランドと欧州の議会で、
1995年に囚人から強制的に臓器を摘出したと証言した。同氏は「われわれは丘の裏手で待ち、銃声が
聞こえたらすぐに草原の方に向かうよう告げられた」と当時を振り返った。「すると、銃声が聞こえた。
1回ではなく何回も。われわれは走って草原に向かった。武装した警官が近づいてきて向かうべき
場所を告げた。彼はひとつの人体の近くにわれわれを連れて行き、『これだ』と言った。
どこからともなく外科部長が現れ、肝臓と2つの腎臓を摘出するようわたしに言った」。
同氏によると、この男の傷は必ずしも致命的ではなかった。だが、同氏は作業を始め、肝臓と腎臓を摘出した。
その間、男の心臓はまだ動いていた。
これまでに世界中の専門家が中国の犯罪を証言している。イスラエル、台湾とスペインは中国への
「臓器移植ツーリズム」を禁じている。国連の調査委員会は、臓器の出所について中国に説明を
求めているが、回答はない。
「中国の良心の囚人からの強制的な臓器収奪に関する独立法廷」がこの問題を精査している。
ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ元大統領を訴追したジェフリー・ニース卿が裁判官と
専門家から構成されるこのパネルの議長を務める。彼らは昨年12月10日、異例の暫定判断を下した。
同パネルは「満場一致かつ合理的疑いの余地なく、(中国で国家による)良心の囚人からの強制的な
臓器摘出がかなりの期間にわたって行われていることを確信した。国による犠牲者はかなりの数に上る」
というものだ。
この暫定判断は、「無実の人を被害から救う」かもしれないことを願って出された。
中国側に言い分があるなら、わたしはそれを聞いてみたい。