WTO(世界貿易機構)てなに?
上級委員会は7名で構成されています。しかし既に4名が任期満了で退任しており、補充の委員の
再任や新委員の任命は、アメリカが拒否しているため、いまだ決まっていません。更に残りの
3委員は米国、インド、中国から成りますが、米国、インドの委員の任期は2019年12月10日迄です。
アメリカが拒否の姿勢を貫く事は確実ですので、それ以降は委員1名となり実質的に機能放棄の
状態になります。
2001年12月、中国は悲願のWTO加盟に成功します。これを契機に安い労働コストで外資を誘致し、
原材料、部品を加工し輸出する「世界の工場」の地位を確立します。中国は鉄鋼などの基幹産業、
ハイテク企業の育成を急ぐ為、国家が莫大な補助金を与えた事は良く知られています。
WTOのルールではこうした補助金は報告する義務があるのですが、中国はここまで一切義務を履行
していません。更にこの様な義務違反に対し、何らの罰則規定もないのです。
それどころか、日本の東北地域の魚介類に対する、韓国の輸入禁止措置を認めた決定、アメリカの
中国製太陽光パネルに対する相殺関税を、中国政府の補助金の存在を認めながら、それでも不当とした
決定など、不可解な事例が相次いでいます。
自由貿易促進を唱えるWTOですが、内実は中国や一部の国の国益を代弁するだけの機関になって
いるのです。これは国連や他の国際機関にも顕著に表れています。アメリカがWTOの改革を唱え、
委員の選任を拒む理由がここにあります。日本もアメリカの動きに同調し、改革を後押しする方針です。
日本の規制強化に対し声高にWTO提訴を唱える韓国ですが、魚介類の輸入を阻止した成功体験が
仇にならなければいいのですが。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ホワイトハウスから発表された「世界貿易機関における発展途上国の地位改革に関する覚書」
要点
WTO加盟国の3分の2近くが、自分たちを途上国に指定しており一部を除く国は特別な待遇を利用している。
ブルネイ、香港、クウェート、マカオ、カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦 、メキシコ、韓国、トルコ、
G20と経済協力開発機構(OECD)の両方のメンバー - もこのような地位を主張している。
これらの裕福な経済国が発展途上国の地位を主張し優遇措置を受けるのは世界の貿易にとって問題である。
今後も未解決のままにしてはならない。
中国はその点を最も劇的に示しています。
2001年にWTOに加盟して以来、中国は発展途上国であると主張し続けており、したがって、新しいWTO規則の下では
柔軟性を利用する権利を有しています。米国は、発展途上国の地位に対する中国の主張を受け入れたことは一度もありません。
また、現在のほぼすべての経済指標は中国の主張を裏付けるものです。何年もの爆発的な成長を経て、中国は米国に次いで
世界第2位の国内総生産を誇っています。世界の総輸出額の13%近くを中国が占めていますが、1995年から2017年の間に
世界の輸出シェアは5倍に増えました。2009年以降、毎年世界最大の商品輸出国となっています。低賃金製造部門からの
商品に限定されていません。
中国は現在、ハイテク製品の輸出で世界第1位にランクされており、そのような輸出だけで1995年から2016年の
間に3,800パーセント増加しています。
これらの事実および他の経済的成長、活気の証拠にもかかわらず、中国および他の多くの国々は発展途上国としての
地位を保ち続け、他のWTO加盟国よりも弱い立場にある恩恵を享受することができます。これらの国々は、他のWTO
加盟国を犠牲にして、保障措置、寛大な移行期間、より緩やかな関税引き下げ、WTO紛争の手続き上の優位性、
および特定の輸出補助金を利用する資格を、より長い期間において権利を主張している。
これらの国々はまた、継続的な交渉において他のWTO加盟国よりも緩い約束を一貫して模索してきており、
これはWTOの進歩を著しく妨げている。さらに、世界の最も先進的な経済国の多くは、WTO規則の下での最も基本的な
届出要件を遵守しない言い訳として開発途上国の地位を利用しており、米国のトレーダーから重要な貿易データを
奪っています。この現状を継続することはできません。
よってこの状況を改革することを申し入れます。
国際経済制度を改革する必要性は、米国にとってだけではなく、世界市場に参加しているすべての国にとっても
課題です。経済力の豊富な証拠にもかかわらず、もはや保証されていない利益を利用することはできません。
そして90日以内に進展がなければ米国は独自に優遇処置を取りやめる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どのような優遇処置「特別かつ異なる待遇(S&D)」が受けられるのか
発展途上国の場合、「特別かつ異なる待遇(S&D)」として、先進国から関税免除などの優遇を
受けられるほか、貿易自由化の義務も免除されます。
中国、韓国が「特別かつ異なる待遇(S&D)」を盾に自国の貿易を守る動きを見せていることに
批判が高まっています。
びっくり!発展途上国と先進国の判断は自己申告
自国が発展途上国か先進国かの判断は各国の自己申告となります。発展途上国だと言い張ればWTOの
取り決めにおいて発展途上国の優遇処置が受けられることになります。呼息にも、中国や韓国が自国は
まだ発展途上国だと言い張っています。
他国が「発展途上国とは言えない」といってもWTOでは全会一致を原則としますので簡単には覆る
ことはできません。
トランプ大統領が「WTOは壊れている」と発言しましたがこういったWTOのルールに対し不満を
述べていると考えられます。
逆に2018年に台湾は「発展途上国」との主張を放棄し、「先進国」として参加する方針を打ち出し
世界経済での存在感をアピールしました。
WTO設立1995年1月1日
中国のWTO加盟
中国(中華人民共和国)は2001年に加盟して、WTOの143番目の加盟国となりました。
交渉開始から足掛け15年におよぶ紆余曲折を経て、最終的に加盟したことは、世界経済にも大きな
影響を与えています。
元々、GATTの原締約国のひとつであった中華民国は、中華人民共和国との内戦に敗れて台湾に逃れ、
1950年にGATTからの脱退を通告。その後、中国は長くGATT体制の枠組みの外にありました。
1980年代に入ると、鄧小平政権の推進する改革開放路線のもとで実質的な資本主義化が進みます。
1986年には「GATT締約国としての地位の回復」を申請しました。台湾政府によるGATT脱退通知を
無効なものとして、新規加盟ではなく地位の回復を申請したのです。
当初中国の加盟交渉は順調に進んでいましたが、1989年6月に起きた「天安門事件」により情勢が
一変すると、交渉はストップしてしまいます。
その後も中国は江沢民政権のもとで工業化を果たし、世界経済における存在感を高めていきました
。その結果、2001年に開かれた閣僚会議において満場一致で加盟が可決します。
WTOに加盟したことで中国の貿易はさらに拡大し、日本を抜いて世界第2位の経済大国に躍進する
原動力となりました。
韓国WTO加盟
●1995年1月1日に加盟。(金泳三大統領)ただし、GATT加盟は1967年4月14日。
●日韓基本条約1965年6月
●「漢江の奇跡」:これは朝鮮戦争で焼け野原となった後の1960年代~1980年代にかけての経済・技術
発展。韓国が著しい発展を遂げ、先進国並みの水準に追いつくまでの経済成長した。
●1997年 (金泳三大統領) 11月21日 - 通貨危機(ウォンの下落)。IMF(国際通貨基金)に
支援を要請。
90日以内に進展しなければ、途上国扱いをやめる方針
そしてトランプ大統領はTwitterで「中国は経済大国なのに、WTOからは途上国とみられている」
「不公平だ」と不満を漏らし90日以内に進展しなければ、米国として独自に途上国扱いをやめる
方針を打ち出しました。
全会一致の原則がある限り、いつまでも中国、韓国は発展途上国と主張し優遇処置を受け続けるでしょう。
それなら途上国にふさわしい経済状態に落としてあげるべきでしょう。
韓国は簡単ですが、中国は強固な包囲網の構築と、世界経済への影響を軽減する対策を用意し、
時間をかけじっくりやっていくしかないかもしれません。
W T O における途上国優遇制度の見直し論 - アジア経済研究所学術研究所 2014年
file:///C:/Users/emetto2015/Downloads/ZWT201406_006.pdf