蜂蜜で乳児が突然死…母乳が人間の体に与えるスゴイパワー
2017.04.11 Business Journal
生後6カ月の母乳哺育(栄養)の大切さを改めて再認識させる衝撃の事件が起きた。
東京都足立区の生後6カ月の男児が離乳食の蜂蜜が原因と見られる乳児ボツリヌス症で急死した。国内での死亡は
1986年以来、実に31年ぶりという(時事通信2017年4月7日)。
生後6カ月の男児、蜂蜜が原因で死亡
男児は1月中旬から約1カ月間、離乳食として蜂蜜を混ぜたジュース(1日平均10g)を飲んだ。2月16日から咳、鼻
水、痙攣、呼吸不全を発症後、乳児ボツリヌス症と診断されたが、3月30日に急死。男児の便と自宅にあった蜂蜜から
ボツリヌス菌が検出された。
蜂蜜は乳児ボツリヌス症の原因になるリスクが高いため、容器のラベルなどに「1歳未満の乳児に摂取させない」とい
う注意表示がある。
乳児ボツリヌス症とは何だろうか?
乳児ボツリヌス症は、1歳未満の乳児がボツリヌス菌(クロストリジウム)の芽胞(がほう)を吸入・嚥下することによって
発症する感染症だ(『ネルソン小児科学(第19版)』)。感染すると、腸内に毒素が発生するため、便秘、哺乳力の減弱、
全身の神経麻痺、筋力の低下、呼吸困難などの症状が出るが、死亡は稀とされる。
食中毒の原因菌であるボツリヌス菌は、土壌中に芽胞という半結晶状態で存在する。芽胞のままでは発芽しない(休
眠型)が、発芽して増殖を始める(増殖型)と毒素の活性力が増強され、食中毒を起こす。
乳児には蜂蜜を絶対に与えてはならない
胎児は無菌状態のまま子宮内で成長する。胎児が産道に入り、経膣出産するや否や、膣や肛門に棲息する母親由来
の微生物群の一斉攻撃にさらされる。やがて、微生物は乳児の体表や体内に深く侵入し、腸にも棲みつく。
このようなマイクロバイオータ(微生物相)の形成は、出産に伴って急速に進むが、出生直後は、乳児の免疫系も消化
器系も未発達なうえ腸の粘膜層も薄いため、乳児の身体への侵襲リスクは必然的に高まる。
しかし、母乳にプロラクチンとオキシトシンというホルモンが生産されるので、母乳哺育(栄養)によって乳児のホメオス
タシス(恒常性)は強化される。
つまり、母乳に含まれる免疫グロブリンA、オリゴ糖、必須脂肪酸、グルタミン酸をはじめ、タンパク質(ラクトフェリン、
アルギニン、アルブミン、カゼイン)、ビタミン(ビタミンA・D・E・K、葉酸)、ミネラル(カルシウム、ナトリウム、鉄分)などが
乳児の受動免疫を高めるので、腸の粘膜免疫系が強まるのだ。
その結果、マイクロバイオータの多様性が深まり、有用菌(善玉菌)や有害菌(悪玉菌)が共生する腸内フローラが形
成される。さらに、乳児の成育に伴って、マイクロバイオータは成長を遂げながら、第2のゲノムと呼ばれるマイクロバイ
オーム(2500万個の遺伝子全体)の生成につながっていくので、乳児のホメオスタシスが安定する。
このような生命科学の根拠から、母乳哺育(栄養)の重要性が明らかになった。AAP(米国小児科学会)やWHO(世界
保健機関)、日本産科婦人科学会などは、生後6カ月の母乳哺育(栄養)と、1歳までの母乳と固形食の併用を推奨して
いる。
厚生労働省は1987年以降、1歳未満の乳児に離乳食として蜂蜜を与えないように指導。都も注意喚起している。
大人がボツリヌス菌の芽胞を吸入・嚥下しても、腸内フローラが成熟していれば芽胞は発芽しないので、食中毒は起き
ない。
したがって、乳児の腸内フローラの成熟度が乳児ボツリヌス症の発症を決定しているのは明白だ。つまり、母乳哺育
(栄養)を続ければ続けるほど、マイクロバイオータ(微生物相)の多様性が深まり腸内フローラが育つため、ボツリヌス
菌の毒素は増殖しにくくなり、乳児ボツリヌス症の発症予防につながるのだ。
乳児ボツリヌス症や乳幼児突然死症候群を防ぐために、1歳未満の乳児に蜂蜜を絶対に与えない--。これは覚えて
おきたい。
*参考文献/『日本小児科学会雑誌』2015年1月号「わが国の乳児ボツリヌス症の実状」
1歳未満の赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけませんが、気づかないうちに食べさせてしまっていることもありま
す。
例えば、はちみつ入りのパン、はちみつ入りジュース、お祝いで頂いたはちみつ入りのカステラ、キャンディーに含まれ
ているはちみつ、調味料に加えられたはちみつなど、意外とはちみつ入りの食品はたくさんあります。
市販のものを赤ちゃんに与える場合は、どんな成分が入っているか必ずチェックし、食べさせないようにしましょう。外食
する時も、はちみつが入っていないか事前に確認するようにしてください。
ボツリヌス菌は100℃でも殺菌されないため、加熱調理されていたとしても感染する可能性があるということを覚えてお
きましょう。
「蜂蜜を乳児に与えてはいけない」というのは常識かと思っていたらそうでもないようです。
幸い事故に至らないものの、知らずに食べさせている親はいると思います。
産婦人科、保健所などは親に教えていると思いますがもっと徹底すべきですね。
蜂蜜そのものの商品は、「1歳未満には食べさせないで下さい」という注意書きは大体あります。
たしか注意書きは義務化されてないと思います。それともっと大きく書くべきでしょう。
蜂蜜を使った商品はどうかというと私の経験から注意喚起は半分くらいでしょうか。
蜂蜜が使われている石鹸にも注意書きがありました。また一回分に小分けされている蜂蜜には注意書きはありませんでした。
企業の良心に任せている現状なんですね。
厚生労働省は注意喚起を促すとしていますが、消費者と生産者両方に徹底してもらいたいですね。
必ず含まれているとは限らないので、義務化できないのかな~。