ASEAN有識者調査。6割が「一帯一路」に不信感。
戦略的パートナーには「日本」が最多
【シンガポール=森浩】中国の巨大経済圏構想「一帯一路」が生む債務の負担が問題化する中、
東南アジア諸国連合(ASEAN)の有識者の6割が一帯一路に不信感を抱いていることが
21日までにシンクタンクの調査で明らかになった。中国の政治的影響力を懸念する声も上がる。
中国の覇権主義に対する東南アジアの警戒心があらわになる一方、日本への期待も浮き彫りになった。
調査はシンガポールのシンクタンク、東南アジア研究所(ISEAS)が行った。
ASEAN加盟10カ国の政府関係者や学識経験者、非政府組織(NGO)関係者ら1308人を
対象にした。
東南アジアでは、中国が巨額の投資を通じて影響力を拡大する一方、米国の存在感が薄まる。
トランプ米大統領は昨年11月、東アジアサミット(EAS)などASEAN首脳会議の
関連会合への参加を見送り、「アジア軽視」との批判も浴びた。
こうした状況を受けてか、調査では、東南アジアで最も大きな政治的・戦略的影響力を持つ国や
共同体を問う質問で、中国が52・2%とトップになった。2位の米国(26・7%)、3位の
ASEAN(18・1%)を引き離した。
ただ、中国の影響力拡大は必ずしも歓迎されていないことがうかがえる。「中国」と回答した
人のうち8割以上が、その影響力拡大に「懸念がある」とした。
懸念の理由の1つとみられるのが、一帯一路が生み出す負担だ。中国政府は昨年来、
「オープンでクリーンな」融資を打ち出しており、財政的な持続可能性を推進する意向を示している。
しかし、調査では一帯一路のこうした方向性について、回答者の63・6%が「信用しない」
「あまり信用しない」との見解を示した。特に南シナ海の領有権をめぐって中国との対立が
先鋭化するベトナムでは否定的な回答が86・8%に達した。
中国の影響力が増す中、期待する声が高まるのは日本の役割だ。「ASEANが米中対立の
不確実性に備えるため、戦略的パートナーとしてふさわしいのは」との質問には、「日本」との
回答がトップで38・2%。欧州連合(EU)が2位で31・7%と続いた。
日本には「国際法を順守する」という点で支持が集まる。
また、日本が「世界の平和、安全、繁栄に貢献する上で正しい行動を取るか」との質問には
6割以上が「強く確信する」「確信する」と回答。質問の対象となった各国の中で、日本だけが
半数を超える回答者から信頼を得た。同じ質問で中国は16・1%にとどまった