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主夫の徒然なるままに

高校受験について 高校入試「特色化選抜」(1)



 一般入試があと数日となった福岡県の高校入試、現中2生が受験生に生まれ変わる日でもある。私が塾講師だったころ、「受験は情報戦だ」と保護者によく伝えたものである。知らなかったでは大損をする。


 福岡県の高校入試では、2019年から「特色化選抜」を実施している。当初は11校で実施、2022年で25校、2023年で50校、2024年で64校と実施高校が増加している。全国的には、2002年から始まり、現在、全国の半数の県で実施されている。実施をとりやめた県もある。

 「特色化選抜」とは何か。初めて中学生を持つ親御さんたちには、なじみの薄い入試方法だと思う。普通の試験を受ける「一般入試」、テストのない「推薦入試」、そして、「特色化選抜」である。「推薦」と「特色化」の違いは、一言で言うと、中学校(校長)の許可(推薦)があるかどうかである。「特色化選抜」では、生徒自身の判断で、受験できるという点にある。

 福岡県教育委員会は「特色化選抜」の趣旨を、「学校の特色にふさわしい生徒の入学をより一層促進する観点から、生徒の多様な個性を積極的に評価する『特色化選抜』を導入し、県立高等学校の特色化及び活性化を図る。」 と説明する。大義名分として、『生徒の多様な個性を積極的に評価する』としている。

 では、本音の部分ではどうであろうか。

 まず、少子化による受験生の減少。1990年頃、受験生は、140万人を超えていた。現在は、100万人程度、昨年の出生数は、75万人である。半減する子供の数で、どう生徒を獲得するか、大きな問題となる。

 地方の私立大学では、中国人留学生を大量に入学させて存続している大学もあるが、高校ではそうはいかない。各高校の入学数(クラス数)を段階的に減らして対応している。私が直接訪問した偏差値の低い普通科高校では、教室の半数が使われておらず、不気味な静けさに驚いた。工業系商業系高校では、入試倍率が1倍を切るところも多くなった。農業系では、少しでも質のいい生徒を集めるために高校教師が必死に遠方の中学や塾などを回って生徒集めに奔走していた。

 この「特色化選抜」に最初に手を挙げた高校は、そういう公立工業系商業系の高校、偏差値の低い普通科高校であった。実施する高校が段階的に増えてくると偏差値の高い高校でも実施されるようになった。地区ナンバー2の高校も手を挙げている。

 選抜の基準として、ある偏差値の低い普通科高校では、

 【 ① 中 学 校 生 活 に お い て , 学 習 活 動 , 運 動 競 技 , 文 化 活 動 , 生 徒 会 活 動 , ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 等 に 真 面 目 に 取 り 組 ん だ 者 で , 入 学 後 も い ず れ か の 活 動 に 積 極 的 に 取 り 組 む 意 欲 の あ る 者 。 ② 出 願 時 に 提 出 す る 調 査 書 に お け る 3 年 次 の 評 定 合 計 が 2 5 以 上 の 者 。 ③ 出 願 時 に 提 出 す る 調 査 書 に お け る 3 年 次 の 各 教 科 の 評 定 に 1 が な い こ と 。 
 (※その他の選抜基準もある)】

 内申点25以上とは、9科目合計45(5×9科目)でオール3で合計27(3×9科目)、つまり平均に3足りない生徒はだめですと、くぎを刺している。「オール2程度の生徒はだめですよ」、つまり、普通レベルの生徒が欲しい、これが本音である。

 地区ナンバー2の高校では、

 【 内定基準 次の(1),(2)の要件をともに満たす者とします。 (1)出願時に提出する調査書における中学校3年次の評定合計が43以上である者 (2)次の4つのうちのいずれかの要件を満たす者 ・ 難易度の高い大学等への進学を積極的にチャレンジしたいと希望する者 ・ 中学校学習レベル以上の調査・研究を行い,その成果を上げている者 ・ 本校在学中に数学オリンピック等に積極的にチャレンジしたいと希望する者 ・ 本校在学中に実用英語技能検定準1級以上またはそれと同等の外部試験のスコアの 取得にチャレンジしたいと希望する者 

 内申点43以上とは、9科目合計45でオール5に近い生徒が欲しいと言っているのに等しい。私の教えた優秀な生徒でも、オール5の生徒はそう多くはなかった。その理由は、体育が3でそれ以外5という場合が非常に多かったからだ。だからと言って「頭がいい子は運動能力が低いんだ」と考えてはいけない。体育だけは、体育系部活の子に5を与えるために体育の筆記テストの点がよくても5はとれない仕組みである。ということは、地区ナンバーワンの高校に行く生徒を先取りしたいというナンバー2の高校の魂胆が明々白々であるということになる。

地区ナンバー3の高校では、

 【内定基準 次の内定基準をどちらも満たす者とします。 ア 出願時に提出する調査書の3年次の評定合計が41以上である者。 イ 出願時に提出する調査書の3年次の国語・社会・数学・理科・外国語(英語)の評定合計が23以 上である者。

 内申点41と言うのは、オール4プラス5で、これは、地区ナンバー1の高校の基準内申点と言っていい。5教科23以上とは、基本科目ほぼオール5を意味している。つまり、地区ナンバー1の高校に近い学力をもっている生徒を対象に募集をかけている。「早く合格したければ、私たちの高校に来ませんか」「その内申点があれば、不合格の心配なく、我が高校に合格できますよ」という誘い(いざない)と考えるのは行き過ぎであろうか。

 これらの基準は、「特色化」というカモフラージュの理想をもとに、現実として、より優秀な生徒、学力のあるまじめな生徒を先取りしようとする試みであると思われる。生徒個人で申し込める「特色化」選抜であるがゆえに、誰でも受けたくなるような入試であるが、現実は、壁が高く、入試倍率は、1.1倍程度の高校が非常に多く、2倍を超える高校は数少ない。「熱き希望を持つ生徒よ、来たれ」と言われても結局、内申点の高い、つまり、良い子で、学力のある子が求められているのであり、結局は、生徒の青田買いであると言い切れてしまう。

高校入試「特色化選抜」(2)に続く

カンボジアの小学校、放課後)







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