おおたとしまさ著「公立中高一貫校に合格させる塾は何を教えているのか」を読んでみた。彼の著作を連続して読んでみて、新しい教育の流れ、塾の流れを垣間見ることができた。幼児から小学生低学年の親御さんが読んでみると後々後悔しない情報が多く、ためになると思われる。現在の教育は、ある種「情報戦」である面が強い。「知らなかった」、「昔と同じと思っていた」では、後々ひどい目にあうこと必定である。
北九州市には、公立中高一貫校として、「門司学園」がある。非常に不便なところにあるので、高い人気を誇っているわけでもなく、難易度もとても高いわけではない。ただし、中高一貫校のメリットを感じる親御さんも多く、片道1時間半かけても通わせる家庭もあった。高校進学を基本とする塾としては、どちらかというと中高一貫のデメリットを語ることが多く、高校入試のない中だるみ状態でいいのか、6年間同じ顔触れで過ごす人間関係は井の中の蛙状態にならないのか、いじめの問題はどうなのか、など語られてきた。ただし、近場の教室では、門司学園対策授業を実施しており、面接練習や作文指導などの手伝いもした。最終段階の面接練習を手伝ったみたが、公立高校の推薦入試の面接とは違い、しっかりとした目標や意見を述べていた。小学生にしては、すごいと感じさせる態度である。しかし、こういう練習の場合、想定していない質問を必ずすることにしているが、やはり、多少、しどろもどろになるのは、かわいい。
2015年福岡、北九州のベッドタウンとして発展してきた宗像に宗像高校の併設中学として福岡県立宗像中学校が設立された。設立当時の倍率が8.08倍と東京の公立中高一貫校並みの人気となった。やはり、若い親にとって公立中高一貫校のメリットを強く感じたのではないかと思う。周辺の塾では、いち早く宗像中学対策コースを設立している。
さて、公立中高一貫校に入学させるために何を教えているのか、何を学ばなければならないかには、大変興味深い問題だと思われる。この本では、「ena」という塾を基本に、授業風景なども踏まえて解説している。結論的には、私立中高一貫校入試対策のような知識の偏重、難易度の高い算数問題の対策などは、あまり必要ではないと言っている。ただし、幅広い知識への興味と深い思考力が要求され、小学校の教科書+20%以上の実力は必要であり、「適性検査」という響きとは決定的に違う高度な対策が求められている。塾での対策は必ず必要とされる。ここにも激しい競争が待っているわけである。
私立中高一貫校の過酷な受験勉強が、その後の全員に幸せな学生生活を保障していないことはいろいろな記事によって報告されている。公立中高一貫校への受験勉強も、合格不合格がある以上、過酷な競争に飲み込まれることは当然である。しかし、公立中高一貫校への受験勉強は、けっして無駄になることはないと筆者は結論づけている。
「思い出の一枚」
授業風景
※表題写真 紫禁城に座る人民服の人々、40年ほど前。
「主夫の作る夕食」
ハヤシライスと柿のサラダ、トウモロコシ