従業員のモチベーションをあげるために、トップが積極的に従業員に声掛けをするようにしているという企業も出てきています。
上司が部下にこまめに声をかけるようにしているという企業もあります。
声をかけてもらうことによって「自分のことを気にかけてくれている」と感じることが、モチベーション・アップにつながります。
単に声をかけてもらうのみならず、「何か困ることや気になることがあったら、何でも言ってよ」「わからないことや迷うことがあったら、何でも遠慮なく訊いてよ」などと声をかけられ、話を聞いてもらえたりすると、ますますモチベーションは上がります。
なぜ声掛けによってモチベーションを上げさせることが必要なのかというと、だれもが正当に評価されないという「報われていない感」をもっているからです。
報われていないという思いは、被害者意識を生み、モチベーションを大きく低下させます。
自己愛は過剰になる性質をもっており、誰もが自分を過大評価しています。
D・ダニングたちの調査では、70%が自分のリーダーシップ能力は平均より上だとみなしており、自分は平均以下とみなす人は2%しかいないというデータが出ています。
自分の人とうまくやっていく能力については、85%が平均より上だとみなしており、自分は平均以下とみなす人は皆無でした。
しかも、25%もの人が自分は上位1%に入るとみなしていました。
いずれも統計的にあり得ない数字となっています。
他にも、管理職の90%は自分の能力は他の管理職より優れているとみなしているという調査結果や、大学教授の94%が自分は平均より優れた業績をあげているとみなしているという調査結果などが報告されています。
欧米社会とちがって日本ではそこまで極端に自分を買いかぶることはないにしても、過剰な自己愛が自己認知を歪め、実際以上に自分の能力や業績を過大評価しがちです。
そのため、だれもが「報われていない感」を抱えることになります。
そうした「報われていない感」を緩和するためにも、経営者や上司の声掛けが大切となるのです。
また、欧米流の成果主義がそのままでは日本ではうまく機能しないという認識が共有されつつあるとはいえ、個人の成果を問わないわけにはいきません。
そんな時代の流れの中、かつてのような滅私奉公をしていればやがて報われるといった姿勢が通用しなくなり、自分たちのこれまでは何だったのかと戸惑う中高年世代のモチベーションが下がりがちです。
そうした中高年世代への対応としても、上司が適切な声掛けをすることによって「報われていない感」を軽減することが必須と言えます。