アダルトチルドレンは、COA(チルドレン・オブ・アルコホリックス)が成人(アダルト:A)したACOA(アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス)に由来している。
そうすると、アダルトチルドレンとは、アルコール依存症家族で育って成人した大人の「個人診断」(インディビデュアル・ダイアグノーシス)の名称ということになる。
しかし、その心理的特徴、心性、症状はあまりにも多彩であり、それらのみを観察してアダルトチルドレンと「個人診断」をつけることは困難である。
また、家族システムの診断も必要である。
しかし、アルコール依存症はその程度はさまざまであり、またその家族システムの歪みもさまざまである。
すなわち、ブラウンが指摘するように、アダルトチルドレンとは、「個人診断」でも「家族診断」でもない。
それを包括して統合した名称であり、診断名とするならば、いわば「症候群」と提唱された考え方のほうがよいのではなかろうか。
アルコール依存症や機能不全家族に育ったからといって、必ずしも心理的特徴、心性、症状を呈するわけではない。
アルコール依存症や機能不全家族という「原因」(コーズ)が単純な「結果」(アウトカム)を生み出す因果律(コーザリティー)を持っているわけではない。
また、アダルトチルドレンと同じ心理的特徴、心性、症状を呈している成人がいたとしても、それが必ずしもアルコール依存症や機能不全家族に起因するわけでもない。
アダルトチルドレンに対しては、ハーケンが指摘するように、「過剰一般化」(オーバー・ジェネラリゼーション)や「過剰単純化」(オーバー・シンプリフィケーション)されやすい。
ブラウンが指摘するように、そうすることによって、アダルトチルドレンは単純な「料理本」(クックブック)の説明のようになってしまう。
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そこでは、アダルトチルドレンが本来持っている細やかな味の分別がつかなくなる危険性がある。
また、「個人診断」か「家族診断」かの論争のなかには、狭義のアルコール依存症のアダルトチルドレンには、遺伝学的な研究が背景にある。
アダルトチルドレンは、「家族環境要因」(ファミリアル・エンバイロメンタル・ファクター)を重視した概念であるが、クロニンジャーらが指摘するように、アルコール依存症に「遺伝要因」(ジェネティック・ファクター)があるとすれば、アダルトチルドレンそのものの存在は消失してしまう。
フルトンとエティスは、その意味からも、「診断カテゴリー」としてのアダルトチルドレンの存在を疑問視している。
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