志賀直哉 喜寿(77歳)のころの文です
人間というものができて
何十万年になるか知らないが
その間に数えきれない人間が
生まれ、生き、死んでいった
私もその一人として生まれ
今、生きているのだが
たとえて言えば
悠々流れる大河の水の一滴の存在
しかも 一滴の水である私は
後ろにも、前にもこの私だけで
何万年遡っても私はいず
何万年経っても再び私は
生まれては来ないのだ
過去未来を通じ
永劫に、私という者は
現在の私一人なのである
77歳
直哉
2018年6月
笠原 道夫
人間というものができて
何十万年になるか知らないが
その間に数えきれない人間が
生まれ、生き、死んでいった
私もその一人として生まれ
今、生きているのだが
たとえて言えば
悠々流れる大河の水の一滴の存在
しかも 一滴の水である私は
後ろにも、前にもこの私だけで
何万年遡っても私はいず
何万年経っても再び私は
生まれては来ないのだ
過去未来を通じ
永劫に、私という者は
現在の私一人なのである
77歳
直哉
2018年6月
笠原 道夫