気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

(’77) 8月7日 (土) 鈴木洋子 上京

2023年08月07日 | 日記・エッセイ・コラム
’77年の日記らしい日記といえば、この辺りが最期と言える。‘76年(去年)の5月7日〜6月2日、八重山紀行を共にした名古屋の洋子が一泊二日で私の街にやって来て、束の間、思い出を温めていったところ迄となる。この頃の私は凡そ一月前の七月九日に沖縄から戻って以来かなり多忙な日々を送っていた。たまたま家に居たところへ突然洋子からの電話。『会いに行くけど、いつなら居るの?』という話しの末にこの日(8月7日)が決まったと云うわけだ。

‘77.  8月7日 (土)  洋子•上京
不快指数の高い日々が続いている。既に沖縄での過ごした後だけに、この蒸し暑さには閉口してしまう。これが内地の夏だったのか!?そんな中でラジオに耳を傾けると、一瞬なりとも私の心を和ませてくれる曲がかかる。イーグルス「ホテル•カルフォルニア」。現在流行りつつある様だが、必ずやBig Hitする事間違い無いだろう。この曲のイメージは緑とブルーと云ったところかな。それが沖縄の記憶と重複しては、時の流れを逆行させる。そんな日々の中、名古屋から洋子がやって来た。風が止まったままの夕刻の事だった。
既にホテルのチェックインを済ませた後の電話であった。相変わらず年齢不詳を思わせる口調で、声を弾ませていた。
「いま、何処?」
「鴎外荘っていうホテル」
「えっ、なに、何処に在るの、それ」
「あのねぇ、上野の池之端の近く。あれ、ジュン知らないの?地元でしよ?」
「それは…池之端は地元だけれど、そんな…ホテルまでは管轄外だもの、知らないって。池之端のどの辺り?」
ただ一泊だけの東京。何処でどの様に探し出してきたのか、とにかく今、洋子は鴎外荘なるホテルの一室に居る。とりあえず大方の場所を尋いて見当を付けてから、出掛けて行く時間を決めた。ホテルへ面会に行くのはこれで二度目と云う事になる。凡そ六〜七年前、北海道から橋本玲子が修学旅行で上京した時以来だ。あの時はどんな気持ちで出掛けたのか…などと思いながらも、去年の陽子を思い出していた。

幸いな事にホテルはすぐに見つけられた。そして意外な事が起こったのである。と言うのは、普通宿泊客との面会はロビーで…と相場が決まっていると思うのだけれど、フロントマンは何と部屋へ通してくれたのだった。こんな事も有るのかな…と思いながらもフロントの右に有るエレベーターに乗った。
客室。小さな部屋で洋子は私を迎えてくれた。フロントの事を話すと、
「いいんじゃないの」
と笑っていた。久し振りの再会。何とまあ、初めの微笑みはそこから始まった。
凡そ十四カ月振りの再会は、これ迄続けてきたお互いの旅の話しに終始した。若い女の一人旅(旅行)。初めての竹富で出逢った長谷川章子に始まり、何人かに出逢っている。これ迄気が付かなかったけれど、時代はその流れを許し始めている様に感じ取れる。私と同じ歳の洋子は、その事を改めて感じさせる。そんな洋子故に、私の旅を理解出来るのであろうか?
時間が気になっていたものの楽しく過ぎて行く時の中、私は帰るのを忘れていた。そんな時、洋子は言った。
「ねぇ、このまま泊まっていっちゃえば?
「えっ!?  まさかぁ、そんな事出来
る筈ないよぉ」
「だって、これだけ時間が経っているのに、フロントが何も言ってこないじゃない。係りの人が変ったんだとしたら、ジュンがここにいるの知らないでしょ…」
「そりゃそうだけど…でもねえ…」「じや、帰る?」
「ウンンン…でもサ、明日の朝はどうするのサ。上手く判らない様に抜け出せるかなァ」
「何とかなるわよ。私がフロントへ先に行って注意を引いておくし、エレベーターは真横にあって死角になるから…」
「洋子も悪だねぇ」
「いいじゃない。滅多に出来る事じゃないもの」
「当たり前じやない」
「ねっ、そうしよう。そうすれば、今夜は一緒にいられるもの」
半ば押し切られた形で、洋子のアイデア(悪巧み)に乗った。内心ドキドキしていたのだけど、開き直ってみれば何となく居心地の良さを感じる部屋の様にも思えてきた。まだまだ夏の真ん中、強めにセットしたクーラーが気持ち良かった。

そう言えば、このブログを書いている今日は8月7日、この日記と同じ日付け。
なんか、そんな遠い日の事とは思えないのは…どうしてなのかな?

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