「松本清張」の長篇サスペンス作品『霧の旗』を読みました。
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『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』、『時間の習俗』に続き「松本清張」作品です。
-----story-------------
殺人容疑で捕えられ、死刑の判決を受けた兄の無罪を信じて、「柳田桐子」は九州から上京した。
彼女は高名な弁護士「大塚欽三」に調査を懇願するが、すげなく断わられる。
兄は汚名を着たまま獄死し、「桐子」の大塚弁護士に対する執拗な復讐が始まる……。
それぞれに影の部分を持ち、孤絶化した状況に生きる現代人にとって、法と裁判制度は何か?を問い、その限界を鋭く指摘した野心作である。
-----------------------
雑誌『婦人公論』の昭和34年7月号から翌年3月号に連載された作品、、、
数年前に「山口百恵」主演の映画化作品を観たことがありますが… 薄幸な運命を気丈に生きる女性「柳田桐子」役を演じる「山口百恵」の印象が強過ぎて、物語の展開が記憶から薄れている感じなので、映画のシーンを思い出しながら本作品を読みました。
北九州のK市で発生した、高利で金貸しを営む老婆「渡辺キク」の強盗殺人事件で、被害者から金を借りていた教師「柳田正夫」が、犯人として検挙された、、、
「柳田」は、殺害現場での借用証書の窃取は認めたものの、殺人に関しては無罪を主張する… しかし、殺人の物的証拠が揃い十分な動機も認められた状況の中で、「柳田」の主張は受け入れられず、国選弁護人も状況を覆すことはできなかった。
「柳田」の無罪を信じる妹「桐子」は、兄の無罪を立証するために丸の内に事務所を構える高名な弁護士「大塚欽三」に弁護の依頼を申し出るが、他の事案で多忙なことや、「桐子」が弁護士費用の支払い能力がないことを理由に拒絶される、、、
やがて、無実を訴えながら「柳田」は獄死し、獄中で非業の死を遂げた兄の復讐を遂げる為に「桐子」はある行動に出る。
弁護を受けてもらえなかったことへの逆恨みという感じもしますが、、、
「柳田正夫」と「桐子」の兄妹のエピソードを起点に、誰もが冤罪に陥れられる可能性があり、有能な弁護士を高い報酬で雇わないと無罪を証明できない… という法や裁判制度の問題点を指摘した野心作ですね。
弁護士「大塚」の愛人「河野径子」に殺人の容疑がかけられた際、「径子」のアリバイを唯一証明できる立場にあった「桐子」は『「径子」には会ってない』と偽証、、、
しかも真犯人の残した証拠品のライターを隠蔽し、更に「径子」が落とした手袋を死体の横に置く等の工作を行い、果てには「大塚」から真実を語って欲しいと頼み込まれると、「大塚」を自宅に誘い込んで肉体関係を結び、『「大塚」から偽証を迫られたうえ、肉体関係を強要された』と偽証… 自分の身体を犠牲にしてまで信念を貫き「大塚」への復讐に徹する「桐子」の姿勢は圧巻。
でも、結局、二つの殺人事件で犯罪を犯した真犯人(左利きと思われることから「杉浦健次」の友人「山上武雄」の犯行と思われるが…)は逮捕されず、容疑は「正夫」(獄死)と「径子」にかかったままエンディング… 「大塚」を貶めたことで「桐子」の気持ちは晴れたのかなぁ。
映画でも感じたのですが、、、
「桐子」のために真相を探ろうとする編集者「阿部」は、事件を解決することができず、「桐子」の復讐に協力するわけでもないので、ちょっと中途半端な役どころな感じがしましたね… 「桐子」と「大塚」の橋渡し役ということですかね。
事件が解決せず、冤罪として二人の人間が刑に処されるという、珍しい展開の物語でした。
以下、主な登場人物です。
「柳田桐子」
北九州のK市に住むタイピスト。
少女のような稚さの残る顔立ちと強い視線が特徴的な若い女性。
「大塚欽三」
丸の内二丁目に事務所を構える、日本でも指折りの有名な弁護士。
「河野径子」
銀座の高級レストラン「みなせ」の女性経営者。
「阿部啓一」
総合雑誌の若い編集者。
「奥村」
大塚弁護士事務所の事務員。
「信子」
銀座のはずれにあるバー「海草」の女給。
「杉浦健次」
「みなせ」の給仕頭。
「山上武雄」
杉浦健次の知人の青年。
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『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』、『時間の習俗』に続き「松本清張」作品です。
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殺人容疑で捕えられ、死刑の判決を受けた兄の無罪を信じて、「柳田桐子」は九州から上京した。
彼女は高名な弁護士「大塚欽三」に調査を懇願するが、すげなく断わられる。
兄は汚名を着たまま獄死し、「桐子」の大塚弁護士に対する執拗な復讐が始まる……。
それぞれに影の部分を持ち、孤絶化した状況に生きる現代人にとって、法と裁判制度は何か?を問い、その限界を鋭く指摘した野心作である。
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雑誌『婦人公論』の昭和34年7月号から翌年3月号に連載された作品、、、
数年前に「山口百恵」主演の映画化作品を観たことがありますが… 薄幸な運命を気丈に生きる女性「柳田桐子」役を演じる「山口百恵」の印象が強過ぎて、物語の展開が記憶から薄れている感じなので、映画のシーンを思い出しながら本作品を読みました。
北九州のK市で発生した、高利で金貸しを営む老婆「渡辺キク」の強盗殺人事件で、被害者から金を借りていた教師「柳田正夫」が、犯人として検挙された、、、
「柳田」は、殺害現場での借用証書の窃取は認めたものの、殺人に関しては無罪を主張する… しかし、殺人の物的証拠が揃い十分な動機も認められた状況の中で、「柳田」の主張は受け入れられず、国選弁護人も状況を覆すことはできなかった。
「柳田」の無罪を信じる妹「桐子」は、兄の無罪を立証するために丸の内に事務所を構える高名な弁護士「大塚欽三」に弁護の依頼を申し出るが、他の事案で多忙なことや、「桐子」が弁護士費用の支払い能力がないことを理由に拒絶される、、、
やがて、無実を訴えながら「柳田」は獄死し、獄中で非業の死を遂げた兄の復讐を遂げる為に「桐子」はある行動に出る。
弁護を受けてもらえなかったことへの逆恨みという感じもしますが、、、
「柳田正夫」と「桐子」の兄妹のエピソードを起点に、誰もが冤罪に陥れられる可能性があり、有能な弁護士を高い報酬で雇わないと無罪を証明できない… という法や裁判制度の問題点を指摘した野心作ですね。
弁護士「大塚」の愛人「河野径子」に殺人の容疑がかけられた際、「径子」のアリバイを唯一証明できる立場にあった「桐子」は『「径子」には会ってない』と偽証、、、
しかも真犯人の残した証拠品のライターを隠蔽し、更に「径子」が落とした手袋を死体の横に置く等の工作を行い、果てには「大塚」から真実を語って欲しいと頼み込まれると、「大塚」を自宅に誘い込んで肉体関係を結び、『「大塚」から偽証を迫られたうえ、肉体関係を強要された』と偽証… 自分の身体を犠牲にしてまで信念を貫き「大塚」への復讐に徹する「桐子」の姿勢は圧巻。
でも、結局、二つの殺人事件で犯罪を犯した真犯人(左利きと思われることから「杉浦健次」の友人「山上武雄」の犯行と思われるが…)は逮捕されず、容疑は「正夫」(獄死)と「径子」にかかったままエンディング… 「大塚」を貶めたことで「桐子」の気持ちは晴れたのかなぁ。
映画でも感じたのですが、、、
「桐子」のために真相を探ろうとする編集者「阿部」は、事件を解決することができず、「桐子」の復讐に協力するわけでもないので、ちょっと中途半端な役どころな感じがしましたね… 「桐子」と「大塚」の橋渡し役ということですかね。
事件が解決せず、冤罪として二人の人間が刑に処されるという、珍しい展開の物語でした。
以下、主な登場人物です。
「柳田桐子」
北九州のK市に住むタイピスト。
少女のような稚さの残る顔立ちと強い視線が特徴的な若い女性。
「大塚欽三」
丸の内二丁目に事務所を構える、日本でも指折りの有名な弁護士。
「河野径子」
銀座の高級レストラン「みなせ」の女性経営者。
「阿部啓一」
総合雑誌の若い編集者。
「奥村」
大塚弁護士事務所の事務員。
「信子」
銀座のはずれにあるバー「海草」の女給。
「杉浦健次」
「みなせ」の給仕頭。
「山上武雄」
杉浦健次の知人の青年。
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