隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

普通の女性・・・、「ハーパー・リーガン」 (「普通」は便利な言葉だけど)

2010年09月26日 12時01分28秒 | ライブリポート(演劇など)
「ハーパー・リーガン」 
 (2010.9.24 at パルコ劇場)

  原作 サイモン・スティーブンス
  演出 長塚圭史
  出演 小林聡美/山崎一/美波/大河内浩/
            福田転球/間宮祥太朗/木野花


 「
ハーパー・リーガン」、長塚圭史演出で小林聡美・・・となったら、私としてはとりあえず観ないわけにはいきません。
 会場は長塚人気もあるだろうけど、小林聡美ワールド、好きなんだろうなあ、わかるんだろうなあ、という30代女性の一人観劇あるいは友達と観劇・・・というお客さん、多かったです(そういう層は、どこの劇場に行っても多いんですけどね。元気だし)。


★ハーパーはあなた?
 普通の女性なのです、ハーパーは。で、おかれた状況もごく一般的、というか、自分と似たところを探すのがけっこう簡単。 
 そういう女性(夫一人、娘10代後半の反抗期)が父親の危篤の知らせに動揺し、「愛していると伝えてないんです」と上司に休暇を申請しているところで幕があく。
 結局休暇は許されず、夫とも娘とも微妙に食い違う会話の中、彼女は「いつのまにか」空港まで行き、父のもとにかけつけ、死に際に会えず・・・。
 心が定まわないまま、パブで知り合ったハイテンション危ない男から革ジャンを取り上げて首をグラスで殴ったり、出会い系で呼び出した中年の男と一夜を共にしたり・・・。
 たった二晩だけれど、ちょっとおすましで型にはまっていたハーパーが一歩(半歩?)踏み出して家に戻ってくる。
 敬愛していた父親の違う面を知り、長いこと嫌っていた母親と何年ぶりかで言葉をかわし(キツイ言葉の数々)、戻ってきた彼女は、夫と向き合い、娘と語り、たぶん同じような生活をちょっと変化した心を抱えて生きていくんだろう・・・と思わせて、静かに幕がおりる。


★向き合うこと
 二晩で何が変わる?とも思うのです。どーなの?って
 でももともとハーパーは、体のどこかに、心のどこかに、「ちょっとどうにかしたい」何かを抱えていたのだろう。そして、そういうところもごくごく一般的。みんなそういうもの、どこかに隠しているし。あるいは気づかないふりしているし。
 でも短い時間でも、あるきっかけ(ハーパーの場合は父親の死)で、高く見えていたハードルがびっくりするくらいの小さな力で飛び越えられちゃうことがある。そして世界が少し違って見えたりする。

 ハーパーと母親の言葉のやりとりがものすごくリアルでシビアで、なんだかハーパーに代弁してもらったような気になったけど、娘と対峙するハーパーは自分が母親に投げつけた言葉をそのまま、もっと激しい口調で娘から浴びせられる。 
 そういうふうに単純にちゃかして言ってはいけないんだろうけど、母と娘の歴史は繰り返されるのかしら。やっぱり娘は怖い・・・。

 夫はかつて公園での幼児の写真をwebサイトにUPして、通報を受け「性犯罪者リスト」に名前が記載されている。ごくごく普通の(普通って言葉は便利だ)穏やかな男だけれど、それからは職を失い、世間の目を逃れて一家でこの街にうつってきたが、リストに名前があるせいで職を得られず、一家の家計はハーパーが担っているという状況。
 旅に出る前のハーパーは「本当は無罪なのよ」と娘にも言い続け、夫を信じている妻なのだが、帰ってきたハーパーは娘に言う。
 「本当に無罪だったって言える? どうなのかしら。もちろん彼はもう法は犯さないでしょう。そういうことはしないと信じているわ。でもあのときはどうだったのかしら。彼が楽しんでいなかったと言える?」
 夫の性癖はともかく(というより、そういうことも受け止めて)、それでも「ここに帰ってきたかったの」と言えるくらいに、ハーパーはやっぱり二晩で変わったと言えるのかもしれない。

 ハーパーが戻ってきたその次の朝、一家は庭で朝日を浴びながら朝食を囲む。夫が未来を語る。田舎で暮らし、そこに娘がボーイフレンドを連れて帰ってくる・・・。
 ゆったりした時間の中で、それは一家の、そしてハーパーの明日を暗示しているのか?
 最初の場面で、ハーパーは迫ってくる壁に戸惑い抵抗を試み、彼女の心の内を観客にイメージさせるのだが、この最後の朝の場面のすぐ前のところで、夫もまったく同じ感じで壁にはばまれる。
 これは何を表しているのか。夫も何かをくぐり抜けたのか? そうしようとしているのか?


★役者たち
 セリフの応酬もあるけれど、全体の印象としては、ゆったりした時が流れ、「間」がポイント。それがときどき、スムーズな流れをブツブツを切って、違和感を感じさせる。それは演出の狙いなのか。
 小林聡美は、平凡な女性の小さな変化をおおげさに強調することなく自然に演じる。だからときどき、この人はどこが変わったの? かわらなかったの?と思わせることがあるけれど、自分でも戸惑うほどの言葉の発射や、独白に近いセリフで魅せてくれる。
 娘サラの
美波。小気味いいセリフがすごく魅力的。華があるなあ。サラの役は得したな、と思う。
 オーディションで選ばれたという、
間宮祥太朗。きれいでした。大人の女性の心情なんか何にもわかっていない若い若い青年を演じてぴったり。
 ベテラン、
山崎一大河内浩(この人は人力舎所属なんですね)はもう安心して見ていられる。
 
木野花さんの母親の言葉が胸に残っています。ハーパーは実はこの母親に帰りつきたかったのかしら? いやいや、そんなふうには思いたくない(それじゃ、単なる湿ったドラマになってしまう)。
 そうそう、こんなところで
転球さんに会えるとは思いませんでした。ムカつくくらい言いたい放題だったけど(笑)、結局革ジャン盗られて、ライングラスで首切られて救急車だったようで・・・。

 あなたも旅に出てみません? 観光じゃなく、ただ誰かに会うためだけの・・・。



 政治や外交は「正義」だけではやっていけないってことか。
 新聞もテレビもいろいろ言ったり書いたりしているから、今回の対応が是だったのか非だったのか・・・。
 弱腰だったのか、外交下手だったのか・・・。
 それにしても、景気の回復の一端でもかの国に頼ってはいけないような・・・。

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