☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『月曜日のユカ』(1964)

2017年10月12日 | 邦画(クラシック)
『月曜日のユカ』(1964)

監督:中平康
脚本:斎藤耕一、倉本聰
音楽:黛敏郎 
加賀まりこ, 中尾彬, 加藤武, 北林谷栄, 山本陽子

【作品概要】
舞台は横浜。18歳のユカ(加賀まりこ)は、初老のパトロンと同世代の恋人を持ち、誰にでも体を開くが、キスだけは決して許さない。そして、パトロンとの逢瀬はいつも月曜日だった…。 男を悦ばせることのみが人生の生甲斐という“妖精”のような女の姿を描いたドライで刹那的な青春ラブストーリーの秀作。(日活より)

【感想レビュー】
ようやっと観れた〜、な1本。
BS12トゥエルビの「銀幕の大女優~BS12人の女~」の特集の録画です


もう、ひたっすら加賀まりこさんが可愛いくって可愛いくって、お美しい…

けっこう大胆に肌を露出しているけれど、変にイヤらしくないし、安っぽくならなくて、凛としたイメージは終始崩れません。

しっかりと引いたアイライン、長い睫毛、ぷっくりした唇、ボリューミーな髪型
華奢なプロポーションに60年代のファッションがとっても映えます👗

ヌーヴェルヴァーグの手法のモノクロ映像は、どこまでもスタイリッシュ
古さどころか新しささえ感じます。

横浜のロケーションも良くて、どこを切り取っても様になっています
現代の視点で感じるレトロさと、その当時の新しさ加減がたまらないっ!

波止場や海上の船のシーンも解放感があって、映画を観ながら風を感じました

ラストのシュールさも、しょせんはこんなものデショ、というクールな感じで良かったです


中尾彬さんに花びらが舞うシーンは、近年のバラエティーのイメージが脳裏をかすめるとちょっとこそばゆいのです
いやはや、中尾さん、格好良かったです!


同年公開の篠田正浩監督の『乾いた花』の加賀まりこさん演じる冴子が、『月曜日のユカ』のユカのその後のかも…などと妄想して楽しんでおります…




『独裁者と小さな孫』(2014)

2017年10月09日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『独裁者と小さな孫』(2014)

監督・脚本:モフセン・マフマルバフ、マルズィエ・メシュキニ
音楽:グジャ・ブルデュリ、タジダール・ジュネイド

【作品概要】
年老いた独裁者(ミシャ・ゴミアシュヴィリ)による支配が続いていた国で、大規模なクーデターが勃発。幼い孫(ダチ・オルウェラシュヴィリ)と一緒に逃亡した独裁者だったが、政権維持を理由に無実の人々を手に掛けてきたことから激しく憎まれており、変装することを余儀なくされる。孫にも自分が誰であるかを決して口に出さぬよう厳しく注意し、追手などを警戒しながら海を目指す。さまざまな人間と出来事に出会う中、彼らは思いも寄らぬ光景を見ることになる。(シネマトゥデイより)

【感想レビュー】
年明けに観てレビューをアップするの失念しておりました…


噂に違わぬ素晴らしい映画で、テンションがグンと上がっております

大統領が着ている威厳に満ちた軍服一式が、まるでハロウィンの仮装のように軽々となっていく過程は、シニカルで見応えたっぷりです。
“陛下”、“殿下”という呼び名も、宮殿や軍、お付きの者が居なければ、もう裸の王様状態に…。
味方に次々と裏切られた大統領は、もはや邪魔なだけの重たい軍服を脱ぎ捨て、押し入った民家で不当に衣服を搾取する。

次々と衣服を変え、旅芸人になりすまし逃亡する様子は、追手や民衆の目を欺くという自然な展開であると同時に、映画的な魅力を放つ。どの瞬間も、映像から目を離したくない、と思わせる吸引力がありました。
『カンダハール』にも感じましたが、このカットは今後も忘れられないだろう、という決定的な瞬間が幾つもありました

大人と子どものロードムービーはたくさんあるけれど、大統領とその孫という立場は斬新だなぁ!と思いました😳。

逃亡の過程で、大統領が拳銃を突き付け、衣服や金目のものを搾取…いや、強盗していく様子でいつも印象的だったのは、大統領の眼光の鋭さと生き抜く力でした。そこからは、1代で成り上がった者だけが持つハングリー精神を感じさせます。孫の無邪気で優しい目元には、育ちの良さがあり、対照的に描かれていました。
実際、独裁政権が勝手に世襲制にして専制国家のようになっていく例は、世界を見渡してもよくあります。
この物語の中で、2人の目がどのように変化していくのか、も見どころでした。


また、土着的な音楽が素敵でした
音楽のあるシーンと、ないシーンの対比も印象的でした。


相乗りの車中シーンでは、ウィットに富んだ乗客の会話が繰り広げられ、貧富の差が伺えます。

この人達は、あの人達よりもマシで、自分達はその人達よりもマシである、というようなマインドでは、永遠に解決の糸口は見えてこなそうだけれども。。

大統領側だった軍隊が、革命後に民衆側と一緒になって、大統領を断罪するシーンでも、政治犯だった男が、それを指摘する。

『政治に1つ悪いことがあったら、その背景にある文化には10以上の問題があると思ってください』、とマフマルバフ監督は2016年の東京フィルメックスで話していました。

そういったことが、映画としてもとても面白いこの作品の文脈においても語られています。すべて両立するって凄いことですよね

また、拷問についての描写も、マフマルバフ監督の著書にある自身の経験に基づいていることを感じましたし、多くの事を主体的に体験してきたマフマルバフ監督が、このように包括的な視点を持ちえていることに、ただただ胸が熱くなります。


人々は、一瞬にして態度や言動、思想を変える。
それはなぜなのかー。


監督の映画、もっと観たいですけど、レンタルされていないものが多く残念です
ソフト化もあまりされていないのかな…。

特集とかあったら、是非行きたいです





『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』

2017年05月03日 | 邦画(クラシック)
『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(1960)
監督:松林宗恵
出演者:夏木陽介、佐藤允、上原美佐、鶴田浩二、
加東大介、三橋達也、小泉博、宝田明、池部良、小林桂樹、三船敏郎
音楽:團伊玖磨
【作品概要】
東宝初のカラー・ワイドによる戦争映画で、“太平洋”の名を冠した三部作の一作。真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦での敗北までを描く。

【感想レビュー】
錚々たる顔ぶれの映画でした!忘れかけた頃にネットレンタルで届いたのですが、どうやら池部良さんお目当てでリストに加えていた模様…


この錚々たる顔ぶれは、各々が実にあっさりとした出演シーンで、それがまたこの映画の豪華さの所以なのです、きっと。

客観的な描写も良くて、空中戦における日米の攻防なんかにも、軍人同士の矜持が垣間見えます。

戦闘機にて、結婚をするとの報告を、先輩の上官にするシーンなどには、民間人と軍人を繋ぐリアルさがありました。
海軍のプライドなんかも垣間見えたり。。

スター級の俳優陣のあっさりした登場シーンぶりは、当時の命の儚さをさえ物語ります。

時代の空気は恐ろしい、としみじみと感じ入りました。




『セックスと哲学』(2005)

2017年01月11日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『セックスと哲学』(2005)


監督・脚本・編集:モフセン・マフマルバフ
製作国・地域 フランス,イラク,タジキスタン
出演者:ダレル・ナザーロフ/マリアム・ガイボヴァ/ファルザナ・ベクナザーロフ/タフミネ・エブラヒモーヴァ/マロハト・アブドゥロエヴァ

【作品概要】
詩人のジョーンは、4人の恋人を呼び出す。他の3人と顔を合わせ全てを悟った女たちは、各々の愛を回想していく。
彼らはどのように出会い、心を通わせたのか?
どうして愛は終わってしまったのか?
なぜ愛は永遠ではないのか?
すべての愛が終わった今、彼の中にはいったい何が残されたのか…?
イスラム諸国に生きる人々の姿を皮肉や諧謔を交えて寓話的に描き世界的に高い評価を受けるマフマルバフ監督が、「愛とは何か?」という、あまりに根源的な問いに真正面から向き合った意欲作。 (DVD より)

【感想レビュー】
冒頭のシーンから、衝撃でした😳

車中のフロントガラス手前に並べられた蝋燭の数々。とっても素敵でした

そして、赤や青、黄、白、黒…などの劇中の色彩の豊かさが印象的でした
監督についての著作『闇からの光芒 マフマルバフ、半生を語る』を読むと、小津安二郎監督についてのくだりがちょこちょこあるので、劇中の赤色の使い方なんかは、オマージュもあるのかしらん、などと思いつつ観ました。

また、観念的な台詞が素敵です。タイトルの強烈さとは裏腹に、直接的なシーンは一切出てきません。その代わり、暗喩的な表現の多様さよ…!!ブラボー!!…な感じです
むしろその方が官能的だわ…と思いつつ…。


走りながらの車中のシーン、甘くて幸福な時間を計るストップウォッチ、溶けていく蝋燭。それらが人生における時間の経過を表しています。劇中の台詞には、“1分1秒の積み重ねが人生”なのだ、とも。


まじめなものにろくなものはない

偉そうな意見はどれもへりくつだ

人間は孤独だ

孤独とは

人間の持つ運命だ
(劇中の台詞から)


胸に沁みます…。

人生を彩る恋も、春や夏を過ぎ秋を迎え、晩秋がやってきて、やがて冬が訪れる。

でも、雪に覆われた屋根屋根の中を赤い傘が行くシーンは…、ため息ものでした


観れて良かった…



『蜘蛛の瞳』(1998)

2016年12月30日 | 邦画(1990年以降)
『蜘蛛の瞳』(1998)

監督・脚本: 黒沢清
脚本: 西山洋一
撮影: 田村正毅
音楽: 吉田光
出演: 哀川翔/ダンカン/大杉漣/菅田俊/寺島進/中村久美/佐倉萌/梶原聡

【作品概要】
「蛇の道」に続いて哀川翔主演で描いたバイオレンス・アクション。

【感想レビュー】
『蛇の道』に続いて観ました。面白くてゲラゲラ笑いながら観ました
とくに大杉漣さんのシーン!!
台詞とか間とか、ゼッタイ笑かそうとしてる…!
大杉漣さんが車に乗りながら、歩道を歩いている哀川翔さんに話しかけるシーンも、ゲラゲラものです。ヒーヒーお腹を抱えて観ました🤣🤣🤣

ダンカンさんとか大杉漣さんとか寺島進さんとか、北野映画によく出る俳優さんが多いというのもありますけど、特に説明されず唐突に色々と展開されていく所とか、拳銃のシーンとか、追い掛けごっこをする幾つかのシーンのナンセンスぶりとか、『蜘蛛の瞳』には、ところどころ北野映画に通ずる香りを感じました
こういうのクセになるし、なんだか好きなのですけども


また、ローラースケートとかフリスビーの動きもなんだか怖い。それ自体は別によいのだけど、1つの画面、シーンに全く別の何かをしている人達が居るということが、なんか気になって仕方ないアクセントとして使われていて…

ラストも、あれ…!??ここってそこと繋がっていたの…??!…な感じも、狐につままれたままに終わるところがたまらなく好きです

とにかく面白かった