『SELF AND OTHERS』(2001)
佐藤真監督、西島秀俊さん(声)出演。
【STORY】
牛腸茂雄(ごちょう しげお)という写真家がいた。
1946年11月2日、新潟県加茂市穀町に生まれた彼は、3歳で胸椎カリエスを患い、36歳でこの世を去るまでの間に、『SELF AND OTHERS』を初めとする3冊の写真集を自費出版している。
映画は、人間を撮ることに想いをかけた彼の表現世界を、撮影地や彼が残した写真や手記、手紙、草稿などと照らし合わせながら見つめ直していく。
(Movie Walkerより引用)
【感想レビュー】
凄い映画を観てしまいました。
観終えた後に、しばらく心臓が震えるほどに。
不謹慎かもしれませんが、“恐ろしい”のです。
視られているような気さえしてしまうのです。
背筋がゾクッとする、そんな言葉では足りなくて、もう、胃の底がヒンヤリするような…感じなのです。
作品は、ドキュメンタリーなのにも関わらず、牛腸茂雄さんの家族のインタビューなどは、一切ありません。
ただ、ただ、彼の作品を映し続けたり、彼の写真のゆかりの地を映したり。
彼の姉に宛てた手紙や手記を読み上げたり…。
この手記がまた、非常に哲学書のような時もあり…。
この感じ…学生の時に読んだ(読まされた)モーリス・メルロー=ポンティのような感じなのです。
けれども、彼の写真は、とっても温かく、シンプルで力強いのです。
被写体の人物達はこちらを見つめているのですが、ファインダー越しでない感覚にさせられます。
それぞれの眼差しは、牛腸茂雄さんに向けられたものなのでしょうが…。
モノクロのその写真に写っている人物達は、シャッターを切った次の瞬間、もう動き出して、それぞれの生活に戻っていく様が目に浮かぶのです。
そうすると、モノクロなのに、とっても色鮮やかに感じるのです。
そして、西島さんの声。
ナレーションの為の、“声”。
姉に宛てたいくつかの手紙を読む、“声”。
手記を、牛腸茂雄さんの心を代弁するかのように読む、“声”。
牛腸茂雄さんの心の状態の変遷を浮かび上がらせる、トーンや調子で、実に見事に作品に溶け込んでいます。
さらに、牛腸茂雄さんご自身がカセットテープに録音した“声”。
その内容。
誰に聞かせるとも、聞かれるとも、分からない段階でのその録音…。
生々しく、耳に残ります。
あたかも、そばで呼び掛けられているようにさえ感じます。
こうして、牛腸茂雄さんを直接知らなくても、彼の作品を観て、彼に思いを馳せる事が出来るのです。
映画は、1本の木の長映しに始まり、1本の木の長映しに終わります。
ただ、そこに在る、と言わんばかりに。
【追記】
観てから数日経っても、毎日この映画の事をふと思い出しては考えてしまいます。
『SELF AND OTHERS』には、夭折の写真家を追憶する、懐かしむ…あるいは感傷に浸るような類では無い何か…。
牛腸さんの本質に挑む気概のようなものを感じるのです。
彼の本質を垣間見て、とても恐ろしかったのです。
畏怖のようなものを抱きました。
彼の作品はとてもさり気ないけれど、時が経った今でも尚、そこから新鮮な温度を感じましたし、今は亡き彼に会ったような気さえしました。
もしかすると、牛腸さんが撮った方々の写真を見ているうちに、その方々の眼差しを通して、私も牛腸さんに会ったような感覚になったのかもしれません。
こういうドキュメンタリー映画があるんだな!!! …と驚愕した作品になりました。
西島さんの映画を鑑賞する旅の、記念すべき52本目(あと1本…‼)に観たのがこの作品で、とっても嬉しいです
佐藤真監督、西島秀俊さん(声)出演。
【STORY】
牛腸茂雄(ごちょう しげお)という写真家がいた。
1946年11月2日、新潟県加茂市穀町に生まれた彼は、3歳で胸椎カリエスを患い、36歳でこの世を去るまでの間に、『SELF AND OTHERS』を初めとする3冊の写真集を自費出版している。
映画は、人間を撮ることに想いをかけた彼の表現世界を、撮影地や彼が残した写真や手記、手紙、草稿などと照らし合わせながら見つめ直していく。
(Movie Walkerより引用)
【感想レビュー】
凄い映画を観てしまいました。
観終えた後に、しばらく心臓が震えるほどに。
不謹慎かもしれませんが、“恐ろしい”のです。
視られているような気さえしてしまうのです。
背筋がゾクッとする、そんな言葉では足りなくて、もう、胃の底がヒンヤリするような…感じなのです。
作品は、ドキュメンタリーなのにも関わらず、牛腸茂雄さんの家族のインタビューなどは、一切ありません。
ただ、ただ、彼の作品を映し続けたり、彼の写真のゆかりの地を映したり。
彼の姉に宛てた手紙や手記を読み上げたり…。
この手記がまた、非常に哲学書のような時もあり…。
この感じ…学生の時に読んだ(読まされた)モーリス・メルロー=ポンティのような感じなのです。
けれども、彼の写真は、とっても温かく、シンプルで力強いのです。
被写体の人物達はこちらを見つめているのですが、ファインダー越しでない感覚にさせられます。
それぞれの眼差しは、牛腸茂雄さんに向けられたものなのでしょうが…。
モノクロのその写真に写っている人物達は、シャッターを切った次の瞬間、もう動き出して、それぞれの生活に戻っていく様が目に浮かぶのです。
そうすると、モノクロなのに、とっても色鮮やかに感じるのです。
そして、西島さんの声。
ナレーションの為の、“声”。
姉に宛てたいくつかの手紙を読む、“声”。
手記を、牛腸茂雄さんの心を代弁するかのように読む、“声”。
牛腸茂雄さんの心の状態の変遷を浮かび上がらせる、トーンや調子で、実に見事に作品に溶け込んでいます。
さらに、牛腸茂雄さんご自身がカセットテープに録音した“声”。
その内容。
誰に聞かせるとも、聞かれるとも、分からない段階でのその録音…。
生々しく、耳に残ります。
あたかも、そばで呼び掛けられているようにさえ感じます。
こうして、牛腸茂雄さんを直接知らなくても、彼の作品を観て、彼に思いを馳せる事が出来るのです。
映画は、1本の木の長映しに始まり、1本の木の長映しに終わります。
ただ、そこに在る、と言わんばかりに。
【追記】
観てから数日経っても、毎日この映画の事をふと思い出しては考えてしまいます。
『SELF AND OTHERS』には、夭折の写真家を追憶する、懐かしむ…あるいは感傷に浸るような類では無い何か…。
牛腸さんの本質に挑む気概のようなものを感じるのです。
彼の本質を垣間見て、とても恐ろしかったのです。
畏怖のようなものを抱きました。
彼の作品はとてもさり気ないけれど、時が経った今でも尚、そこから新鮮な温度を感じましたし、今は亡き彼に会ったような気さえしました。
もしかすると、牛腸さんが撮った方々の写真を見ているうちに、その方々の眼差しを通して、私も牛腸さんに会ったような感覚になったのかもしれません。
こういうドキュメンタリー映画があるんだな!!! …と驚愕した作品になりました。
西島さんの映画を鑑賞する旅の、記念すべき52本目(あと1本…‼)に観たのがこの作品で、とっても嬉しいです