kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

フォードvsフェラーリ(IMAX版)

2019年12月21日 | ★★★★☆

映画館:バルト11(IMAX試写会)

のっけから言ってしまうが、この映画、タイトルと裏腹に(原題も「Ford v Ferrari」)自動車メーカーの映画ではない。もっと言うとレースの映画でさえ、ない。実はこの映画、不器用な男の生き様の映画だ。

もちろん映画の舞台は、フェラーリ買収に動いた若き日のリー・アイアコッカ(演じるのは我らがミスター’70、ジョン・バーンサル)の失態から、フォードが意地をかけて挑んだルマン24時間耐久レース。

打倒フェラーリの特命を受けるのはマット・デイモンの元レーサーで、彼は優秀なエンジニアでレーサーのクリスチャン・ベイルに白羽の矢を立てる。
フォード社の全面バックアップを受け、二人の元には優秀なスタッフが集まり、新車フォードGT40がやってくる。この辺の描写は昔ながらのミッション達成ものを彷彿とさせ、ワクワクしてくる。

ただ、クリスチャン・ベイルは腕こそいいものの粗暴な言動が災いし、フォード社重役からは疎まれてしまう。そういった人間関係や技術面での課題をクリアしながら、クライマックスはもちろんルマン24時間耐久レース。

しかし、レースそのものやルールは深く解説されない。ピットクルーや交替ドライバーの描写もほぼゼロだ。(もっと言うと・・・)

その分、描かれるのは名車フォードGT40。ルマンでの走りっぷりを美しい映像と轟くエンジン音とともに、様々なアングルで見せつけられる。ただ、おそらくクルマ好きはもっと見たい描写があったんじゃないかと推測する。クルマ関係に疎いワタシでもそう思うのだから、たぶん間違ってないだろう。

監督の描きたかったのはレースでもクルマでもないのだ。で、最初に戻るのだが、力を入れて描かれるのはクリスチャン・ベイルの不器用な生き方。

日焼けに油まみれで目つきが悪く口汚い役だが、元々、陰湿な殺人者の役(アメリカン・サイコ、シャフト)の印象があるだけにしっくりとハマる。それでいて修行僧のようなストイックさも漂わせる。実はどの映画でも彼の役どころはあまり好きでない(いつまで経ってもブルース・ウェインには思えない)のだが、生きるのが辛いような表情と存在感は非常に印象的だ。

単にライバル・フェラーリとのレースだけでなく、大企業の論理にもすり潰されそうになりながら、個を保ちベストを追い求める姿がこの映画の本質。とても男っぽい骨太の映画だ。

もう一人の主役、マット・デイモンは彼を信頼し支えるイイ役なのだが、ベイルの前では霞んで見える。(彼の乗るコブラはカッコいい!)
ベイルを支える妻もいいのだが、個人的には父親の活躍を心から期待し、誇りにしている息子の姿にはじんわり来るぞ。

今回はIMAX試写会だったが、言うまでもなくがオススメ。






題名:フォードvsフェラーリ
原題:Ford v Ferrari
監督:ジェームス・マンゴールド
出演:クリスチャン・ベイル、マット・デイモン、ジョン・バーンサル


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