金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

王子の訪問

2009-04-18 16:50:30 | 燃えだす人
-ふたたびアメリカ・サンフランシスコの路地- 

お世辞にもかわいいとは言えない風体の犬が
フィールドの周囲をうろついていた。
さきほどかまきりに吹き飛ばされ気絶した者に
近づきにおいを嗅いだり、服の袖を引っ張ったり
していたが、まもなくまるでフィールドが見えて
いるかのようにその入り口に座った。

「こたつ。らいぞう。ほらっ、あれが有名な
 おんぶかまきりだ。かまきりがバッタをおんぶ
 してるだろう。
 あれっ、でも本来はバッタがかまきりをおんぶ
 しているのではなかったかな。」

そう言って、犬がふたたび目をやった時、そこには
バッタがかまきりをおんぶした姿があった。

「やあやあ、お久しぶりです。地球王子。」
「そちらこそ元気ですか。名誉将軍と名誉隊長」

お世辞にもかわいくない犬はかまきりとバッタに導かれて
フィールドにはいっていった。

 *************

「将軍。地球防衛隊情報部の精鋭たちがみごとに
 気絶されられている。
 彼らはここで最近発生している人の発火事件
 を捜査していたのだが何が起こったのだい。
 この騒ぎで周辺の虫密度が高まってきている。」

「王子、お騒がせしましてすみません。
 実はカノン様つき童子のおひとりが人に生まれて
 いる最中に身体の調子がおかしくなってしまい、
 カノン様がフィールドに呼び寄せたところです。
 このフィールドを防衛隊に知られるわけにいかず、
 しかたなく無力化しました。
 童子は身体が燃える奇病にかかったようです。」

「それは大変だったな。それより、
 焦げ臭い匂いがたちこめているが
 その童子は今どこに。」

王子はカマキリが鎌で指した先を見た。
そこにはもう形もなくなった白い灰の山があった。

<2008年1月27日発表稿の見直し>
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ティーブレイク 1

2009-04-18 16:30:13 | 燃えだす人
ティーブレイク1

物語の世界設定と登場人物

<星から星への魂(ソウル)移住>

 地球には昔滅んだ星に住んでいた様々な生き物が
 魂というかたちで移住しており、地球の既存生物に
 適応し生まれかわり暮らしている。
 移住した代表が犬型人種と猫型人種。文字どおり、
 犬と猫が進化して人間になった星からきた。
 彼らは移住当初、猿から進化した人間になじめず、
 地球既存の犬や猫として生まれる選択をしたが
 今は人間に生まれる者が増えている。
 他の星から移住してきた魂は地球の輪廻転生システムに
 しっくり適合できず、生まれかわったときに前世の
 記憶がかすれることなくはっきり覚えている。
 
<地球防衛隊>
 古代から地球を侵略や攻撃から守ってきた組織。
 地球の自然霊と生まれ変わるまでの人間(魂)と
 で組織している。
 これに、他の星から移住してきた犬型人種、猫型人種の
 魂が加わる。
 地球には最終防衛手段として地球防衛軍があるが、その
 存在は地球防衛隊でもひとにぎりの者しか知らない。
 
<登場人物>

地球王子
 地球を形づくった最高自然霊から生まれた高位の
 自然霊。あらゆるものを意のままに作ったり
 消したり、自然の摂理、法則をコントロールできる。
 今回は、地球の自然霊の長として防衛軍を率いる。
 親である大地球神とは素直にコミュニケーションが
 とれない。自分で作り出した地球携帯で連絡をとる
 ことが多い。

風神、雷神
 神とあがめられるほどすさまじいちからをもつ自然霊。
 地球王子が生まれた時から従者としてそばにいる。
 王子は風神をこたつ、雷神をらいぞうと呼ぶ。

カノン
 大宇宙神によって創られた優れた魂を教育し導く存在
 地上でたびたび人と接触し、多くの伝説を残す。
 その結果、地上では観世音菩薩信仰が生まれた。
 高い次元に存在し、この世界とはフィールドにおいた
 分身を介してやりとりしている。
 フィールドは地球防衛軍の本営としても使われ
 地球防衛軍の作戦遂行に大きな役割を果たしている

童子
 カノンの目にかなった上級霊たち。
 カノンにつきそっているが、同等の悟りは得ておらず、
 分身と交流するのみ。
 カノンは肉体とは縁のないピュアな精神存在であり、
 10人の童子がシンクロすることにより少女のような
 外観をまとう。

かまきりとバッタ
 地球防衛軍の伝説に称される2匹。
 名誉将軍と名誉隊長とたたえられ、古来からカノンの
 持つフィールドの中に住んで世話をしている。
 どうしても将軍のほうにスポットがあたりがちで
 隊長自身もひかえめなタイプなので影が薄くなり
 がちだが、隊長はフィールドの水先案内人をしており
 カノンの信頼は厚い。とにかく飛ぶことが好きで
 バッタ内では、月まで飛んだ唯一のバッタとして名高い。

ビトロス
 前シリーズ「天空の戦い」で登場した犬。
 その魂は壊滅した星から地球にやってきた犬型人種。
 ひょんなことから地球王子一行と行動をともにするはめ
 となったが、最終的には、壊滅した星の魂そのものが
 ビトロスの魂と融合していることがわかった。
 今は地上で人として生まれかわる決心をしている。
 犬の時の外見はお世辞にもかっこうはよくない。

<2007年10月5日発表稿の見直し>
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発火

2009-04-12 18:56:53 | 燃えだす人
薄明かりの先は別世界が広がっていた。
彼は一歩あゆむごとにその場所での記憶を思い出していた。
元はこのフィールドの主に仕える童子のひとりで、
地上で人間に転生していた時、事件に巻き込まれたのだ。

彼は主の名を思い出し呼んだ。
「カノンさま」

しばらくして重い口調の声が応えた。
「さきほどからお前の身体に生じている異常を調べている。
 悪い予感がしたので、人間に転生中のお前をここに
 引き寄せたのだが、こんな身体になっているとは。」
「見た目は変わらないが、体内の水分がかなり減っている。
 生体組織が作り変えられ、炭のように変わろうとしている。
 火をつけたら引火してしまうだろう。
 生体ウイルスが使われたようだ。」
カノンが彼に次の言葉をかけようとした時、彼は熱気を感じた。
ふと目をやると、自分の手が発火して燃え出していた。
「ああ、熱い。助けて」彼は絶叫した。

「気をしっかり持ちなさい。お前の身体は全身が石炭化し
 すでに痛みを感じることも無くなっている。
 あたふたすることで、さらにウイルスを周りに広める
 たちの悪い生体テロだ。苦しいだろうけど落ち着いて。
 私が両手で抱えていてあげるから。」
残りの童子が彼を囲んで、火を消そうと水をかけたり
草で払ったりしたが普通の火ではないようで、あっという間に
全身に火がまわり、しばらくして灰となって粉々に散った。
カノンの両手のうちには抱えられた彼の魂が残った。
「大変な目にあったわね。しばらく安静にするといいわ。
 皆で看病してあげなさい。」
残る9人の童子らはいっせいに駆け寄り、彼をふとんに寝かせ、
医者、看護婦、祈祷、まじないなど9人9様に看病を始めた。

「さて、王子を呼ぶべき事態が起きているのかのう。」
カノンは、精神を集中し地球の隅々まで探索し始めた。

<2007年10月1日発表稿の見直し>
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逃げてきた童子

2009-04-08 20:31:57 | 燃えだす人
-アメリカ サンフランシスコ-

高層ビルが乱立する一角。
ビルの谷間を大勢の人が行き交う中を
ひとりの少年が流れに逆らって走ってきた。
あわてているようで人にぶつかりながら必死に走っている。
少年は追われていた。

少年は一帯をよく知っているようで、細い路地から路地へ
巧みにすりぬけようやく追っ手をまいた。

「危なくつかまりそうになったけどやっとまけた。」

少年は目前の路地の入口に薄明かりを見つけ笑みをうかべた。
その場所に一匹の虫がいるのを見てさらに安心した。

「ただいま」

少年は虫に挨拶し、路地の明かりへとはいっていった。

数分後、少年を追っていた集団はその場所にたどりついた。
「ここで痕跡が消えた。」
「消えるなんてありえない。まわりをよく探すんだ。」
チームとおぼしき集団は散開して捜索をはじめた。

彼らは地球防衛隊北米情報部の精鋭メンバー。
他の星で犬人類として生を受け、母星が壊滅した後
魂が地球に移り、地球人に転生した者たちで
犬本来の嗅覚と俊敏さを備えていた。

「チーフ、ここから先何か変です。」
「どうおかしいのだ」皆駆け寄ってきた。
「そこから私を見てください。ぼやけて見えませんか。」
「うむ。たしかに少しぼやけて見える。」
「よし、この先を調べろ。」

そう言って先に進もうとした瞬間、チーフは何かの声を聞いた。
それが何かわからなかったが、自然と視線が自分の足元にむいていた。
そこには一匹のかまきりがいた。

「こら、驚かすなよ。でもこんな都会のまん中にいるとはな。」

その後、全く予期せぬことが起こった。

「*****」(虫)

ーこの虫、何か言ったか?ー

そう心中でつぶやき終わらないうちに彼ら全員遠くまで
吹っとばされ気絶した。

「どうしました将軍。」
かまきりの背後からバッタが現れた。
「隊長。あの子は後をつけられていたようだ。
 入り口を閉じておくようにカノン様に進言してくれ。」
「わかりました。」
将軍と呼ばれたカマキリと隊長と呼ばれたバッタは
周囲を伺いつつ薄明かりの中に消えていった。

<2007年9月5日発表稿の書直し>
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草原の少女

2009-04-01 00:02:38 | 燃えだす人
-中央アジアの乾燥した高原地帯-

かすかに残る轍跡から道だとようやくわかる場所を女の子が
歩いている。彼女は家路を急いでいた。
1年間待ちに待った移動学校が来たので、
一週間泊まりこみで授業を受けていたのだ。
帰れば一日中家の手伝いにあけくれる日々が待っているのだが、
今の彼女は勉強した充実感で満ちていた。
手前の分かれ道で友達と別れ、自宅までの丘をくだるだけだった。

彼女が様子がおかしいことに気づいたのはそれからすぐだった。
乾燥した土地のはずが、足元にまとわりつくほど多くの
湿った草が生え、鮮烈な青草のにおいの中に立っていた。
ふと、夕暮れにしてはまわりがまだ明るいと思い、
遠くを見渡してみた。
東西南北どちらを見ても自分が今まで知らぬ風景だった。
「迷子になってしまった」
彼女は腰をぬかし座り込んだ。
「こんにちは」
背後から聞こえた声のほうに向くと、
今までどこにいたのか、自分と同い年くらいの少女が立っていた。
風変わりな服装をしている。
「よかったらいっしょに花摘みをしませんか」
花なんて今は咲いてないと言おうとした時、彼女は少女のうしろに
それは広い花畑が広がっていることに気づいた。
「私は家に帰る途中なんだけど実は道に迷ってしまったの」と言うと、
少女が「それならあとで家まで送ってあげるわ」と言ったので
彼女は、しばらく花摘みにつきあうことにした。

彼女はその少女の姿以外に奇妙な点に気づいていた。
しばらくして思い切って聞いてみた。
「さっきからずっと頭のあたりに見え隠れする小人さんたちの
話し声がが聞こえるんだけど、その人たちはいったいなになの」
「あっ、やっぱり見えていたのね。」
「皆、自己紹介しなさい。あら、私もまだ名前を言ってなかったわね」

その後、その少女がカノンという名で不思議な小人たちを連れて
いることを知った。
彼女はその後もしばらく広い草原で虫を追ったりと遊んでいたが、
気づくと自宅の前に立っていた。

彼女が自宅の目前で道に迷い、少女と花摘みした話をしても
誰も信じる者はいなかった。

<2007/9/2発表稿の書直し>
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