≪基礎中の基礎英語≫
年始めに英語でも勉強しましょう。
お題はRoHS指令における
「均質材料(homogeneous material)」
の意味。大企業でもわりと多く誤解してるんです。
RoHS指令は2011年に改正され、均質材料定義も同時に
改められてますが、それに気づかず、旧RoHS指令時の
古い基準を今も使い続けてるのが原因です。
意味を間違えると無価値な管理に陥り、手間と金の無駄に
なるだけでなく、気づかずに会社が傾くかもしれません。
欧州RoHS指令は、EUがFAQを提供しており、RoHS / FAQ の
2つのキーワードで検索すれば最新版が探せます。
まず2011/65/EUにあるHomogeneous material定義
homogeneous material’ means one material of
uniform composition throughout or a material,
consisting of a combination of materials, that
cannot be disjointed or separated into different
materials by mechanical actions such as unscrewing,
cutting, crushing, grinding and abrasive processes;
これをちゃんと訳せない人があまりにも多く、誤訳
が乱発されました。この影響は台湾や韓国にも及び
迷惑をかけています。中国はものすごく優秀なので
誤訳に惑わされませんでした。
EU発行2011/65/EU向けFAQのHomogeneous material定義
Homogeneous material is either
1. A material with a uniform composition throughout; or
2. A material that consists of a combination of materials,
that cannot be disjointed or separated into different
materials by mechanical actions such as unscrewing,
cutting,crushing,grinding or abrasive processes.
either A or B の構文ですね。
最近の人は辞書をひかずウエブサービスで訳します。
グーグル翻訳は元の英語がくずした文だととんでもない訳に
なりますが、今の人にはこのほうが説得力あります。
ほぼ良好な結果になりました。
全体に均一な組成を有する材料。またはとりとめのない、
またはそのような、緩め、切断、粉砕、研削、研磨処理
などの機械的作用により異なる材料に分離できない材料
の組み合わせで構成材料。
「とりとめのない」に相当する箇所は原文はなくそこだけ間違い
まとめると、均質材料は2種類存在する。
そのひとつは隅々まで均一な材料。uniformという表現が
用いられてます。もうひとつは複数の材料の組み合わせ
からなるもの。
リサイクル作業者が機械的作用、工具や工作機械を使って、
分離処理を進めた結果、これ以上はきれいに分離するのは
技術上不可能と判断する限界を目安とします。
実際には、分解費用とリサイクルで得られる金額を天秤に
かけて、損とわかったらそこで手を止めるでしょう。
2種類存在する理由は、実際の家電製品の中の構成を見たら
うなずけるはず。構成材は前者と後者に大別されます。
だから総称が均一ではなく均質と表現されました。
前者の例はプラスチックや金属板。後者ははんだなどで
部品搭載されたプリント基板とか。
そもそもRoHSはWEEEとのペア法律で、
廃棄家電の回収率アップと、リサイクル率アップ
を目的に作られた。従ってその目的とずれた
解釈は、誤訳や誤解が生んだものです。
多くの企業は、調達基準を見ると、均質材料について
前者の意味しか載せてません。RoHS改定に気づかな
かった会社、気づいたがそのままにした会社のいずれ
かに分かれますが、残念な気持ちです。
均質=均一、つまり
homogeneous = uniform とみなした訳。
どこでつじつまをあわせたらそうなるのでしょう。
外国語なのに完全に同義語と思い込むのは危険。
英和辞典で済ますのはまずい。英英辞典で単語の
持つ概念に迫らないと本当の意味にたどりつけない。
uniformは隅々までどこをとっても同じ。一方、
homogeneousは平均してほぼ同等という意味。
その按配はがっちり決められてなく幅がある。
クリスマスに販売してるスポンジケーキは
uniformだが、マーブルケーキや中にドライフルーツ
を混ぜたケーキはhomogeneousと表現できる。
* * *
企業名 と グリーン調達 で検索すると調達基準に
たどりつけれます。自分が株を購入してる会社の調達基準
で均質材料をどう定義してるか調べると面白いです。
よくあるのが、
機械的に分離できない均一物質
というもの。
これをおかしいと気づけないのは思考力が劣ってる証拠。
もともと均一なら分離は無意味だし、均一だから切断でき
ないかというと、簡単に切断できる場合がほとんど。
この定義はなぞしか提供してません。
頭脳が十分柔らかい人なら、これは考えることをあきらめた
人が、2つのケースの説明だと気づけず、強引にくっつけた
結果、意味不明な文章にたどりついたとわかるはず。
でも多くの業界人はこのフレーズを鵜呑みしたようです。
機械的に分離できない限界まで分離させた結果は、
おのおのの完全に均一な材料に分かれた状態となる
との理屈までいくとりっぱ。注意しても反対に
こちらが冷笑されます。助けに行って、撃たれて
はかないません。
* * *
この誤解の悪影響は、完璧なまでに均一材料に分離して
チェックしようとすると、ピュア素材にまでさかのぼり、
完成製品を確認した結果とはまったくかけ離れてしまうこと。
均一な材料は分析もしやすく、川上に分析を投げる
きっかけに使われてるよう映ります。
しかし、今度RoHS指令に追加されるフタル酸エステル類
4品目は製造工程や運搬中に移行汚染することが
知られており、ピュア素材ばかり集めた分析データを
提示しても海外の大セットメーカーには証拠として通用
しない恐れがあるかもと考えています。
****************
2005年に作られた旧RoHS指令向けFAQはまさにとんちん
かんな内容でした。これをうのみにできた方は内容を
そしゃくしない人。以下は均質材料の説明箇所です。
Homogeneous material means a material that can not
be mechanically disjointed into different materials.
Definitions:
The term "homogeneous" means "of uniform composition
throughout". Examples of "homogeneous materials" are
individual types of: plastics, ceramics, glass,
metals, alloys,paper, board, resins and coatings.
The term “mechanically disjointed” means that the
materials can, in principle, be separated by
mechanical actions such as: unscrewing, cutting,
crushing, grinding and abrasive processes.
家電をリサイクル処理にて分解、分離した部位を指して
Homogeneous material と呼ぶ。
ここまでは良かったのですが、用語の定義で大失敗しま
した。家電に詳しくなかったのでしょう。
均一材料だけで構成された家電製品なんて存在しません。
家電製品には多くの複合材料が使われてます。
中を見ると、分離が困難なほど接着、溶着、接合された
部分がたくさんあることがわかります。それです。
私は、こう書かれたのは、欧州が初めてリサイクル開始
したときに、作業がしやすい均一なプラスチック、金属
パーツに限定したためかと推測しました。
実際のリサイクル現場では、均一材料、複合材料どちら
もリサイクルしており、均一にはこだわってません。
均一にこだわるのは不自然とわかります。
また、構成材料のうち規制対象は均一材料のみで、複合
材料は対象外と文言どおり受け取ると、家電の構成部品
で、RoHS指令の影響を受けるものと受けないものが存在
することになり、運用がとても複雑で、業界がついてい
けなくなるため、やはりおかしいと気づきます。
互いの分析結果に影響を及ぼさないほど、分子レベルまで
きれいに分離、分解できる工具や工作機械はありませんし
そういうニーズが無いので将来も登場しないでしょう。
2005年頃のRoHS対応は不使用宣言が主流で、この数年後に
分析が必要になるなんてまったく誰も予想してなかった時
でした。振り返って当時の定義を読むとまったく不十分で
想定が浅かったのがわかります。