梅日和 umebiyori

心が動くとき、言葉にします。テーマは、多岐にわたります。

反目は、ひとのためにならず。

2021-11-29 05:36:56 | エッセイ おや、おや。ー北九州物語ー

鍼灸院には、山口や広島、長崎、鹿児島と新幹線や特急を利用して通院する方もいた。そのなかに、何十年にもわたりお礼の品が届き続けた患者さんのご家族がいる。或る日、息子さんがエレベータの中で意識を失い、歩行さえも難しい状態になったそうで、病院をいくつも訪ね、いくつもの検査をおこなった。しかし、医師たちも原因がわからず、対処法さえも適したものがみつからないまま時が過ぎていった。口コミで治療院のことを知り、藁をもつかむ思いで鍼灸院の門をくぐったという。マコちゃんは、彼の状況を診て、針治療を行い、完治させた。

西洋医学においても十分な検査機器がまだない時分の話ではある。詳細も今は本人がいないために知る由もない。しかし、マコちゃんには確かに卓越した能力、技術があった。若いころには、盲学校の教師のつてで、鍼灸の技術を学びながら、K医大の解剖学教室の手伝いに行っていたらしい。こうしたことも探求心を基礎に自分で考え、工夫し、実行するというちからの助けになっていたのだろうと思える。

西洋医学ではさほど効果が見込めなかったときに、娘もマコちゃんを頼りにしたことが複数回ある。なぜ、或る症状が起きるのか。症状を引き起こすと考えられる原因は何か。東洋医学では、どのような対処方法、療法があるのか。尋ねると丁寧に説明してくれた。

医院に通ったところで服薬しか方法がなく、その効果も芳しくないなら、マコちゃんの針を受けてみよう。1回目は、婦人科、2回目は交通事故よる打撲だったが、いずれも2,3回の針治療で痛みは消え、治った記憶がある。

今でこそ大学病院に漢方外来があり、鍼灸も治療法として取り入れているところがあるが、高度成長期の日本では、西洋医学一辺倒で東洋医学は怪しげなものとの認識も大きかった。その中にあって、マコちゃんの手は西洋医学で見えないものを見ることができた。思わぬ病の可能性を発見することもあったようで、「鍼灸院のことは言わずに、病院へ行きなさい」と伝えていたこともあった。

東洋医学を頭ごなしに否定する医師も少なからず居たためである。しかし、マコちゃん、プライベートでは医師の釣り友達が何人か居た。立場は違えど、拒絶するよりも交流する方が、患者さんにとって断然お得だと思うため、融合する大学病院の出現は望ましいと思っている。