『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

●演劇鑑賞:『真っ黒サンタとまっしろ少女』他(福岡大学)

2015年05月02日 00時00分47秒 | ●演劇鑑賞

 

  「福岡大学演劇部」の今回の舞台公演は、30~35分の作品が3本だった。

  第1作は、「麻生悠花」嬢の作・演出による『opfer』。「タイトル」名は、「ドイツ語」の「生贄」や「犠牲」といった意味のようだ。神への「捧げ物」といったニュアンスを指しているのかもしれない。

  第2作は、「馬場佑介」氏の作・演出の『ゴジラが消えた日』。「ゴジラ」と渾名された松井秀喜選手に対する野球少年の想いを綴っている。

  第3作の『真っ黒サンタとまっしろ少女』も同じ馬場氏による作・演出。なお同氏は、全体の演出も担当した。第3作において、馬場氏は主人公の泥棒(真っ黒サンタ)を演じたわけだが、同氏なりの強い想い入れを感じた。

             ★

    しかし「3作品」とも、正直言って心に迫るものに乏しかった。作者が “言わんとしていること” がよく解らなかったからだろうか。「演出の言葉」から察するに、おそらく “作者の狙い” は、いずれの作品とも難しく考えずに物語をそのまま面白く感じてくれたら、ということなのかもしれないが……。

 

   音響過多と過剰音量に懸念

   しかし、「内容」よりも筆者が気になったのは、「音楽の多用過剰な音量」であり、「役者」の演技や台詞の魅力を損ねたことにあった。さまざまな「楽曲」をたて続けに流すため、必然、「舞台」に落ち着きがなくなり、役者の「台詞回し」をはじめ、その「動き」や「表情」をじっくり味うことができなかった。

   「演劇」において、役者の「台詞回し」や「声」に勝る「音楽」や「音」が他にあるだろうか。不要不急な「音響」によって、「舞台の進行」が追い立てられたような気がしてならなかった。この「音響問題」は、ここ数年の同大演劇についていつも感じる。

   初心に返って他劇団との比較検証を行い、 “役者の魅力を引き出す音響” を心がけて欲しい。……とここまで書いて来て、筆者は昨年12月27日に綴った『2014福岡都市圏の学生演劇を観終えて:下』を想い出した。その中で、同大演劇部の『天使は瞳を閉じて』に対する演劇評の最後に、以下のような一文を加えた。「原文」のまま再掲してみよう(太字も下線も)。   

    ★★「ミュージカル」や「音楽劇」ではない普通の「舞台」において、「音楽」や「音量(ボリューム)」は、ただひとえに「役者を活かすために存在する。それらは、「役者の台詞回し」を、すなわち「役者」の “言葉や声” を魅力的かつ効果的にするための補助手段にすぎない。

   逆な言い方をするなら、「役者」の “演技” や “台詞回し” の魅力を損なうものは、総て排除しなければならない。

    「舞台」から「音楽」や「効果音」を取り去っても、さらには「舞台美術」や「小道具」や「衣装」や「照明」を取り去っても、「役者」が存在する限り「舞台」は成立する

   ……「舞台演劇」における “絶対不変の原理” とも言えるこの意味を、演劇に携わる人々とともに、今ここで再確認したいと思う。★★

        ☆  

   「舞台演劇」については、「人」それぞれ、「学校」そして「劇団」それぞれの考えがある。とはいえ、そこには「舞台演劇」という表現形式が歴史的に背負って来た節度が求められる。無論、同大演劇部はそれを承知の上での「舞台創造」、すなわち「演出・演技」そして「音響」等なのだろうが……。

   今回の公演において、同大演劇部が作成した「新入生」向けの「演劇部・案内パンフレット」の表紙には、“演劇とは、皆で一つの作品を作り上げる総合芸術”という大きな文字が目を引く。この場合の「総合芸術」という意味を、もう一度 “演劇の原点” に立ち返って考えて欲しい。

 

   【キャスト】 ◎『opfer崎戸優弥(王子)、泉加那子(エリナ)、岩下祐里奈(魔法使い)、山中悠史(蛇)、松田隆寛(吟遊詩人)、山口奈子(教師)。 ◎『ゴジラが消えた日』岩下祐里奈(青年期のタケル)、大野日向子(少年期のタケル)、藤駿太郎(父親)、山中悠史(大和)、上村由美子(マネージャー)、馬場佑介(審判)、関大祐(相手ピッチャー)。 ◎『真っ黒サンタとまっしろ少女』馬場佑介(泥棒=真っ黒サンタ)、泉加那子(まっしろ少女)、関大祐(父親)、眞鍋朱里(母親)。

   【スタッフ】 岩下祐里奈舞台監督・衣装メイク)、麻生悠花舞台)、安田和輝(同)、馬場佑介(同)、河口愛(同)眞鍋朱里(同・記録)、野間直人(同・小道具)。山口奈子照明)、武藤君佳(同)、水谷耕(同)、関大祐(同)。藤駿太郎音響)、上村由美子(同)、西田尚史(同)、崎戸優弥(同)、矢山康哲(同)、藤岡美有(同)。大野日向子衣装メイク)、田中悠希(同)、奥水真美(同)、長谷川太一(同)、入江好海(同)。泉加那子制作)、松田隆寛(同)、荻迫由衣(同)。 以上の諸氏諸嬢。