親友S宅での連泊
では、第二の《おもてなし》とは……。
「結婚式」の前夜と当日の夜、筆者は大学時代の親友S宅に泊まった。昨年リタイアした彼は、サラリーマンとして40数年を勤めあげ、現在、3LDKのマンションに一人住まいをしている。
彼と筆者との共通点は、法学部でありながらも「法律論」をした記憶があまりなく、もっぱら「文学論」であろうか。それに「旅好き」ということも共通している。
学生時代、彼が中原中也の「汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる……」について語り始めた様子は、今でも鮮明に記憶している。その彼と会うのは、東日本大震災直後の2011年3月以来となった。
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今回、彼は、「六畳一間」を筆者のために用意してくれた。部屋のベランダから「市立図書館」の閲覧室が見える。それも直線距離で30m足らずの距離だ。読書と思索好きの彼に相応しいスポットとして、これ以上のものはないだろう。
筆者のために、慌てて片付けたと言う。その割には、住居全体がきれいに整理整頓されていた。用意してくれた寝具やタオルなどに、彼の心遣いが感じられた。
そのマンションの敷地内に「スーパーマーケット」がある。二人で買物をし、夕食は「おでん」を作ることにした。彼は筆者のためにワイン、ウイスキー、焼酎そして日本酒と、さまざまなアルコールを準備していた。翌朝の「結婚式」のため、深酒しないよう慎重に飲み進めた。だがともに青年時代の酒量にはほど遠く、心配するまでもなかった。
姪の「 結婚式」を終えた日の夜――。仕切り直しの「酒」も「話」もいっそう弾んだ。U-Tubeの「音楽動画」に見入り、懐かしい音楽に耳を傾けた。音楽と言えば、もっぱら「クラシック」という彼。その彼が筆者のブログの影響により、ヴァイオリニストの寺井尚子のファンになっているのが嬉しかった。
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翌朝、福岡に帰る日――。筆者は「豆腐」と「うす揚げ」入りの味噌汁を作った。筆者はふだん「いりこ」でダシをとる。しかし、今回は「ダシ入りの味噌」を選んだ。「炊飯」をマスターしていないSが、「いりこダシ」の味噌汁を作るイメージがわかなかったからだ。
ともあれ、鍋がほぼいっぱいになるほど大量の「味噌汁」を作った。結局、彼も筆者も三杯もの味噌汁で満腹になった。それは、とびきりの美味さだった。
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そのあと、羽田空港まで直行バスで行くことにした。バスが来るまで、「ロッテリア」でコーヒーを飲みながら時間をつぶした。そして12時、バスに乗り込んだ。彼との〝別れ〟は、今まで何回となくあったはずなのに、今回はなぜか妙に切なかった。バスが動き始めたとき、その切なさはいっそう募った。
バスが走り出して数分後、筆者は次のようなメールを送った。
『貴君宅のこの2泊3日は、ここ数年来の楽しいまた充実した日々だった。本当にありがとう。とりあえず、まずはお礼を』
それから2時間半後、Sからの返信メールを羽田空港の待合ロビーで受け取った。
『友去り、またひとり 三等歌』
無論、「(種田)山頭火」(さんとうか)を念頭においたもの。筆者は「(尾崎)放哉」の名句「咳をしてもひとり」で応えた――。
『咳をしないでもひとり 呆才』
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専門結婚式場の「迎賓館」に「親友S宅」――。真の《もてなし》というものは、それを受けた側に、「受けた以上の《もてなし》を〝返したいという心〟を引き起こさせるものではないだろうか。そしてそれこそが正真正銘の《お・も・て・な・し》と言われるものかもしれない。(了)
★★★★★★★ 倍返し? ★★★★★★★
――『受けた以上の《もてなし》を〝返したいという心〟』を起こさせる……あなたの最後の言葉って、とっても素敵。あたくしも、誰かさんに今年最初の《お・も・て・な・し》をしちゃおうかな?
ん? どうかなさったの? 何かご不審なことでも? そんな怪訝(けげん)なお顔をして。 ……ああ、なるほど。心配? あたくしに<倍返し>でも要求されるからって?
どうかご心配なく。2倍、3倍返し……なんて申しません。 でも、でも。《何も返さない》って言うのも、あなたのプリミティブな自尊心が放ってはおかないような気がするわ。だから、そこはもう……それなりに……ささやかに、さりげなく……ほんのちょっとの《お・き・も・ち》って感じで……。
ねえ? 聞いてる? ね~え? あれっ? 眠ちゃったの ❢ ……もう、信じられな~い ❢ 今じゃないでしょ? ねっ………?
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読者のみなさまへ
新しい年のはじめにあたり、ひとことご挨拶申し上げます。
いつも本ブログをご愛読いただき、ありがとうございます。
今年は、「ショート記事」の掲載を構想しています。日々のニュースや出来事の中から、『これは?!』と言えるものを軽く採りあげてみたいと思います。
カテゴリーにはあるものの、未だに一つも記事がない『絵画を愉しむ』も早い機会に……。また再三リクエストされております「山頭火」や「建築家」などについても、少し真面目に取り組んでみようかと。とはいえ、気まぐれと遅筆のため、いかが相成りますやら保証のかぎりではありません。
それでも力いっぱい精いっぱい、ボケ防止を兼ね「DANKAI GENERATION」らしく綴って行きたいと思います。
読者のみなさまも、ご希望の「テーマ」や「記事」、それに本ブログに対する「感想」などを「コメント」としてお寄せください。
今年も一年間よろしくお付き合いのほどを。
みなさま方のご多幸とご健康をお祈り申し上げます。
2014年1月1日 朝 天気晴朗なれど海風強し
花雅美 秀理