うちの犬はやさしい。
たとえば、散歩から帰ってきて、
マンションの入り口で抱っこ(しなくちゃいけない)しようとする瞬間、
飼い主が持ち上げやすいように、前足をけり上げるよう、軽くジャンプしてくれる。
それから、家に戻ってきたとき、
まず、お風呂場で犬の足を洗うのだけど、
飼い主が洗いやすいように、順番に、すっと足をあげてくれる。
それだけでなく、グーパーをして、指の間も洗いやすいようにしてくれる。
そして、洗い終わった足を拭くときには、
順に、足を上げて拭かせてくれるのはもちろんなんだけれど、
飼い主の濡れた足やら、手やらを、ぺろりんと舐めて拭いてくれるのだ。
オレコはあまり舐めない子で、舐めるのはほぼこの時だけ。
といっても最初からそうだったわけではなく、来たばかりの頃は舐めまくっていた。
舐められると、中型犬だからべろんべろんになってしまうので、
飼い主はいいとしても、よその人がされたら大変なので、舐めるたびに、
「おーちゃん、ぺろぺろ禁止、ぺろぺろ禁止よ」
と言ってやめてもらうようお願いしていたら、自然と舐めない子になった。
だから舐めるのは、お風呂上がりの足を拭くときだけ。
大事なスキンシップだ。だから、これについては、
「ありがとうね、いい子ね、もう大丈夫よ」
とお礼をいって、いい子いい子、ありがとう、と頭をなでる。
そうすると、すっと、やめてくれる。
そんなときにも、やわらかな、犬のやさしさを感じる。
犬のやさしさは、日常の、ほんのささいな出来事の中に潜んでいる。
そのやさしさを見つけて、感じ取ったとき、ほんわりとしたやわらかな、いい気持ちの幸せを味わう。
そんな静かな生活を一緒に過ごせることが、また、幸せでもある。
限られた時間の中だからこそ。