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父は耳が遠く、認知症が少し入っているのとでいつもトンチンカンな会話になります。
あまりしつこくすると、怒ってしまったりで・・・
それならばと、
必要な事以外は会話しない。
一方的に話しかけられるのを聞き、
必要なひと言を簡潔に話す。
などの工夫をして日々過ごしています。
今朝、母から電話がかかってきました。
「さっきまでお父さんの髪の毛を散髪しててん。めーちゃん
連れてきてくれる?」
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母は最近父の髪の毛を切らされています。
父がガンになってからは、自宅で髪の毛を切る様になりました。
鏡で見える範囲を父が自分で切り
後ろの見えないところだけ母が切っています。
メープルを実家へ連れていき
帰りに父と一緒に外へ出ました。
「綺麗に切れてるやん!」
父「まぁ、こんなもんだぁ。ほとんど自分で切ったけどなぁ〜。見えへんとこはお母さんに切ってもらって。
なかなかやろ?」
普段は
半分ほどまぶたが垂れてて、
隠れている父の目が、
久々にクリクリっと見えました。
そうして、私の家へ帰る道中を
久々にお喋りしたんです。
「そう言えば、お父さん、毎年手紙を書いている田舎のおばちゃんは、
確かお父さんの『憧れの人』やってんなぁ?」
そう聞くと
「違うよ」
と、言われました。
「え?お母さんが昔そう言ってた〜って言ってたよ」
それから少し笑って、
「違うよ。そこのおっちゃんとワシが絵を描く仲間で、結婚した後に知り合ったんやで。そんなん、ややこしいやん(笑)手紙やメールやりとり今もしてるのに、そこのおっちゃんいい気持ちせんやろ(笑)」
それから父の昔話が始まりました。
父は昔20歳前後の頃、京都の有名な先生が中心となって作られた絵の『〇〇会』に所属していたそうです。
そこで、美大を目指す沢山の仲間に会い、小学生などにも絵を教えながら、
一緒に山や川に行ったり海に行ったりして一緒に美術活動をしていたそうです。
その中で出会い今に繋がりをもつ田舎のおっちゃんは、その後、職のない父を雇い助けてくれた恩人なのです。
「そうやったんやね〜」
ポカポカの天気の下、父と話が通じ合う喜びを感じていました。
「じゃあ、あのお母さんのミシンの部屋に飾ってあった女の人の横顔の石膏は誰なの?」
また、少し笑う父。
「あれは〇〇ちゃんや(男の友達)。
当時、なかなかモデルになってくれる人がいなくて、仕方ないから〇〇ちゃんが上半身裸になって、それを見ながら粘土で造形をしてたんや。
記念に、石膏を流して作ったんやぁ。」
(笑)
てっきり母のミシンの部屋にあったから
母かと思いきや、私の知らない男の人でした。
母は、父を昔から得体の知れない人やと言っていました。
髪の毛は長髪だし、お酒ばかり飲んでいるし。
一体全体何故結婚したのか、母の発言を聞くと全くわかりません。
ただ、私は、
父の生き方が、時々羨ましくもあるんです。
やりたいことをやってきた。
自由に生きている。
その点において。
ただ、人に(家族に)迷惑をかけていますが。
何とか家族でいてます。
久しぶりに、私は父を父と思えました。
父も生きづらい人生だったのかもしれないです。
感性で生きていますから、トラブルだらけです。
74歳。
たまには話しかけてあげようと思いました。