入院 ④

2023-09-10 00:06:07 | 
昼食を済ませた後 父は入院が決まりました。

医師からは
「少し、入院しましょうか!
ぼくがね、最近のご様子を聞いてはんだんしたんですがね、
『入院』したほうがいいと思うんですよ!」

大きな声で 言葉を区切りながら伝えてくれたのですが、なかなか理解していませんでした。


私からも
「お父さん しばらく入院だって。
しんどいところ みてもらうのに
すこしだけ病院に入院だって。」

そう伝えると何となく理解して
最後は「そうしようかな」と言ってくれました。


その後、
夫と父に診察室をでてもらい、
その間にもしもの延命治療の意志確認などの本人の前では言えない話をして
続いて私たちも診察室をでました。


それから病室に案内をしてもらいました。


緊急で入院だったので、
「今回はしばらく前回とは違う病棟になります」と言われて案内された場所は

精神科病棟でした。



前回と違う場所、違う雰囲気の今回の病棟に父の顔はだんだん険しくなり
ついに怒りだしてしまいました。


傷つきたくない私は、父の方を見ることが出来ませんでした。


「こっちで手続きがあるからあとでね」とだけ言って病棟説明などをうける為別室に逃げるように入りました。


説明を受けている間、部屋の扉の向こうから聞こえてくる父の声。

「どういうことや!
こんなん 間違ってる!!」

そう叫ぶ声や、仕切り板を飛び越えようとしている父を止めている看護師さんやヘルバーさんの声が飛び交っていました。


父の怒った声 
父が迷惑かけている周りの声に

緊張と罪悪感でいっぱいになりました。



でも 仕方ありません。




入院するしかなかったんです。




説明が終わった後、
必要事項に記入して
判子を押して…



私たちは逃げるように病院から帰りました。





帰り道、
夫の運転する車の助手席で
私は声をあげて泣いてしまいました。





「仕方ないやん」
と母。





「だって、
わたし、
お父さんと一緒に喫茶店行って…
みんなでご飯食べて…

ちょっと幸せやってん。


なのに、お父さんを認知症病棟じゃなく
緊急やからって精神科病棟にいれちゃって…

罪悪感でいっぱいやねん。」

そう言ってわーわー泣くと






後部座席の母が
静かに「幸せやったんや…」と言いました。





私は「うん」と答えたと同時に後悔しました。



母に辛い気持ちを正直に伝えることで
母をよりしんどい気持ちにさせてしまったと気付いたからです…




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これで、父の再入院の日のブログは完結です。


辛かった気持ちを記録することで少し落ち着いてきました。


今日は母と父の施設の部屋を掃除して、
布団やコップ 歯ブラシ 髭剃り その他色々を大きな旅行鞄に詰め込んで1日仕事をしました。

おそらく、退院後はこちらの施設に帰らないと思います。

グループホームや老人ホームを探さなくてはいけなくなるでしょう。


先を見ると、不安ばかりですが
きっとなんとかなると思うようにしています。


幸せな時間 ③

2023-09-08 10:51:50 | 
病院に着くと、
「あぁ、やっぱりここかぁ。」と言い
特に拒否することなく病院内に入れました。


体温がとても低くなっていた父は待ち合い室が寒い寒いと言っていました。

フリースのブランケットをまた上半身に巻き付け
私の手でブランケットの上から父の手や腕を温めながら待ちました。

よくわからない短い会話をしながら
父は体が温かくなるとスーッと寝てしまいます。


「ベッドかりて横になる?」と聞くと

「(首を横にふって)いや、なんぼでも寝れてしまうから起きとく為にも座っとく。」
とすごくまともな答えが返ってきました。

こういう時私は
まだ父はそんなに認知症が進んでいないのではと勘違いしそうになります。


父の認知症は『まだら』なのです。



それでも私は父の体を温めながら、父と穏やかに会話できたことに小さな幸せを感じていました。





父の診察になり、先に母と私だけが診察室に入りました。


「入院したほうがいいですね。」と先生。

「ただ、今は空きがなくて。
次の通院…は、待てないですか?」と言われました。


「今日ここへ連れてくるのもやっとで。施設さんも疲弊してますし、なんとか今日入院できたら助かるのですが…」

そう私が言ったので、何とか入院できないか検討するとおっしゃってくれました。





そうして、返事を待つ間、父と母と夫と私で近くの喫茶店にお昼ごはんを食べに行くことになりました。



喫茶店で、母と夫はハヤシライス 私はエビピラフを頼みました。

父は席に着くなり眠い様子でなかなか決めなかったので、

「こんなんあるよ。
これにしとく?」

と、父の好きそうな牛丼定食を見せて注文しておきました。

そして、何年ぶりかの家族で外食。


今思い出しただけでも幸せでいっぱいになります。

家族でご飯をたべることがこんなに幸せを感じることなんだって初めて知りました。


いつもお酒におぼれていた父は、ご飯をまともに食べれず居ましたし、
そもそも父は外食を好みませんでした。

母も家計が苦しいことから外食なんて絶対しない人でしたし、私たちが誘ったら絶対お金を渡してくる人なので、誘うことを躊躇っていました。


けれど、この日は父の入院手続きを待つ日でしたから、やむを得ず喫茶店に入ったという流れでした。


父はまたタイムスリップをしていました。

「まぁ、たまにはいいやろう。
頑張って働いたしなぁ。」

ついさっきまで、仕事をしていたかの口調。


私は
「ほんまやな。
お父さん いつもありがとう。」
と、言いました。


それから牛丼を3分の1残して、父のランチは終わりました。


「もう、おしまい?」と私が聞くと

首をわずかに縦にふりながら

「えんぴつ」

と父が言いました。


??

よくわかりませんでしたが、
父に鉛筆とお箸の下にひいてくれていた小さなペーパーナフキンを渡してみました。


すると

『朝飯 250
昼飯 250
合計 500』


と書きました。

レシートでしょうか。


よくわかりませんが、250円で食べられるご飯なんてありませんから、やっぱり父の頭の中はタイムスリップをしているようです。



「あ、そうか。わかったよ。

ありがとう。ありがとう。

お父さん。」

そう言って紙を受け取り夫に渡しました。

父の字はデタラメでしたが、
字の大きさや間隔は昔と同じ几帳面に揃えられた字でした。



最後に目の前にあるメニュー表の中の
イチオシ巨大ソフトクリームのメニューを見て

「わぁ、びっくり。
おい。(お母さん) はい(あげる)」

とご機嫌に母に絡む父。

母は
「なに言ってるん。」とあしらっていました。


冷めた夫婦関係ですが…

それでも失われた日常を取り戻したようで
私は幸せで幸せでたまりませんでした。



















父を入院させるまで ②

2023-09-07 22:27:36 | 
父を連れて何とか車に乗り込みましたが、
流れで父の横には母が座りました。


いつもは父と母が険悪にならないように、私が父の近くにいるのですが…。


大丈夫だろうか


少し不安を持ちつつも、私は夫が運転する車の助手席に座りました。


父は乗り込むと、「帰るんやな」と言いました。


「違う違う。病院いくんやで。」と母。


不思議ですが、母の言葉が
父は特に理解できません。


ペラペラと一生懸命話しかける母。

一向に伝わらない父。


病院のカードを見せて
母が試行錯誤しているうちに

「あぁ おまえ(お母さん)が 
病院(いくの)?」


と、とんちんかんな会話。





意固地に間違いを正そうとする母のスイッチが入りそうだったので


「お母さんも病院いくけど、お父さんも病院いくよ」

と助手席から振り向いて私が伝えました。


わかってくれたかどうかは不明。


ただ『病院にいく』ことはわかったようでしたのでそれで良しとしました。






車の中で、父は何度も目を閉じては短い眠りに入っていました。




この浅い眠りは父の色んな人格のスイッチになっているようでした。



目が覚めると急に不機嫌になり

「ほんまに、金がないねん。
一銭も!!一銭もないねん。」

そう言って母を睨んだり


また次目が覚めると
「あれ?何?靴はいてるなぁ?」
とニコニコしたり

また次目が覚めると
「もう降りるんかなぁ」と何度も車の扉を開けようとしたりします。

その度に母が過剰に反応するので、父にはしばらく寝てもらう作戦にしました。

小さめのフリースのブランケットを持ってきていたのでそれで父の上半身をくるみました。

車内のクーラーで冷えた体が少し暖まると、父はまたうとうとと眠りにつくのでした。


こうして車で約一時間をかけて以前入院していた病院に行くことができました。


この、父の人格のスイッチは睡眠薬のせいだったのでしょうか。



もしくは睡眠薬のせいで認知症が顕著にでていたのでしょうか。


だけど、この睡眠薬の作用がなければ病院まで連れてくることは逆にむずかしかったかもしれなかった可能性も十分にあるなと思いました。







父を入院させるまで ①

2023-09-05 22:57:13 | 
昨日は、夫と母と私で朝から父の施設に迎えにいきました。


施設に着くと、職員の方から
「朝食は食べれましたが、今日も傾眠が強く今は寝ていると思います。」
と声をかけてもらいました。

父はあまりに脱走してしまうので先週土曜日から強めの睡眠薬を飲むことになったそうです。




部屋に入って、寝ている父を起こすと
目をつぶりながらもう何もかもが嫌だという雰囲気で怒りだしました。

「もう ええ!あっちいけ!

よけいなことするな!」

そうしかめ面で怒り

「なんや、こんなに汚して。
いらんことばっかり。

ティッシュ!」

と言うのでティッシュを一枚渡しました。


するとなんにも汚れていないきれいな掛け布団の端をティッシュで拭きだしました。


目は少ししか開いていなかったし、
会話も支離滅裂だったのできっと夢と現実の間に父は居てるのだろうと理解しました。


でも、これでは病院に連れていくことはできません。


どうしよう…

そう思いながら夢の中で混乱している父を少し待つことにしました。



待っていたら、また目を閉じて寝てしまいましたのでまた起こすことにしました。





「お父さん、おはよう。
ネイロやで。わかる?
お母さんと一緒にお父さんを迎えにきたよ。」


そう言うと再び目を少し開けました。

『迎えにきた』

その言葉に反応したんだと思いました。

お父さんの望む言葉をかけると反応すると思いました。


「お父さん!車乗ろう!
ドライブしようね!」


そう言うと更に意識をはっきりさせたので
母と二人で父の体をベッドから起こしました。


フラフラな父。


「今日は病院の日やで。
お父さん、ずっと通院してなかったから
病院いかないと。

車で行くからね。

今から一緒に行こうね。」




そう声をかけながら、やっとのことで父の機嫌を直し部屋をでることができました。


眠剤のせいなのか、普段はスタスタ歩く父が母と私に支えられてようやくヨタヨタと歩く

そんな感じでした。





父 再入院

2023-09-05 11:35:18 | 
昨日 父は入院しました。


認知症病棟はいっぱいで、緊急で精神科病棟にはいりました。


本人は怒り暴れました。


パニックになり異常行動をおこすため隔離されました。


辛すぎて辛すぎて


また私は人生の選択を間違えたのかと責任を感じています。


でも、選択というのは
どちらを選んでも選んでいない道のほうがよかったのかもしれないと後悔するものなのかもしれません。