父は腸閉塞の為イレウス管の挿入手術を急遽しました。
鼻から小腸までチューブを挿入し、腸液を排出することで腸内圧力が下がり腸管が開くということを期待するというものでした。
手術前に父のベッドから離れないといけなくなったので
「お父さん、今からちょっと行かなあかんから行ってくるけど必ずまた戻ってくるからね!」
と耳元で言いました。
父は小さく頷いてくれました。
父の元を去った後、待機室に案内してくれた看護師さんが
「実はもうしばらく会えないんですよ。
入院後1週間は面会ができないんです。
1週間後も予約制でご家族の誰かおひとりだけ15分面会になるんです。」
私があまりに『必ずお父さんに会いに行く』と父に強く伝えていたので申し訳なさそうに教えてくださったのです。
そうか…
お父さんに嘘をついてしまった…
ぽっかりと何か穴があいたような気持ちになりながら父のイレウス管手術を待ちました。
待合室の大きな窓にはすっかり夜が広がっていました。
暗い黒い景色の中
時々通る電車の光の流れを
母と私はぼんやり眺めて
父の手術が終わるのを待ちました。
父の手術が終わったのは夜の10時でした。