条例は差別をなくし、問題を解決するための大切なツール
今日は安保法案廃案を求める集会があり、国会周辺では12万人もの人たちが集まったとのことでした。関連集会は全国でも開催され、ここ松江市でも駅前で集会とデモが行われました。国会に駆けつけたいと思うのはもちろんのこと、松江での集会にも参加したいのはやまやまでしたが、この大規模集会が決まる前に、自ら軽度の障がいがあるAさんが企画した標記の講演会をすでに進めていました。心身ともに二つも三つもあればいいのに!と思ったのですが、障がい者差別の問題も日ごろから目にしていて、私としては片隅に追いやることはできません。ほかにも、障がい者関係のフオーラムまで重なっていて、”これは、参加者は期待できないかも!”と思いながらも、Aさんの企画を実行することにしました。
それでも、ふたを開けたら35人の方が参加してくださいました。36人の部屋でしたからギリギリの状態でした。また、当事者の方々、そして松江市障がい福祉課の皆さんにも来ていただき、感謝!感謝!でした。安保法案反対集会に参加された皆様。お疲れさまでした。心の片隅で参加させていただきましたので、あしからず!
さて、障がい者差別の問題ですが、2006年12月13日、「障害のある人の権利に関する条約」が国連総会で採択されています。この時、世界中の障がい者から寄せられた「私たちを抜きに私たちのことを決めないで!」という合言葉のもと、障がい者の意見が反映されました。採択となった時には万雷の拍手が鳴りやまなかったそうです。
今日、来ていただいた松波めぐみさんは(公財)世界人権問題研究センターの専任研究員・大阪市立大学ほか非常勤講師、日本自立生活センターにて登録介助者という肩書の方です。「障害者権利条約の批准と完全実施をめざす京都実行委員会」事務局員という立場で、京都府の条例づくりに携わってこられました。松波さんのお話を少し紹介しながらこの問題に触れてみます。
「障害のある人の権利に関する条約」は、日本では2014年にようやく批准され、国内法の整備が進められています。権利条約の特徴は、*原則;インクルージョン(誰も排除されない)、他の者との平等 *「誰とどこで生活するか」は本人が決める。地域で生活することは権利。 *インクルーシブ教育(ともに学び、育つ) *「手話は言語」と明記。 *コミュニケーションや「情報へのアクセス」も保障されるべき権利 *女性障害者への複合差別 に取り組む必要性。 *障害を理由とした差別の禁止。その中でも「合理的配慮」について定めたことです。国内法の整備の一つとして、2013年6月には、障害者差別解消法が成立しました。この法律は二つの類型の差別を禁止しています。一つは、不当な差別的取扱い(「車いすの人は、入店お断り」「見えない方には、部屋を貸せません」など)二つ目は、「合理的配慮を提供しないこと」の禁止です。ただし、どうしても無理な場合は除かれます。(車いすの人が建物に入るためのスロープ設置を求めたが、応じない。聴覚障害の人がお店で、商品の説明を書いてほしいと求めたが拒む、等)
「合理的配慮」とは、個別の場面で、社会的障壁のため権利を侵害されている人が、(こうしてほしいと)意思を表明することをきっかけとして、(対話をしながら)社会環境の側を変更・調整すること」を指します。とりわけ、障害者からの意思表明を(やむをえない理由もなく)拒絶することは、「差別」であると明記したことは重要な一歩です。
この法律が制定されたことを受け、松江市でも、今年度から「障がい者差別解消条例」作りが始まっています。「私たちを抜きに私たちのことを決めないで!」という合言葉を基本とすれば、当然、この策定委員に障がい当事者の皆さんが入っていなければならないはずです。当初、私は策定委員に当事者を入れるよう求めました。しかし、松江市は支援をする側の団体代表と身体障がい者の団体代表だけを選定していました。一口で「障がい」といっても多様な障がいがあり、それぞれに抱えている問題も多様です。そういう意味でも、たった一人はあまりにも不十分です。そこで、Aさんを推薦し、なんとか公募枠で入っていただくことになりました。
松江市は、この条例策定の会議をわずか4回で済ませ、市が作ってきた案を委員からの意見を少々反映させて、シャンシャンで終わりたいのだと思います。元の国による法律があるからには、似通った条例にならざるを得ない部分があるにしても、そのプロセスでどれだけ障がい当事者の意見を聞き、反映させたかが大きく問われると思います。市はヒアリングをすると言っていますが、もっとたくさんの障がい当事者の皆さんにこの条例つくりを知っていただき、自らの声をあげていただきたいと思うのです。京都の条例づくりには、松波さんが事務局員を務める「障害者権利条約の批准と完全実施をめざす京都実行委員会」から14人(33人のうち)の委員が入り、さらに知的障害・精神障害の当事者、女性障がい者を入れるように交渉し、実現させています。加えて、府民にパブリックコメントを呼び掛け、パブリックコメントの書き方までレクチャーしたそうです。その結果、898通ものパブリックコメントが寄せられ、その多くが女性障がい者の問題を挙げていたとのことです。そして、ついに基本理念の中で、「障害のある女性」の「複合的な困難」があることが明記されました。
京都の皆さんの取り組みに触発され、松江市の条例策定の過程へ、障がい当事者の意見を反映させるための市民の側の取り組みを進めていくことができたらと思っています。条例策定委員でもあるAさんを通して、松江市にバンバンと提起していきたいですね。
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