芦原やすえの気まぐれ便り

原発のない町つくりなど、芦原やすえの日々の活動をご紹介します。

生保「改正」とその対処法

2014-08-28 22:43:06 | 政治
お待たせしました。生活保護問題議員研修報告パート2です


2人目の講演は弁護士の小久保哲郎さんによる『生活保護「改正」に現場でどう対抗するか」と題してのお話でした。その内容は実際に生活保護を申請しようとする人にとって役立つものでしたので、当日の資料と併せて紹介したいと思います。
1 「改正」内容
 24条は生活保護の申請に関する規定ですが、当初(原案)として示された1項には、こう書かれていました。「保護の開始の申請は、第7条に規定する者が、厚生労働省令で定める所により、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出してしなければならない。」
 ”この規定のどこがおかしいのか?”と思われる人もたくさんいらっしゃるかもしれません。実をいうと、私も誤解をしていました。申請書を出して、正式に申請したしたことになると思っていました。というよりも、これまで何度か生活保護の申請に付き添ってきましたが、かなりの時間を費やして事情を説明しなければ、机の上に「申請書類」は出てきませんでした。ですから、職員が「申請書類」を机の上に出した時点で「これで、ほぼ生活保護は決まった!」と受け止めていました。職員は、こちらのかなりの時間を費やす説明を聞きながら、生保の対象になるかどうかを吟味していると感じたからこそ、書類が出てくると「これでいける」と思ったのです。もっとも、申請する当事者は、この時点でも信用していません。不安で不安でたまらないのが実情です。
 さて、これが違っていたのです。国会でのやり取りもあり、この条文は修正案が出されました。それには「保護を申請する者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。ただし、申請書を提出できない特別の事情がある場合は、この限りでない。」また、厚生労働省による国会答弁でも「現在、事務連絡によ基づき事情がある方に認められている口頭申請についても、その運用を変えることなく、その旨を厚生労働省令で規定する予定」と示されています。昨年の11月12日三銀厚生労働委員会付帯決議においても「新政権侵害の事案が発生することのないよう、申請行為は非様式行為であり、…口頭で申請することも認められる 略」とされています。この付帯決議には「水際作戦」はあってはならないことを、地方自治体に周知徹底する」と書かれてもいます。
 次に、24条の2項には「前項の申請書には、要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類として講師柄労働省令で定める書類を添付しなければならない」と書かれています。この規定も修正され、「ただし、書類を添付できない特別の事情がある場合は、この限りでない。」という一文が付け加えられています。これも、国会答弁などで「可能な限りで保護決定までの間に行うというこれまでの取り扱いに変更がない」とし、省令、通達で明記するとしています。
 法律改正によって、松江市でも申請書や提出を要する書類が明文化された説明書類一式が相談室に置いてあります。これらの書類がなければ受け付けてもらえないと思う人もあるでしょうし、もしかしたら、そう説明するかもしれません。ですが、申請石さえ明確であれば申請できるのです。必要とされる書類については、省令で定める書類として規定するものがないため、規定されていません。つまり必須とする根拠がないに等しいのです。
 生保申請を考えている皆さん。よく理解して窓口に行きましょうね。そして、できれば、よくわかっている人に同行してもらった方が良いですよ。
 改正内容に関して、問題点はほかにもありますが、今夜は、ここまで。続きをお楽しみに!

生活保護問題議員研修会

2014-08-24 21:37:05 | 政治
8月22日と23日、石川県金沢市で開かれた生活保護問題議員研修に参加してきました


 初日は、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事の稲葉剛さんからの昨年12月に成立した「生活保護法改正案及び生活困窮者自立支援法について、「63年ぶりの生活保護「改革」を検証する」と題し、日本の社会保障の根底を揺るがす戦後最大の制度改悪だ」とする講演からスタートしました。
 このもやいには、リーマンショック後相談件数がそれまでの3倍に増加したと言います。現在でも、年間700~900世帯が相談にやって来ると言われます。その3割が30代以下の若者なのです。たどり着く若者はまだ救われますが、自分がどのような権利を持っているのか全く情報を持たない若者は、例えば解雇され、収入が途絶えると、家賃が払えないと思い、アパートを出てしまいます。すると、どうでしょう?次に仕事を見つけようとした時、住所がなければ職を見つけることができなくなってしまいます。そこからは、路上生活へと転落してしまうのです。彼らには、労働法の知識、生活保護など公的社会保障制度の知識、NPO法人への相談など利用しようと思えば利用できるはずの知識がなかったために、どんどん追いつめられていくことになります。
 生活保護法が改悪されたのは、最低賃金や年金などの一部が生保を下回っている現実があることや生活保護以下で暮らす人が多くなっている中で激しくバッシングを受けたことなどからでした。ですが、日本の公的扶助制度の捕捉率はヨーロッパ諸国に比べても著しく低く、生活保護水準以下で暮らす人がおよそ1200万人いると推計されています。そのうち、本来生活保護が利用できるのに使っていない人が456万人(約38%)もいるのだそうです。そして、最近は子どものいる世帯の相対的貧困率が
16.3%、ひとり親世帯の貧困率は54.6%と驚くほど高くなってきています。こういった状況に対して、国連社会権規約委員会は「国民年金制度に最低年金保証を導入するよう締約国に対して求めた前回の勧告を改めて繰り返す」「生活保護の申請手続きを簡素化し、かつ真摯エ社が尊厳を持って扱われることを確保するための措置を取るよう、締約国に対して求める」「生活保護に付きまとうステイグマを解消する目的で、締約国が住民の教育を行うよう勧告する」という勧告を出しています。
 こういった国連の勧告を無視し、生活保護法は改悪されたのでした。その内容の問題点については、次回で!

議会レポート3

2014-08-16 19:38:52 | 政治
北海道札幌市、剣淵町、下川町の取り組み見聞

札幌市では、平成21年に「子どもの最善の利益を実現する権利条例」が施行されました。
中でも、いじめや体罰、虐待など子どもの権利侵害に対する救済センター(子どもアシストセンター)の常設は、札幌の本気度が窺えます。また、市政に子どもの意見を反映させる取り組みとして「子ども議会」が開かれ、児童館の運営も子ども運営委員会が開かれるなど、実際に子供たちの意見が反映されていました。市の職員によれば、これは「町づくりです」とのことでした。ぜひ、松江市でも実現させたいと思います。
 

剣淵町は人口3,381人の小さな町ですが、「心のふる里を創りたい」と世界中から絵本や原画を集め、「絵本の図書館」を作っています。一般図書も含めると4万5千冊もの図書が収蔵され、周辺の町からも親子連れがやって来るようでした。学校帰りの子どもたちが楽しいひと時を過ごしている様子に、子どもたちが大切にされていることが伝わってきました。
 

下川町も人口3,507人、町面積の88%が森林という小さな町です。この町では、森林を活用した「バイオマス産業都市構想」の選定や「環境未来都市」の指定を受けた取り組みを行っています。循環型の森林経営を行い、全公共施設の熱エネルギーの約60%を木質バイオマスに切り替えていました。町の説明では、「2030年には、再生可能エネルギーの活用で完全に町内でのエネルギー自立を目指す」とのことでした。松江市とは環境が違い、全てこの通りにはできませんが、下川町の考えとその熱意には、大いに学ぶべきだと思いました。
 

議会レポート2

2014-08-15 23:35:02 | 原発

★再生可能エネルギー推進計画に関する質問と答弁 
芦原: 全国では大阪市・山形県・福島県・新潟県・三重県・東京都などで計画策定が進み、数値目標が示された計画もある。このほか、全国で209の自治体で策定もしくは策定中だ。
 積極的な自治体の主導と市民参加がない現状で大企業による開発が進めば、ほとんどの利益が都会に流出しかねない。改めて、「エネルギー計画」策定を提案する。
環境保全部長: 今年度策定する松江市地球温暖化対策実行計画の中で再生可能エネルギーの導入目標数値などを示すこととしているため、現時点で新たなエネルギー計画を策定することは考えていません。

★化学物質過敏症対策に関する質問と答弁
芦原 化学物質過敏症を発症している人は、全国で約100万人程度と推計されていて、松江市の人口に当てはめれば、約1,600人の発症者がいると推定できる。その中のシックハウス症候群に対する対策として、市が購入する什器調達基準・揮発性有機化学物質の濃度測定、対策を示すガイドライン・マニュアルを策定する必要があるが、どうか。
環境保全部長 市が購入する什器調達基準はありません。公共施設における室内濃度測定については、国土交通省通知の「官庁営繕部におけるホルムアルデヒド等の室内空気中の化学物質の抑制に関する措置について」に基づいて、新築や改築完了時に測定し、基準以下であることを確認して引き渡しを受けています。塗装工事や内装工事においては、使用材料についてできるだけ化学物質含有量の少ない材料の使用に努めるよう、工事発注仕様書等に記載しています。
 今後、ガイドラインやマニュアル策定については、先進事例を参考にしながら研究していきます。
芦原 床に塗るワックスや芳香剤などでも発症しますので、管理の中でも発症する危険性があります。例えば、市役所西棟のエレベーターはドアが開くと中に入れない市民がいます。ぜひ、早急に対策をお願いします。
 *その後、西棟のエレベーターは対策中です。ワックスについても、より安全なものに切り替えを要請中です。市民が入る会議室等については、使用する前に十分換気する等の対策を実施していただいています

★全国学力調査結果の公表の意義に関する質問と答弁
芦原 市長は、全国学力調査の学校別成績について公開の方針を表明。教育は、子どもたちが生きる力を身に着けていく場であって、数値化できる学力はその一部分だ。結果を公表すれば、現場では正答率を上げていくことに力が注がれ、子どもたちが大人の競争心に翻弄されることにならないか。正答率の公表は文部科学省が禁じた順位が明らかになるが、見解を伺う。   
市長 学力だけが子供の能力をはかるものではないと思っていますが、それを伸ばしていくことが子供たちの今後の人生を豊かにしていくうえで大事なことだと思っています。そう意味で切磋琢磨は必要です。校長先生がなんだかんだと言うのは、自分たちの責任をどう考えているのか。公開しないというのは、自分たちの今までの教え方に対してどう反省しているのか、糸口が出てこない。
教育長: 文部科学省が禁止しているのは平均正答数や平均正答率などの数値を一覧で公表したり、それらの数値により順位づけをした公表はいけませんということです。正答率を公表することは必ずしも禁止されていないという理解でいます。この場合でも、分析や改善策に重点を置いて公表すべきだと考えています。
芦原 全国市町村教育連合がまとめた「学力テストのあり方・公表のあり方について」という文章の中で、テストは公表が目的ではないと念押しされています。人間にとって大切なものがこの点数で評価されるものではないとされ、公表については慎重の上にも慎重に期するとされています。数値化しなくても文章で説明が可能だとも言っています。これは、文部科学省の懸念であったはずです。
 結果の分析によって改善策を検討し、現場で実践されていくことこそ学力の向上につながるのであって、数値の公表による切磋琢磨は弊害の方が大きいと考えます。
 一言言っておきますが、文部科学省は首長の判断で公開できることを認めていません。教育委員会で厳密に検討して判断していただきたいと思います。

議会レポート

2014-08-15 23:07:57 | 原発
遅くなりましたが、6月議会の報告をします。

 6月議会で主に質問したのは原発が事故を起こした際の「避難計画」に実行性があるのか?という問題です。

島根県そして松江市をはじめとする周辺自治体は、島根原発が事故を起こした際の住民の安全を守るために「原発事故避難計画」を策定し、公表しています。また、その避難計画に基づいて、住民が実際に避難する際には、いったいどれくらいの時間がかかってしまうのかを推計した「原子力災害時の避難時間推計」が島根県によって公表されています。今議会では、果たして最悪の事態を想定しても住民の皆さんが被曝をすることなく安全に避難をすることができるのか、避難計画の実効性に関する質問を中心に行いました。
 市長は、質問に対して正面から答えようとせず、最悪の事態を想定しても実効性があるかとの質問には「オオカミ少年」とまで言い、福島のような事故はあり得ないかのような答弁をしました。一方では、放射能拡散シミュレーションは必要であると強調していました。

6月議会での主な質問と答弁
★「原発事故避難計画」の実効性に関する質問と答弁(一部割愛)
芦原 他社の規制基準適合性審査書類においては、共通してほぼ1,5時間で圧力容器からの漏洩が始まると解析されている。島根でも同様と考えられるので、およそ2時間もすれば敷地外に漏洩する状態となる。
 このような最悪の自体を想定した場合に、5km圏内住民は県の行ったシミュレーション(避難時間推計)通りに2,5時間で5km圏外に出ることができると考えるのか。

市長: どういう根拠に基づいて2時間後にはぱあっと広がってしまうといっているのか、オオカミ少年じゃないけど大変だと言うだけでは説得力がないのではないかと思っています。問題は、放射性物質がどういう形で、どういう方角にどういうスピードで拡散しているのかがある程度わかったうえで議論していく必要があります。今後、県だけでは難しいかもしれませんが、国に対してもそういう要請をやっていきたいと思っています。

芦原: オオカミ少年と言われてきましたが、推進してこられた方には、福島の事故は想定外の事態であったはずです。最初に「最悪の事態を想定しても、なおかつ実効性があるものでないとだめだという観点から質問させていただく」と言いました。中国電力の対策が機能しなかった場合には、短時間で放射性物質が漏れ出す事態になってしまう。その可能性を100%ないと断定することができないと思いますからお聞きしたわけです。
 松江高専が福島原発事故後に避難指示から避難を開始するまでの時間について住民アンケートを行っています。だいたい59%の方が1時間から2時間かかると回答されています。事故が起きれば、ほとんどの市民は家族と連絡を取り合い、帰宅を急ぐと思われます。そうなると、そこから渋滞が始まると考える必要がありますから、この2.5時間で脱出だというシミュレーションをされても、非常に甘いと言えます。

30km圏内の住民については、原子力災害対策指針では、2時間で一般人の年間被爆上限の1mシーベルトを超えるほどの放射線量に達すると、数時間内に避難開始だという基準が示されている。
 県が公表したシミュレーションでは、3時間40分から19時間15分待機させられた後に、5時間から8時間25分かかって30km圏外に出ることができると想定されている。これでは住民の被曝が避けられない。立地自治体として、このような計画をそのままにしておいていいのか。

市長: シビアアクシデントが出たときに、放射性物質がどういう形で拡散していくのか、やはり国の方としてもきちっと出していただく必要があるんじゃないかと思っています。それによって、住民が放射性物質にさらされるという議論が出てくると思います。
 人間ですから、いったん事故が起こった場合にはパニックになると思うんです。そこは冷静に対応していただかないと、中心部の方々が逃げ遅れてしまうという事態があるわけです。放射能拡散シミュレーションが原点になると思います。

*全国原子力発電所立地自治体協議会は、原子力災害対策本部・原子力防災会議合同会議に対して、「UPZ(30km圏内)においては放射性物質の放出後に避難することになるので、低線量被曝について国が国民に説明すること」を求めています。立地自治体は、30km内住民が被曝をする可能性について認識済みです
芦原: 豪雨などに伴う交通規制や自家用車避難ができなくなる市民が大量発生するなどの考慮がない。シミュレーションはかなりの不備があると思うが、どう考えるか。

防災安全部長: 今回のシミュレーションにつきましては、車両による避難を想定しておりますが、課題を検討する中で、必要があれば再度シミュレーションすることも県に働きかけていきたいと考えています。