聴く耳持たぬ松江市長と議会
昨日に引き続き、松江市議会では島根原発2号機の再稼働判断にあたって、市民の意向を反映させるための住民投票条例案について審議が行われました。
今日は、市長に対する議員会派からの質問が行われました。各会派からの質問内容は、自民党系議員が圧倒的に多い議会構成の中では、残念ながら、市長の反対意見を確認するための質問がほとんどでした。例えば、こうだ!
・住民投票はなじまないか?と聞けば、「多面的、総合的に判断されるべきものだ」と答える。
・市民が納得できるために必要なことは何か?と聞けば、「議会、会派の意見を聞きたい」と答える。 ー
いや、この問題について、議会に付託した覚えはないのですが!
・「市民から一方的な情報提供と言われていたが」と聞けば、住民説明会で市民からの質問に答えていたので、一方的ではない」と答える。 ー
「批判的な情報について説明を受けていない」と制球代表人から陳述を受けたじゃないですか。何を聞いているんですか?
・使用未核燃料の搬出が確定となっているのか?という質問には、「大臣が核燃料サイクル推進を責任を持って取り組むと言われた」と答える。 ー
現実を直視しなさい!口約束ですから、何とでも言えるのですよ!
と、まぁ〜。こんなふうなやり取りが続いたのです。(赤字は、私のつぶやき!)
15日が、討論、採決となりますが、怒りしかありません!
昨日の岡崎制球代表人の陳述を挙げておきます。
地方自治法上の地方公共団体の役割・責務
地方自治法第1条の2第1項は、地方自治体の役割に関し、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」と定め、また、その2項では、国は、「地方公共団体に関する制度の策定および施策の実施にあたって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と定めています。
・地球温暖化問題やエネルギー政策、核廃棄物・処分の問題は、国民としての私たち一人 ひとりの問題であり、国の政策の問題ですが、原子力発電所を私達の地域に立地するかどうかは、地方自治体の問題であり、ここに生活する地域住民の問題だということを確認する必要があります。
・原子力発電所の立地・稼働は、この地域の住民の福祉、すなわち、住民の生活の基本である生命・身体等の安心・安全にかかわる問題です。
つまり、島根原発再稼働の問題は、地方自治法第1条の2の第1項に定める「住民の福祉の増進を図ること」であり、住民の生命・身体等の安全・安心を守ることこそ、立地自治体である松江市の責務であり、国との関係でも、自主的・自立的に決定されなければならないということを再確認すべきです。
原発再稼働の問題は、私たち松江の住民にとって、重大かつ重要な問題です。
・島根原発の存在と再稼働の是非は、松江市民の生活にとって、重大かつ重要な問題です。
・請求の要旨に述べたように、福島第1原発事故によって、私たちは、万が一この島根原発で過酷事故が起こったら市民の生命・健康・生活、環境等にどのようなことが起こるかを考えさせられました。そして、島根原発が原子力規制委員会の新規性基準をクリアしたとはいえ、万が一の事故がないとはいえないこと、仮に、万が一の事故があった場合には、放射性物質が松江市を中心とする地域に放出され、住民が被曝するリスクのあることは、原子力規制委員会も認め、そのリスクがあるからこそ、緊急避難計画の策定が松江市に義務付けられているのです。
・私たちは、ほかならぬ、この松江市に立地する原子力発電所の再稼働の是非の問題は、主権者である住民の生命・健康・生活等にとって、切実な重大かつ重要な問題と考えています。
地域の私たちにとって、重大かつ重要な問題について、誰が、これを決めるのでしょう
・重大かつ重要な問題について、しかも、主権者である市民の間に意見の違いがある場合に、議会及び市長が決断をしなければならないとき。
その場合において、議会及び市長の判断に先立ち、主権者である住民の意思・意見を聞く「手続き」(住民投票)を実施し、市長及び議員は、住民投票に示された住民の意思・意向を尊重して決めて欲しいというのが、今回の条例請求です。
・現行法上の住民投票は、代表民主主義を補完する主権者としての参加制度です。
・市長や市議会議員にとっても、より、的確に市民の意見を反映した判断をすることとなり、また、市民にとっても、主体的に地域の重要な問題について参加することになる。いずれにとっても、住民投票は、民主主義のレベルアップにつながるといえます。
市民は、再稼働問題について、市長と市議会議員に、負託したでしょうか。
・市長の意見書では、市長は、「市民の皆様からの負託を受けた市長と市議会議員において、市民の皆様からいただいたご意見を踏まえ、責任を持った立場での責任のある議論を経て判断する方法が最も相応しい考えております」と述べています。
・地方自治体において、主権者は住民です。議員や市長は、自治体の二元代表として、選挙で選ばれたとはいえ、選挙の際には、原発再稼働については、争点とはなっておらず、市長も、ほとんどの議員も意見を述べていません。
・「負託を受けた」という言葉が「おまかせした」という意味に使われていること、また、「原発再稼働問題について、負託を受けた」というのは、ずいぶんな飛躍です。
市長や市議会議員は、「市民の意向・意思を聞いた」といえるのでしょうか
・市長の意見書では、「市民の皆様からいただいたご意見」とありますが、具体的には、どのような方法で、市民から、どのような意見をいただいたのでしょうか。
・また、今後、原発再稼働問題での態度を決める前に、市民の意見を聞くことが予定されているのでしょうか。
・私達は、多くの市民の意見を聞く方法としては、事前手続きである住民投票が、もっとも相応しいと考えていますが、市長や市議会としては、これに代わるどのような方法が、他にあると考えておられるのでしょうか。
・私達は、私達の意向・意見を聞かれたとは認識していません。
島根県との共催による住民説明会では、市民に対し、十分に納得できる説明がなされたでしょうか
◎ 原子力規制庁、内閣府、資源エネルギー庁、中国電力からの一方的説明でした。
質問は、説明された内容に関するものに限定されました。
質問時間はひとり○分
再質問は認めない。というものでした。
◎ 再稼働を推進する立場からのみの説明・意見であり、推進に反対する立場や、疑問や問題を指摘する立場からの説明は、一切ありませんでした。
⇒その結果、多面的・複合的に考える資料・材料は一切提供されませんでした。情報提供内容が偏り、不十分だったといわざるを得ません。
◎ 議論ができないため、問題点を深めることができませんでした。
◎ 一方、住民説明会に参加した人の発言を聞く限り、多くが、安全性に対する疑問、核廃棄物問題への懸念、緊急避難計画の実効性への疑問等であり、推進する意見はありませんでした。
◎ 市民の中には、勿論、再稼働に賛成の人もいれば、無関心な人もいることは、私達も否定しません。しかし、少なくとも住民説明会に出席した市民の発言の多数が、推進には反対ないしは消極的であったことを、市長は、また、市議会の議員の皆さんは、認識すべきです。
うか。
ちなみに
住民説明会で市民が聞いたのは「島根原発の必要性や再稼働させてもだいじょうぶだ」といった一方的な説明でした。
また、圧倒的に多くの市民はその場に参加することなく、意見を言ってもいません。ホームページへの掲載や動画の公開を行ったことで、参加しなかった市民には情報に触れる機会があったと言いますが、どれほどの市民が自らその情報に到達したでしょうか。
国や行政は、市民が住まう各地域に出かけ、難解な原発に関する情報をわかり易く丁寧に伝える努力をどれだけ行ってきたのでしょうか?
現状は、多くの市民を置き去りにしたままで「市長判断に任せて欲しい」と言っている状態です。
市民は、より適切で多くの情報が提供され、考える機会を保障されることによって、島根原発再稼働に対する自らの意向をまとめる力を持っています。
議会の皆さん、そして市長は、市民を信頼し、住民投票の機会を作っていただきたいと思います。自らの意向を聞いてくれる市政であれば、市民はこの町を誇りに思うはずです。
現行法の住民投票制度は諮問型である
・条例に対する市長の意見書では、「本来市長や市議会が担うべき意思決定の役割を、市民の皆様に押し付けることになる」と述べています。
・しかし、現行法の住民投票制度は、その当否はさておき、住民投票の結果が、市長や議会の決定を拘束するものではない(つまり、住民投票の結果を尊重するにとどまる=諮問型)ことは、市長であれば、当然知っているはずです。
・意思決定の役割は、あくまでも議会と市長にあるにもかかわらず、あえて、「市長や市議会が担うべき意思決定の役割を、市民の皆様に押し付ける」とするのは、「市民の意向を問う住民投票を実施したくない」という市長の強い意志を示しているといわざるを得ません。
・しかし、市民の負託を受けた代表である議員と市長には、原発再稼働の問題に関して、この重大問題の決定の「事前手続き」として、住民投票により、市民の意向・意見を十分に把握し、これを反映した判断を、責任をもって行う重大な役割があるのです。
再稼働の判断に際して考慮すべきことは何か
・市長は、「再稼働の判断に際して、最も重視すべきが、市民の皆様の安心と安全であることは論を待たないと」述べつつも、一方で、地域経済の維持や、元企業の生産活動の活性化、雇用の保持・創出といった要請や、さらには、国の政策や地球規模の持続可能な環境問題等々を検討すべきものとしています。
・しかし、市長は、意見書の中では、原子力規制委員会の新規性基準をクリアしたとしても、万が一の事故がありうること、万が一の事故があった場合には、住民が被曝するリスクのあることや緊急避難計画の策定が、松江市の義務であり、その実効性が問われていることなどには全く触れていません。
・結局、市長は、市民の生命・健康・生活、環境等の安心・安全の問題がなによりも最優先されるべきであるとの認識・決意は見られず、考慮事項のひとつとしているとしか思えません。
複雑に入り組んだ深遠な課題について結論を導くという「難題」は市民には負担か
・市長の意見書では、「このように複雑に入り組んだ深遠な課題について結論を導くにあたっては、多面的・複合的な観点から議論を行い、注意深く判断する必要があると認識しているところ」、住民投票に関しては、「このような難題に対して、本来市長や議員が担うべき意思決定の役割を、市民のみなさまに押し付けることになりかねないという危惧も感じています」と述べています。
・市長の意見は、市民には、このような難題について意見を述べること自体が無理ではないかと言わんばかりであり、主権者住民を愚民視する失礼極まりないものといわざるを得ません。
・私たちの主権者としての「権利」であり、主体的な「意見表明」に関して、「押し付け」と述べる市長の意見書は、私たちの主体性を否定するものといえます。
・ところで、私たちは、条例案で「再稼働の是非に関する情報を広く提供することを目的とする住民投票広報協議会を設置し、公開討論会、シンポジウム等を実施する等、市民が情報の提供を受け、熟議し、判断できるようにする仕組みも提案しています。
・住民投票が行われることになれば、市民は、様々な情報や意見を踏まえ、的確な意見表明が可能となるのであり、その条件整備は、市長や議会の責務です。
最後に
・私たちは、今回の条例請求において、島根原発の再稼働の是非(是非に関する実質的な内容)の審議を求めているのではありません。
・ここで審議が求められているのは、島根原発の再稼働を決める手続きとして住民参加の手続き、すなわち、住民の意思表明の機会である住民投票を実施すべきだということです。
・住民投票の結果が、市長や議会を拘束することはありません。結果を尊重して判断してほしいというのが私達の求めることです。住民投票を実施して、その結果を尊重することこそが市民の負託を受けたと胸を張って言えるのではないでしょうか。
・島根原発は、全国で唯一の県庁所在地に立地する原子力発電所であり、30キロ圏内の人口は、約67万人。ここでの住民投票条例が成立するかどうかは、全国が見守っていることを忘れないでいただきたい。