今日は島根原発1,2号機の差し止め訴訟弁論が午前中に、午後は3号機の裁判が開かれました。
午前中は、「日本と原発」の概要版上映(証拠調べ)と原告側からの意見陳述を行いました。
2号機の審査中ですが、注目の「宍道断層」に関して、昨日、中国電力は各新聞に懲り込みチラシを入れ、39kmと評価していることを広報しています。8月28日には規制委も現地調査に来ており、その反応も見極めた上での折り込みチラシではないかと思います。それでも、裁判長が「いつ活断層評価に関する主張をするのか?」と尋ねても、「見通しを示すのは難しい。39kmに見直しをし、東にある断層との関連について検討している。まだ評価を続けている。」と宍道断層に関する主張の時期を明示しませんでした。
一方、3号機の裁判では、国は次回の主張予定について、「地震動審査のガイドライン」について準備書面提出の予定だと説明しました。原告側からは、新規制基準におけるシビアアクシデント対策の問題について主張する書面を提出しました。
以下、今日の私の意見陳述を掲載します。
1 弁論更新にあたって控訴人らを代表して意見陳述を行います。
控訴人らは、被控訴人が島根原発から直近で約2㎞先に「なかったはずの活断層」をみつけたことから、耐震性に 欠ける1、2号機の運転差し止めを求めて松江地裁に提訴しました。
原審を含め提訴から18年が経過しますが、その間、同じBWRでマークⅠ型である福島第一原発は、世界中を震撼 させる炉心溶融という重大事故を起こし、漏れ出た放射性物質は日本中を汚染してしまいました。原審が私たちの 訴えを退けたことはもちろんのこと、これまで各地で起こされた市民による訴えに司法が耳を貸さなかったこと は、福島第一原発事故を防ぐことができなかった一つの要因と言っても言い過ぎではありません。本控訴審におい ては、控訴人のみならず多くの人々の命や健康、そして生活の全てを守ることを最優先にした判断を示していただ きたいと思います。
2 島根原発2号機については新規制基準適合性審査が行われ、原告らが島根原発の運転差し止めを求めた原因とも なった活断層の再評価を巡って、慎重な審査が続けられているところです。
その「宍道断層」に関しては、被控訴人は適合性審査中の調査によって長さを25kmへと変更しています。そ の後、内閣府地震調査研究推進本部による宍道断層に関する長期評価が出され、東延長の海陸境界部に地質構造が 連続する可能性があるとされ、海域での本断層との関連性を検討する必要があると指摘されました。また、島根大 学の向吉准教授によって、被控訴人が東端とする地点から更に東側で断層露頭が発見されました。一連の新しい知 見は適合性審査の俎上にも載せられ、鳥取沖の断層への延長も検討が求められます。基準地震動の評価も変更が迫 られるのは避けられず、「島根原発が耐震安全性に欠ける」という状況はますます明確となってきました。
3 2号機の適合性審査を行う原子力規制委員会は「規制基準に合格しても原発は事故を起こす可能性はある。」と 明確に発言しています。この「原発は事故を起こす可能性がある」ことを前提として、原発の周囲30km圏内自治 体は広域避難計画を策定しています。法律上、避難計画を策定する責任は自治体にありますが、本来、被控訴人に は万が一の事故発生時における住民の安全な避難に対して、第一義的責任が存在しています。
しかし、被控訴人は自治体に「協力する」だけで、その責任を全うしようとする姿勢が微塵もありません。
また、原発の重大事故は、地震や津波などの自然災害発生によることが大きいと考えられますが、マグニチュー ド7クラスの地震が発生した際には、二つの川によって南北に分断される松江市内では、住民にはどこが通行可能 なのかすら全くわかりません。倒壊する家屋・火災発生・波打つ道路、そのような中を計画通りに避難行動するこ と自体が絵空事ではないでしょうか。そして、この避難計画は一定の放射線量を計測しなければ、30km圏内住 民に対する避難指示すら出されません。こういったことを勘案すれば、島根原発が重大事故を起こせば住民は被ば くを避けられません。
4 多くの福島県民は6年が過ぎる今も故郷に帰ることができません。政府によって帰還が求められても、汚染が続 く町には子どものいる世帯は帰ってきません。福島県内では、現時点で190人もの子どもたちに甲状腺がんが発症 し、健康を脅かされています。
万が一にも島根原発が重大事故を起こすとは、どういうことなのか。住民が被ばくを余儀なくされるとはどうい うことなのか。福島原発事故が私たちに教えてくれています。この事故がもたらしたものに真摯に学べば、私たち が何をすべきなのか明白です。
裁判所におかれては、良心に従って「島根原発は運転してはならない」という訴えを、その通りだと容認されま すことを心より願っています。
午前中は、「日本と原発」の概要版上映(証拠調べ)と原告側からの意見陳述を行いました。
2号機の審査中ですが、注目の「宍道断層」に関して、昨日、中国電力は各新聞に懲り込みチラシを入れ、39kmと評価していることを広報しています。8月28日には規制委も現地調査に来ており、その反応も見極めた上での折り込みチラシではないかと思います。それでも、裁判長が「いつ活断層評価に関する主張をするのか?」と尋ねても、「見通しを示すのは難しい。39kmに見直しをし、東にある断層との関連について検討している。まだ評価を続けている。」と宍道断層に関する主張の時期を明示しませんでした。
一方、3号機の裁判では、国は次回の主張予定について、「地震動審査のガイドライン」について準備書面提出の予定だと説明しました。原告側からは、新規制基準におけるシビアアクシデント対策の問題について主張する書面を提出しました。
以下、今日の私の意見陳述を掲載します。
弁論更新にあたっての意見陳述
2017年 9月25日
控訴人 芦 原 康 江
1 弁論更新にあたって控訴人らを代表して意見陳述を行います。
控訴人らは、被控訴人が島根原発から直近で約2㎞先に「なかったはずの活断層」をみつけたことから、耐震性に 欠ける1、2号機の運転差し止めを求めて松江地裁に提訴しました。
原審を含め提訴から18年が経過しますが、その間、同じBWRでマークⅠ型である福島第一原発は、世界中を震撼 させる炉心溶融という重大事故を起こし、漏れ出た放射性物質は日本中を汚染してしまいました。原審が私たちの 訴えを退けたことはもちろんのこと、これまで各地で起こされた市民による訴えに司法が耳を貸さなかったこと は、福島第一原発事故を防ぐことができなかった一つの要因と言っても言い過ぎではありません。本控訴審におい ては、控訴人のみならず多くの人々の命や健康、そして生活の全てを守ることを最優先にした判断を示していただ きたいと思います。
2 島根原発2号機については新規制基準適合性審査が行われ、原告らが島根原発の運転差し止めを求めた原因とも なった活断層の再評価を巡って、慎重な審査が続けられているところです。
その「宍道断層」に関しては、被控訴人は適合性審査中の調査によって長さを25kmへと変更しています。そ の後、内閣府地震調査研究推進本部による宍道断層に関する長期評価が出され、東延長の海陸境界部に地質構造が 連続する可能性があるとされ、海域での本断層との関連性を検討する必要があると指摘されました。また、島根大 学の向吉准教授によって、被控訴人が東端とする地点から更に東側で断層露頭が発見されました。一連の新しい知 見は適合性審査の俎上にも載せられ、鳥取沖の断層への延長も検討が求められます。基準地震動の評価も変更が迫 られるのは避けられず、「島根原発が耐震安全性に欠ける」という状況はますます明確となってきました。
3 2号機の適合性審査を行う原子力規制委員会は「規制基準に合格しても原発は事故を起こす可能性はある。」と 明確に発言しています。この「原発は事故を起こす可能性がある」ことを前提として、原発の周囲30km圏内自治 体は広域避難計画を策定しています。法律上、避難計画を策定する責任は自治体にありますが、本来、被控訴人に は万が一の事故発生時における住民の安全な避難に対して、第一義的責任が存在しています。
しかし、被控訴人は自治体に「協力する」だけで、その責任を全うしようとする姿勢が微塵もありません。
また、原発の重大事故は、地震や津波などの自然災害発生によることが大きいと考えられますが、マグニチュー ド7クラスの地震が発生した際には、二つの川によって南北に分断される松江市内では、住民にはどこが通行可能 なのかすら全くわかりません。倒壊する家屋・火災発生・波打つ道路、そのような中を計画通りに避難行動するこ と自体が絵空事ではないでしょうか。そして、この避難計画は一定の放射線量を計測しなければ、30km圏内住 民に対する避難指示すら出されません。こういったことを勘案すれば、島根原発が重大事故を起こせば住民は被ば くを避けられません。
4 多くの福島県民は6年が過ぎる今も故郷に帰ることができません。政府によって帰還が求められても、汚染が続 く町には子どものいる世帯は帰ってきません。福島県内では、現時点で190人もの子どもたちに甲状腺がんが発症 し、健康を脅かされています。
万が一にも島根原発が重大事故を起こすとは、どういうことなのか。住民が被ばくを余儀なくされるとはどうい うことなのか。福島原発事故が私たちに教えてくれています。この事故がもたらしたものに真摯に学べば、私たち が何をすべきなのか明白です。
裁判所におかれては、良心に従って「島根原発は運転してはならない」という訴えを、その通りだと容認されま すことを心より願っています。
以上