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戦中も続いた婦人誌「婦人之友」「主婦之友」「婦人倶楽部」に掲載されたレシピをたどって戦下の食生活を見つめる本。
戦争とは、食べ物がなくなることだとよくわかった。
それだけではなく、いつ空襲されるかわからないから寝不足になり、武器を作る工場に駆り出されるため重労働ともなる。
働き手がことごとく戦場に送られてもいる。「銃後」と呼ばれた国内にいる人たちも、否応なく戦争に巻き込まれていた。
米がどんどんなくなっていく。農民が戦地に行かされ、軍需産業に就かされ、輸送が絶たれたから。
空襲や原爆だけが戦争ではありませんでした。輸送船が沈められ、兵隊や国内に食べ物が届かないことも戦争。
私の父の父も、輸送船の船員で、米軍機に打ち沈められたのでした。いまだに骨は帰ってきていません。
で、戦中の代表的な食べ物、「水団(すいとん)」を作って食べてみました。
水90CCに塩を小さじ半分、そこに1カップの小麦粉を入れて混ぜ、20分ほど寝かせ、沸騰したスープに丸めて入れる。団子状の小麦粉が浮き上がれば火が通ったので出来上がり。
スープはありあわせのもので。味付けは塩でも醤油でも味噌でも。
冷凍のカキとほうれん草があったので入れました。
カキとほうれん草でなんとか食べられましたが、すいとんは、ギョーザの皮だけを丸めたようなもので、何か足りない感じ。
で、飽きてくる。食べながら、育ち盛りの子が「えー、またすいとん」と言ってお母さんを困らせている図が浮かぶ。
食感がまたよくない。ねちねちしている。おいしさがない。楽しくない。歯にべたっとくっつく。
「これがすいとんか。もう、食べたくないな」というのが正直な感想。
しかし、燃料すら不足していた戦中、戦後。すいとんの熱さだけでも御馳走だったのかもしれません。
食糧難がひどくなるほど、ありあわせをすりつぶして、どろっとさせて、汁ごといただく料理が増える。
そこには、人の輪郭が消えていく感覚がある。一人ひとりの感情が押しつぶされていく空気がある。
恐ろしいことです。
恐ろしいことを、すいとんを通じて体験できた。
すいとん、試す価値あり、です。
斎藤美奈子著/岩波アクティブ新書/2002
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