荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

正義の巻。

2014年11月20日 | 偽りの人生に優れたエンターテイメントを
『人が虎を殺そうとする場合には、人はそれをスポーツだといい、 虎が人を殺そうとする場合には、人はそれを獰猛だという。罪悪と正義の区別も、まあそんなものだ』バーナード・ショー(アイルランドの劇作家・1856~1950)



【オリエント急行の殺人】を観ました。

僕もご多分に漏れずアガサ・クリスティが好きでした。

母親が経営していたレストランは、その名も【エルキュール】、名付け親は僕です。

昔、NHKでデヴィッド・スーシェがポワロを演じたTVシリーズもよく観ていました。

この【オリエント急行~】はその最終回スペシャルだったそうです。

この作品を観るのは初めて。

もっと昔、シドニー・ルメットが演出した映画は観た事がありますし、原作ももちろん読んでいます。



さて今回の視聴について。

内容として12人全員が犯人であったというトリックは覚えていました。

失念ポイントはラスト、その12人の処遇です。

全員が逮捕、という流れだったかどうかを、全く覚えていなかったのであります。

結果を先に申しますと、12人は逮捕には至りません。

ポワロが地元警察に虚偽の証言をするのでした。

もちろん、ポワロは苦悩に苦悩を重ねた上で12人を見逃したわけですが、とにかく重かった。

正義と法を描いておりますので、重くなるのは当り前ではあります。

被害者は極悪非道なヤツ。

12人は正義と神の名の元にそいつを殺害します。

ここがポワロの苦悩ポイントとなるわけです。

確かに被害者はブっ殺されてもおかしくないヤツ。

一方、とはいえそいつを殺す事は同じレベルであり、絶対に許される事はない・・・。

極悪非道とはいえヒトを殺める事は正義ではない・・・。



【相棒】の右京さんもそうですが、正義を貫く以上、絶対的な悪には勝てないのです。

これは小栗旬主演の【BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係】でも効果的に描かれていました。

ですから右京さんは逮捕するまでが自身の仕事と考え、後は司直のジャッジに任せるしかない、と達観するフリをするしかないんですな。

仮に10歳にも満たない少女を強姦し、切り刻んで殺した極悪犯人がなんらかの形で無罪になってしまっても、右京さんは『仕方ありませんねぇ、それが法なのですから』とか言って納得するしかないんですな。

復讐なんてした日にゃ、どんな善人でもプルプルしながら怒られちゃいます。




正義なんてそんなもんです。



僕が好きな【必殺シリーズ】は一貫して、この『殺人の正当性』を描いて来ました。

正義の名の元には、ヒトがヒトを殺める事は出来ない。

だから【仕事】としてお金を受け取るわけです。

必殺の顔・中村主水はお金を受け取る重要性を、何度も何度も説いています。

『正義の裁き?寝言言って貰っちゃ困るな。これは仕事なんだ。俺たちがオマンマ食ってく為のよ』中村主水(ニッポンの仕置人/仕留人/仕置屋/仕業人/商売人/仕事人・1973~1996)



正義を貫く事は一見格好良いですが、実はホントに難しいんです。

そして正義を定義付けるのは、結構簡単な気がします。



『正義なんて滑稽ものだ。一筋の川で限界づけられるのだから。ピレネー山脈のこちら側では真実でも、向こう側では誤りなのだ』ブレーズ・パスカル(フランスの哲学者・1623~1662)




映画版ポアロ。演じるはアルバート・フィニー。


ドラマ版ポワロ。デヴィッド・スーシェのハマリ役であります。