もう2ヶ月前になるけれど、12/24以降、栃木から熊谷に仕事先が移った。
栃木での業務とは違い、元々というか本筋というか、僕の会社ではそういう位置付けとされている業務に戻った。
それにしても、忙しい2ヶ月間であった。
けれどこの忙しさも、一段落着いた。という訳でブログ再開の運びとなった訳。
少し前に、新人君が職場を離れるということで、さびしげな彼に内田先生のお言葉を借りてエールとした。以下、その内容。
「おせっかいな人」の孤独
キャリア教育については、もし「労働のモチベーション」をほんとうに上げようと望むなら、「自己利益の追求」という動機を強化しても得るところはない、と私は考えている。
「仕事」には「私の仕事」と「あなたの仕事」のほかに「誰の仕事でもない仕事」というものがある。そして、「誰の仕事でもない仕事は私の仕事である」という考え方をする人のことを「働くモチベーションがある人」と呼ぶのである。
道ばたに空き缶が落ちている。
誰が捨てたかしらないけれど、これを拾って、自前のゴミ袋に入れて、「缶・びんのゴミの日」に出すのは「この空き缶を見つけた私の仕事である」というふうに自然に考えることのできる人間のことを「働くモチベーションのある人」と呼ぶ。
別に私は道徳訓話をしているのではない。
私が知る限り、「仕事のできる人」というのは、例外なく全員「そういう人」だからである。
ビジネスの現場において、「私の仕事」と「あなたの仕事」の隙間に「誰の仕事でもない仕事」が発生する。
これは「誰の仕事でもない」わけであるから、もちろん私がそれをニグレクトしても、誰からも責任を問われることはない。
しかし、現にそこに「誰かがやらないと片付かない仕事」が発生した。
誰もそれを片付けなければ、それは片付かない。
そのまましだいに増殖し、周囲を浸食し、やがてシステム全体を脅かすような災厄の芽となる。
災厄は「芽のうちに摘んでおく」方が巨大化してから対処するよりずっと手間がかからない。
共同体における相互支援というのは要するに「おせっかい」ということである。
最初に「災厄の芽」をみつけてしまった人間がそれを片付ける。
誰もが「自分の仕事」だと思わない仕事は「自分の仕事」であるというのが「労働」の基本ルールである。
たぶん私の言葉は現代日本人の多くには理解できないだろう。
労働者の多くと左派知識人は「できるだけ自分の仕事を軽減することが労働者の権利である」という硬直した思考にしがみついている。
私は実際にそう公言した人間を(大学の教師の中で)たくさん出会った。
彼らはこんなふうに考えていた。
自分は「収奪された労働者」であるから、「労働者を収奪するシステムがクラッシュしても、それは労働者の責任ではない。むしろ、労働者を収奪するシステムの瓦解を加速するという仕方で、私は革命的に行動しているとさえ言えるのである」
そんなロジックで彼ら彼女らは自身の怠業を正当化していた。
ほんとの話である。
(中略)
考えてみれば当然だが、「政治的に正しい」人たちは「よけいな仕事」をしたがらない。
「誰の責任でもない仕事」をさくさくと片付けたせいでシステムの不調が前景化しないと、彼らの「世の中間違っている」という主張が裏付けられないからである。
だから、「誰のものでもない仕事」を「あ、オレがそれやっとくわ」というふうに片付けてしまう「おせっかい」を彼ら彼女らは快く思わない。
私はあらゆるタイプの「政治的に正しい人」から嫌われるけれども、それは私が「ついゴミを拾ってしまう」人間だからである。
私のような人間ばかりであると、社会はどれほど制度設計がろくでもないものであっても「けっこう住みやすく」なってしまう。
だから、「私たちの社会は根本的改革を必要とするほどに病んでいる」という事実を立証したいと思う社会理論家たちは、目の前にある「災厄の芽」を摘むことで、矛盾の露呈を先送りし、社会の崩落を防ごうとする人間を憎むようになるのである。
自己利益だけを追求する人々と、社会の根本的改革を望む「政治的に正しい」人々は、どちらも「おせっかい」なことをせず、私たちの社会をシステムクラッシュに(意識的であれ無意識的にであれ)向かわせる。
その間で「お掃除する人」は孤立している。
けれども、「災厄は先送りせねばならない」ということと「災厄の芽は気づいた人間が摘まなければならない」ということが私たちの社会の常識に再度登録されるまで、私は同じことを執拗に繰り返さねばならない。
身につまされるお話である。
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